木のぼり男爵の生涯と意見

いい加減な映画鑑賞術と行き当たりばったりな読書によって導かれる雑多な世界。

『庭に孔雀、裏には死体』

2013-03-18 03:12:04 | 日記


「庭に孔雀、裏には死体」ドナ・アンドリューズ

主役のメグに興味を持つのに時間かかるなぁ~。
とは言え、中盤以降は好感を持って読み進める。
周囲の変人達にも、親近感?を抱くに至る。

鍛冶職人のメグは、しっかり者。
その頼もしさを見込まれ、現在3組の花嫁付添い人。
弟の婚約者、親友、再婚する母。
3人の花嫁のワガママに振り回され、式の準備でキリキリ舞い。
そんな中、嫌われ者の死体が見つかり…

若干、ティーンズ小説風な匂いのするシーンもチラホラ。
ハリウッド黄金時代の映画風なとこもある。
まぁ、のんびり楽しめるミステリではあるものの。
ファンになるほどでもなし。

死体も、毒も爆発もあるが。
事件よりも、結婚式のバタバタの割合が大きい。
そこへ恋愛模様が大いに絡む。

ミステリ好きの父が、張り切って目に余る頑張りを見せたり。
自分の思い通りにさせてしまうワザを持つ魅惑的な母や。
やたら顔を出し、何事にも遭遇する協力者で理解者のマイクル。
自己中以外、何も持ち合わせないサマンサ。
田舎の噂網の凄さ、好戦的な犬、アヒルや孔雀も活き活きと描かれる。
孔雀、放し飼い…の衝撃。
割とどーでもいー人が死体となる心遣い。

3組の結婚式の行く末も楽しみつつ、
(案の定、考え付く限りのハプニングが起こり。)
発狂寸前に追い込まれながらも、ありとあらゆる事に決着。
収拾つかない事態を解決に導く活躍ぶりを発揮するメグ。
どー考えても、しょい込み過ぎだと思いますけど?
呪われたしっかり者、モーレツ働き者メグのハプニング・ミステリー。

《ファウスト》

2013-03-17 01:36:12 | 日記


『ファウスト』(2011年ロシア)

幻想的に描く…というか、幻想そのもの。
なんとなくクエイ兄弟の『ベンヤメンタ学院』(1995年)を思い出す。

人体を解剖するファウスト博士。
魂はどこだ…?

探求者が悪魔の罠にはまり。
欲望に負け、魂と引き換えにマルガレーテを手に入れる。
思いを遂げた後に待っていたのは、永遠のさすらい。。。

(たとえCSI慣れしてても)人体解剖には若干、ギョっとする。
高利貸のグロテスクな姿に、一瞬、眠気が吹っ飛ぶ。
そして、マルガレーテの身体。
迷い無く肉を描く潔さ。

不気味さ、危うさ、異様さが漂う。
医療というか、人体に対する昔の不確かさが不安を煽る。

悪夢には違い無いが、いったい誰の悪夢なのか?
ファウスト博士は、欲望に溺れた中年オヤジなのか?
飽くことを知らない探求者なのか?
そもそも、魂の存在を信じてるんだか?
悪魔の事は信じてるみたいですけど、ね。
尻尾のある高利貸の説得力か?

なんか、ある意味『プロメテウス』(2012年)よりプロメテウスな映画。

原作読んでないもんで、どれだけ違うのか分からん。
という訳で、どう解釈してこうなったのかも不明。
読むしかないかぁ?ゲーテ…
読む気になるよう、ものぐさなりに、いじらしい努力はしようっと。


『ファウスト』(2011年ロシア)
監督・脚本:アレクサンドル・ソクーロフ、原案:ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ『ファウスト』、
脚本:マリーナ・コレノワ、撮影:ブリュノ・デルボネル、音楽:アンドレイ・シグレ
出演:ヨハネス・ツァイラー、アントン・アダシンスキー、イゾルダ・ディシャウク、ゲオルク・フリードリヒ、ハンナ・シグラ

『夜の森』

2013-03-16 01:07:42 | 日記


「夜の森」D・バーンズ

修飾語やら形容詞でギュウギュウな文章。
ギチギチのページ。
コンマで繋げられ、延々と続く一文に、
あれ?何について言ってるんだっけ?
誰のことを喋ってるんだっけか?
迷子になること、しばしば…

迷子にも慣れ、(有り難い事に戻り道が分かってる為、頻繁に文頭に戻りつつ。)
(限りなく諦め半分に)ある程度免疫もつき、
無駄な抵抗、悪あがきは封印した上で、やっとこさ読了。

文に慣れるのに時間を要するも、当時の雰囲気は大いに楽しむ。


自分が何者なのか分からず、何に属するかをを捜し求めた女。
不安を埋める為に喋り続ける男。
色濃い民族の記憶から逃れるように憧れる、自分では決して届かない階級を欲する男。
愛と独占欲にかられつつ、愛し方も愛され方も分からない女。
自己愛に溺れ、美化する事でしか満足出来ない女。

自分を持て余す者、偽る者、違う何者かになろうとする者。
足りないものを埋めようとする者、己を隠そうとする者。
そもそも本当の姿で生きている人って居るんだろうか?

必然と偶然。
本能と純粋さ。
運命と後悔。
愛と理由。
存在と人生。

ありとあらゆる事が延々ツラツラと語られる。
どんな話だろうと、結局テーマは‘人生と愛’に行き着くとは思うが。
この小説の場合は、何よりも‘存在理由’を描いてる気がしますな。

具が多いシチューだと思え。
あれ?汁気が無い?
むしろ、具だくさん!具だけシチューだと思え。

読む年齢や読んだ時の自分の生活環境によって感想も変わるであろう本。
自分の積み重ねた経験と、続く人生に思いをめぐらせ味わうべきか?
まったく接点のない未知の人物として、観察し楽しむべきか?

‘死に至る病’ではなく‘野生に至る病’なり?にけり?ぞなもし。をかし。なかりけり。

何回か読まないと、読んだことになりそうにない本。



『マローン御難』

2013-03-15 00:51:49 | 日記


「マローン御難」クレイグ・ライス

時々会いたくなる人、マローン。
と、ヘレンとジェーク。

間違いなく、アルコールの消費量ベスト10に入るであろうミステリーシリーズ。
作中で流し込まれる酒の量は、ハンパ無い。
そして、ゴチャゴチャ感とユーモアもハンパ無い。

誘拐事件にからんで、攫われた娘の継父と事務所で会う事になったマローン弁護士。
しかし、待っていたのは冷たくなった依頼人だった…
こりゃマズい。
このまま罠にはまってたまりますか、と早速死体を隠すものの。
臨時死体置き場から戻ったら、今度は事務所に警察からお客様。
こりゃ非常にマズい。
そして何故か、知らない連中から、誘拐されたはずの生意気なガキを押し付けられる。
こりゃ異常にマズい。
う~ん。。。自分の立ち位置に大いなる疑問を持つマローン。
マローンの不在中に死体は事務所に戻され、通報を受けた警察が捜査。
こりゃ大変に甚だしく無上にマズい。
クタクタ、ヨレヨレになりながら事件解決に乗り出すマローンだったが。。。

登場人物が自分勝手に行動するカオスを堪能。
もはやスラップスティック・コメディ。
複雑な家族構成の一家。
これだけでも、うんざりさせるに事足りるはず。
さらに、全員が揃いも揃って行動力を無闇に発揮。
ややこしい上にややこしさをトッピングする大サービス。
ま、これがまた楽しいんだけどね。
思い込みで行動して、ちっとも悪びれないのも魅力のひとつ。
相変わらずのヘレンの無鉄砲さに、ジェークの無謀さ。
美人にうっとりしっぱなしのマローン。

「さてと、卵はどんなふうにお料理すればいいかしら」
「ジンで味つけ」

どういう食生活しとんじゃ!

「ジン、朝メシ」「この順番で頼む」

どういう生活しとんじゃ!

やれやれ。
なんでこんな人に時々会いたくなるんだか。。。
突然むしょうに読みたくなるマローン・シリーズ。

《スリープレス・ナイト》

2013-03-14 00:30:09 | 日記


『スリープレス・ナイト』(2011年フランス/ルクセンブルク/ベルギー)

囚われた息子を取り戻す為に、父親が全力投球するお話。
もう、必死。

マフィアのコカインを奪った二人の刑事。
ところが、覆面をしていたのに何故か正体がバレてしまい。
息子を誘拐され、コカインと交換だと脅される。
大人しくナイトクラブへコカイン持参で乗り込むが。
麻薬捜査官もクラブにやって来ていて。。。

息子をさらわれた理由が理由なので、
なんとなく全面的に支持できない主人公。
えーっと。どう思えばいい?
あんま気持ちよく応援できないけどぉ?

だいじょう~ぶ。
展開するにつれ、何故マフィアから横取りしたかが分かってきます。
そして、観てる方はホントに悪い奴が分かってるハラハラ感。
更に主人公は深手の傷を負いながらの反撃。
ああ、傷が開いちゃう、悪化しちゃう、気絶しちゃう~!!
マフィアとその取引相手、麻薬捜査官二人、息子を誘拐された刑事。
ナイトクラブで入り乱れつつ、主にキッチンで大暴れ。
料理どころじゃないねぇ、今夜は。。。状態
ほどほどって言葉を知らないらしい。
息子助けたさで、物凄い頑張りを見せる。

怒涛の展開なれど、クラブの人混みやら、閉鎖的な空間での死闘なので。
疾走感が無いのが残念。
人が邪魔なのが、いかされてるんだけど~。
実際、ホントに邪魔でイライラしてきますな。
複合施設的なクラブなので、色んな場所が登場、シーンに応じてフル活用。
ん~と、基本的には。
じゃ、次はレストランで暴れてみようか!
で、またキッチンに戻って、もうひと暴れね!
あ!冷凍庫が有る。じゃ、そこでも暴れようか!

次から次へと問題発生。
しかも、どこで終わるつもり?
ちょっと不安になる程続く終盤。
甘すぎない作りに、色々な事が心配になってくる映画。


『スリープレス・ナイト』(2011年フランス/ルクセンブルク/ベルギー)
監督・脚本:フレデリック・ジャルダン、脚本:ニコラ・サーダ、撮影:トム・スターン、編集:クリストフ・ピネル
出演:トメル・シスレー、ジョーイ・スタール、ジュリアン・ボワッスリエ、ロラン・ストーケル、セルジュ・リアブキン


『ユーラリア国騒動記』

2013-03-13 00:53:35 | 日記


「ユーラリア国騒動記」A・A・ミルン

いい意味で裏切られる展開。
先が読めん~。

ユーラリア国の、のどかで爽やかな朝食風景。
王と姫の食卓をバローディア国王が魔法の七里靴で飛び越えたのが原因。
って何の原因か?
もちろん、戦争。。。
言いがかりで始まる戦争、多いなぁ。

国王同士の意思の疎通下手も原因だすけど。
使いの者の耳に赤インクで“戦争”と書いた紙切れをピンで止め、帰すってのも、笑える。
戦いはついに君主同士の一騎打ちに。
これが延々と続いたあげく、妙なアイデアで決着。
それ、ずるいんと違う?妙案って?…かなり腑に落ちない勝利。

ユーラリアの伯爵夫人がくせ者で、
権力が欲しい病甚だしいポエマー。
詩作とのっとり、同時進行。。。
施しをする己の姿にうっとりしてしまうドリーマー。

心細い姫がユードー王子に助けを求めるも、
旅の途中で(自分の意思と関係なく)変身してしまい。
うさぎ、のような。ライオン、のような。ヒツジ、のような生き物に!
ユーラリアに辿りつくも、城は大騒ぎ。
人助けどころじゃない王子の最大の悩み─何を食べればいいんだろう…?
って、そうきましたかー!!
ん、まぁ結局オランダガラシのサンドイッチに落ち着く。

すったもんだがあったものの、王子は元の姿に。
ところが…それからが本当のすったもんだの始まり。。。


“はじめて王子の本当の姿を見た瞬間は、それまでの姿とは格段の差があったので、
王子の姿が、王女の思い描いていた若々しく美しい王子とほとんど変わりなく見えました。
その後は分刻みにその姿から遠のいていきました。
顔はうっとうしいし、態度は大きすぎます。
それに、いずれはぶくぶくと太るタイプでしょう。”

こりゃ酷い。
が、しか~し。
実は王子はたいした事ないお人柄。
姫の相手には、頭が良くて素敵なコロネル公爵というのがちゃんと出てきます。

もちろんハッピーエンドで完結。
ちょっとしたオチも味つけに。


確かにユーモラスではあるが。
ちょい物足りない部分も。
毒気は少なめ、のんびりしてます。
もともと‘ちいさな劇’として書かれただけあって。
舞台にすると、演出次第で色々と楽しめそう。
子供も大人も楽しめる劇になるだろうーな。
伯爵夫人の描かれ方がワザあり。
悪役にし過ぎずに、でも相当な悪い考えに取り付かれた人。
実際に行動しちゃってるし、明らかにやり過ぎな人ではあるものの。
なんとなく許されてしまう不思議。
実に巧妙に人物を創ってます。
何事も、そのまま進んだら大変!な状況を上手く迂回するストーリーテリング。

そういや、ミルンの自叙伝が読んでみたいなぁ。
本文中に出てきたアップル・パイのベッド(学生がイタズラにする、
足を充分伸ばせないように敷布をたたんだ寝床)…
超気になる!


“「おまえはあんまりりこうなやつとは結婚しなかったな。
わしは、午後、自分で思っていたほど自分がりこうでないことを発見したんじゃ」
「王さまはりこうでなくてよろしいのよ」愛情をこめて王にほほえみかけながら言いました。
「夫というものもね」
「では、おまえはなにを期待しているんだね?」
「深い愛情ですわ」”



『すばらしい新世界』

2013-03-12 00:01:19 | 日記


「すばらしい新世界」ハックスリー


人工授精後に瓶の中で育成されるベビー達。
妊娠、出産が存在しない為、母や子、夫や妻などの関係も存在しない。
特定の人に執着、依存する事のない、実にドライな人間関係。
子供達は誕生する前から階級が決まっており、
睡眠中に潜在意識に刷り込まれる標語の数々。
“~で良かった”“~でなくて良かった”“~は必要”
“今ではすべての人は幸福である”
幼児期に将来の職業や階級に合わせて条件反射の訓練が行われる。
そして、叶えられる欲望しか抱かない大人になり。
魔法の錠剤ソーマのおかげで悩みや憂鬱も吹っ飛ぶ生活。
徹底した管理のもと、何の疑問も抱かない幸せな人々しか存在しない世界。

劣等感を抱き、幸福なはずの世界に疑問を持つバーナード。
優秀過ぎて、この世界に物足りなさを感じるヘルムホルツ。
時々、居心地の悪さを感じても、疑問を抱くまでは至らないレーニナ。
ニュー・メキシコの蛮人保存地区からロンドンへ連れられてきた野蛮人ジョン。


気が弱く卑小な言動が痛々しいバーナード。
せっかく疑問を持っても、ここぞという時の小心さが悲しい。
この卑屈さ、読んでて辛い。。。

前半は生活や仕事ぶりなど文明が詳細に描写される。
しょっぱなの瓶入りベイビー部分はちょい読みづらい。
なんか読むのめんどくさい。
中盤は蛮人の生活やら行事やら、ジョンの辛かった過去など。
後半で、ジョンが文明に対し反旗を翻す!
と言っても、たったひとりで。

総統と野蛮人ジョンの対話が一種の幸福論になっとります。
ま、実際には幸福問答。のようなもの。

ジョンが原始的な生活をしようとするが、
誰からも理解されず。
おぉ、刷り込み教育の恐ろしさよ。
美、真理、自由の意味、存在を知らないという悲劇。
でも、幸せ。。。
知らないから幸せ…と言われると困りますな。
美、真理、自由って説明するの難しいもんなぁ。

運輸機関を利用し、工業製品を消費するように訓練される。
この刷り込みで経済が潤うっちゅう按配。
踊らされてる~。
ホントは要らない物、買わされてるぅ。。。

ジョンの思考や行動も、かなり首をかしげたくなりますが。
究極対究極…ってことなんでしょうな。

総統の話しぶり、細部に渡る説明っぷりがスゴい。
こりゃ反論すんの大変だでよ。
いじめか?

人間が生産される世界。
自我も個性も無く、もはや責務を負う物体と化した未来。。。

困った時に服用するソーマ。
なんだ錠剤かよ。
簡単な解決法過ぎるだろ~。
と思うと同時に、“幸福だ”と刷り込まれても、
どうにも出来ない気持ちになる事があるってのに驚き。
幸福と満足はまた違うもので、置き換えられない?
思い込まされても、感情はまた深いところに有るって?

妙な偏りとクセはあるものの、興味深い一冊。
傑作とまではいかんけど、中パ~ンチな出来。

すばらしい新世界─これほどまでに生きる意味のない世界って、ちょっと無いな。

『ダイナスティ』《エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?》《カンパニー・メン》

2013-03-09 12:00:43 | 日記


「ダイナスティ 企業の繁栄と衰亡の命運を分けるものとは」デビッド・S・ランデス

華麗なる一族の内幕をチラッと垣間見られるんかい?と期待。

銀行業界からは、ベアリング家、ロスチャイルド家、モルガン家
自動車業界からは、フォード家、アニェッリ家(フィアット)、プジョー、ルノー、シトロエン、トヨタ
天然資源業界からは、ロックフェラー家、グッゲンハイム家、シュルンベルジェ社、ウェンデル家


聞いたこと有る名前の数々。
美術館やら財団やらは知名度高いしな~。
要領よく駆け足で一族の歴史を知る。

一代目の執念、熱意、手腕。
時に常識ハズレ、エキセントリック、超吝嗇だったりする面白さ。
二代目の責任。
三代目の不安。
そして、一族以外から人材を求めるかどうか?

財を成す上での、勤勉さとあくどさ。
権力に対する立ち回り。
危機の乗越え方。

一族の結束と亀裂。
うぬぼれと挫折。

ベアリング家の紆余曲折と落とし穴。

ロスチャイルド家の人脈と子沢山。

モルガン家の巧みなパートナーシップ。
耐えられない程の長時間労働と超高額な給与。

フォード家の大混乱。
創始者の暴走、息子へのプレッシャー、孫との不和。

ロックフェラー家の徹底した節約ぶり。
チーズは、一日ひと切れのみ!
ふた切れ食べた事がバレると、一日中、お説教。
チーズ持つ手が震えますがな…
トラウマ覚悟?の教育法。。。

グッゲンハイム家の先見の明と決断力。

などなど。
その他にも引用される一族や、比べられる企業も多く、
興味深いエピソードやゴシップ的なネタも含め楽しめる。

しか~し、か弱い記憶力のせいで。
どのエピソードがどの一族だったっけ?な状態!!
(って私だけか?)
これじゃあ、小ネタにして知ったかぶりも出来ないぜぃ。


『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』(2005年)

全米第7位の巨大企業が数週間で倒産。
素朴な疑問…何やらかしたの?

未来の収入見込みを、現時点で上乗せしちゃうという…
そんなん有りなんや?
だったらいくらでも、数字挙げられそうだけど。
真実味に乏しい、とかって誰かから突っ込まれたりしないんかい?
突っ込むはずの人たちもグルだってば!!
ってそれ、詐欺じゃーん!!

というお粗末な話。
一部の幹部の暴走と巧みな経理。
損失は全部、傘下の会社に移してごまかすという仕組み。
更に会計事務所や顧問法律事務所に多額の手数料を支払う事で、
余計な突っ込みを入れさせないという手法。

愕然とするのが、社員に自社株購入を奨励。
でもって、幹部達は経営難がバレる前にさっさと持ち株を売却。

更にショックなのが。
カリフォルニアに対する、余りにも酷いやり方。
電力配給を秘かに少なくし、電気不足に見せかけて、電気料を上げる…
電気料が上がれば上がる程、株価が上がり、会社は大もうけ。

こんな事が許されるんすか?
許されるんですねぇ。
なんせ、当時のブッシュ大統領一家と仲が良いもんで。
怖いもの無しなエンロン会長。
当時のカリフォルニア知事が気の毒過ぎる…

自覚の無さ、傲慢、責任感の欠如。
思わず『自覚なき殺戮者』を思い出してしまいました。。。
有りえへんわ~。

結局は、刑期を務める事になった元幹部たち。
振り返ってみて、どこでやり直したいか、聞いてみたい…

『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』(2005年)
監督:アレックス・ギブニー、製作総指揮:マーク・キューバン、ジョアナ・ヴィセンテ、トッド・ワグナー
ナレーション:ピーター・コヨーテ


『カンパニー・メン』(2010年)

リストラされた会社員たちのそれぞれの、その後。

それなりのポストにいる人々中心の話。
かなりいい暮らしをしている為、たちまち支払い不能になってしまう悲劇。
生活そのものが、いかにローンで成り立ってるかハッとする哀しさ。
こういう時に、良妻賢母は非常に有りがたや、
って妙なプレッシャーを与える映画な気もするが。
不況の中で、苦戦する再就職。
安い給料で、文句言わずに人の2倍働く人を求める企業。
大量リストラで会社の株が上がるってのも変なの。
社員が居ないと会社は成り立たないと思ってたけどねぇ?
役員は平社員の700倍の給料。。。
手放そうとしない会社に飾ってある絵画コレクション。。。
企業のやってる事は謎ですな。
ま、700倍の給料貰えるんなら、何でもやっちゃうかぁ~
株価上げるためだったら、何だって有りか。。。

かなり一部の人に絞って描かれてますし。
あまり感情移入出来ないとこもありますが。
これはこれで、といった映画。

『カンパニー・メン』(2010年)
監督:ジョン・ウェルズ、脚本:ジョン・ウェルズ、音楽:アーロン・ジグマン
出演:ベン・アフレック、クリス・クーパー、ケヴィン・コスナー、マリア・ベロ、ローズマリー・デウィット、
クレイグ・T・ネルソン、トミー・リー・ジョーンズ



 “しかし、今後アメリカ人が、自分たちの幸福や満足のために
これからもずっと物やサービスの高い経済成長が続いていく必要はないのだということに気づいて、
より少ない物やサービスで満足できる大人になっていく、という可能性はあると思います。
 いまのような経済活動を維持していくには大規模な官僚機構が不可欠であり、結果的には
我々は彼らの清廉さや有能さに大きく依存することになってしまいます。しかし我々は
ここしばらくのあいだの出来事で、清廉さはあまり期待できないことを学びました。
いまのままでは我々は権力を握っている人間に対して、とてつもない無能さと、とてつもない報酬を
許さざるを得ないことになり、それは、いまのところまだ解決されていない非常に大きな問題だと思います。
それは法律にまったく触れないので、私はそれを合法的な詐欺と呼びたいと思います。”
byジョン・ケネス・ガルブレイス「希望─行動する人々」スタッズ・ターケル

『裏返しの男』

2013-03-06 18:37:04 | 日記


「裏返しの男」フレッド・ヴァルガス

ヴァルガス女史の創造する人物には、
好きにならずにはいられない優しさと可愛さがある。
登場人物それぞれの大変好ましい部分が、必ず描かれているので、
その世界に浸ることが、たまらなく心地好いのでR(あ~る)。

フランス、羊が草を食むのどか~な田舎。
ある日、数頭の羊が噛み殺されているのが発見される。
“ジェヴォーダンの狼”再び?
ついには、ある牧場主が噛み殺される…

復讐を誓う牧場主の息子と羊飼いの爺さん。
音楽家兼配管工のカミーユは請われて、手助けするハメに。
パリではアダムスベルグ警視が一連の狼事件に興味津々。
そして羊の被害は増え続け、被害地域も広がっていく…

犯人は狼か?狼男なのか?狼を飼いならす異常者なのか─?


取り留めの無い思考をもてあそぶアダムスベルグ警視。
理路整然と考えられないのが悩み。
ぼんやり一人で過ごすのが趣味。
川べりに座って、流れを枝でつついたり…
って大丈夫?しっかり~?!
大丈夫。
こんなんだけど、実は優秀。

工具カタログを見るのが趣味というカミーユ。
トイレだって、水道だって直しちゃう。
こんなんだけど、スゴイ美人。

大迫力の女牧場主や、捨て子だったという過去を持つその息子。
低音ボイスで羊に語りかける老羊飼い。
“臭い”“汚い”発言ひっきりなしな、狼とカミーユに夢中な熊の研究家。
ブランデー漬けのブドウ。
サン・ヴィクトールの地酒、甘口の発泡性の白ワイン。
あぁ、味わってみたい誘惑にかられる品々…
田舎の生活、キャンプ暮らしが微笑ましい。
いや、羨ましいとさえ思わせる描写の数々。

妙な組み合わせの連中による、不恰好な追跡劇が、
たまらなく魅力的。
恋愛の要素も、ロマンチックに絡みつつ。
意外な事件の真相に、えぇっ?!
…そうきたか。。。

剣突くしてない、今時珍しい包容力のあるミステリー。