先日、岐阜県に本拠をおく株式会社・ハルカインターナショナルから、センセーショナルな発表があった。
『日本初・アミガサタケ(モリーユ)の人工栽培に成功』
ハルカインターナショナルと言えば、キノコの菌床栽培として日本で初めて有機野菜規格(有機JAS認証)を得たのをはじめ、国内初のキヌガサタケ栽培、さらにそれを足がかりに循環型社会を目指す事業提案(SDGs)、おまけにクラウドファンディング募集など、旧態依然だった業界に現代的ビジネスの旋風を巻き起こしている、いま注目の企業だ。
そしてアミガサタケ。またの名をモリーユ!またはモレル!
春の訪れを告げるキノコとして広くヨーロッパで愛されており、食用キノコとして高い評価がある。
特にフランスで好まれ、キノコの王様・ヤマドリタケに匹敵する価値を持つほか、「筋金入りのキノコ後進国」とすら言われるイギリスやアメリカでさえも人気がある。アメリカには「モレル・フェスティバル」を開催する町もあるらしい。
その人気ゆえ、アミガサタケ栽培を夢見る者は多く、過去に幾人もチャレンジしてきた。しかし、そのほとんどが失敗するか、または部分的に成功するものの、安定した生産が難しく商業ベースに乗らない、などと聞いていたが・・・。
調べてみると、なんとこの10年ほどの間に、中国でアミガサタケ栽培が確立されたようで、かなりの量産に成功している、との情報があった。え?10年?けっこう前からやってるやん!聞いてへんぞ。
で、意外なことに、YouTubeで検索すると動画がたくさん落ちている。栽培技術とかさぞかし難しくて社外秘にしてるんじゃないかと思ったら、けっこうコアなことまで公開している。すげー、オープンだわ中国。
中国で栽培されているアミガサタケは、イエローとブラックの2種類ある系統のうちのブラックの方。
日本ではトガリアミガサタケに代表される、こげ茶色で先端の尖ったタイプのアミガサタケだ。
中国のアミガサタケ栽培についての論文にはMorchella importuna (モルケラ インポルトゥナ・・・学名。和名はついてない)という種類が使われると記してあるが、現地の栽培品種がすべて同種かどうかはよくわからない。
現地では『羊肚菌(ようときん・イァンドゥヂィン)』・・・”羊の臓物キノコ”と呼ばれている。羊の臓物などと言われてもなんのこっちゃわからんだろうが、焼肉の『ハチノス』といったら分かる人がいるかもしれない。ちょっとマイナーな焼肉の部位で、牛の第二胃(牛は胃が四つある)の肉のことを指すが、『羊肚』もおそらくハチノスと同じ役割を持つ臓器だ。表面が蜂の巣のように多角形の凹凹で覆われており(グロテスクゆえ閲覧注意)見た目がアミガサタケに似ている。
アミガサタケは菌床をつかって栽培するが、シイタケやエノキタケのように棚にならべるのではなく、畑に埋めて育てる。アミガサタケを育てるには菌糸が菌床に蔓延するだけでは足りなくて、「菌核」という菌糸のカタマリを作らせないといけないのだが、それは土の中の微生物の力を借りないとうまくいかないようだ。
四川省の徳陽という地方で大規模栽培している産地の動画を見てみよう。
①11月ごろに菌床を仕込む。おがくずを主原料にした培地を袋詰めして殺菌したのちに菌を植えつけ、3カ月ほど培養する。
②2月ごろ、黒いビニール製資材(寒冷紗)で覆った簡易ハウスをつくり、圃場に菌床を埋める(または砕いてバラまく?)
③15℃、スプリンクラーで多湿を保ちながら約40日、圃場に菌を蔓延させる。コケが生えるような状態がベスト。
④3~4月、菜の花が咲くころに収穫
といった流れである。思ったより粗放的に栽培してる感じで、そんなに複雑なノウハウがあるようには見えない。菌糸を培養するだけならわりと簡単と聞いたことがあるし、適した品種さえ見つかれば、栽培は難しくないのかもしれない。
ちなみに、中国で標準的な200坪(正方形にしたら26メートル四方、小学校の25メートルプール2つ強くらい)の畑で、最大200kgの収量が見込めるそうだ。
なんかこの動画、アミガサタケがいくらで売れるかとかすごい細かく解説してるけど、一般向けの番組にここまで必要か?(笑)
ちなみに、先ほどの論文にはアミガサタケ栽培にENBなるものが重要と記してある。ENBとは意訳すると「ポイ置き栄養袋」と言った感じで、小麦や米ぬかを袋に詰めて殺菌しただけのものなのだが、これに穴をあけて畑の地面に置いておくと、アミガサタケの菌糸が穴から侵入して栄養源にする、という。他のキノコ栽培では目にすることがないユニークな方法だ。ただ、この四川の産地では、ENBにあたるものが使われている気配がない。
いっぽうで、イエローモレルの方も栽培に向けて研究されているようだ。
アメリカでは、イエローモレルの菌床が実際に販売されている。探してみると、自宅の庭で栽培にチャレンジしている動画もある。
ただ、これが大規模に栽培されているという話は聞かない。あるいは企業秘密として公にしていないだけかもしれないが・・・
思うに、イエローモレルはブラックモレルに比べて物質を分解する能力が弱いのかもしれない。野外で観察すると、ブラックモレルが落ち葉がたまったような肥沃な場所を好むのに比べ、イエローモレルは清潔な開けた場所を好む傾向がある。木や草の根に菌根を作ることができるそうなので、その差なのかもしれない。
・・・と思ってたらこんな記事を見つけた。これも調べないと・・・
以上、長くなったが、ビジネスとしてアミガサタケ栽培はどうなのかについても後日まとめてみようかと思う。
『日本初・アミガサタケ(モリーユ)の人工栽培に成功』
ハルカインターナショナルと言えば、キノコの菌床栽培として日本で初めて有機野菜規格(有機JAS認証)を得たのをはじめ、国内初のキヌガサタケ栽培、さらにそれを足がかりに循環型社会を目指す事業提案(SDGs)、おまけにクラウドファンディング募集など、旧態依然だった業界に現代的ビジネスの旋風を巻き起こしている、いま注目の企業だ。
そしてアミガサタケ。またの名をモリーユ!またはモレル!
春の訪れを告げるキノコとして広くヨーロッパで愛されており、食用キノコとして高い評価がある。
特にフランスで好まれ、キノコの王様・ヤマドリタケに匹敵する価値を持つほか、「筋金入りのキノコ後進国」とすら言われるイギリスやアメリカでさえも人気がある。アメリカには「モレル・フェスティバル」を開催する町もあるらしい。
その人気ゆえ、アミガサタケ栽培を夢見る者は多く、過去に幾人もチャレンジしてきた。しかし、そのほとんどが失敗するか、または部分的に成功するものの、安定した生産が難しく商業ベースに乗らない、などと聞いていたが・・・。
調べてみると、なんとこの10年ほどの間に、中国でアミガサタケ栽培が確立されたようで、かなりの量産に成功している、との情報があった。え?10年?けっこう前からやってるやん!聞いてへんぞ。
で、意外なことに、YouTubeで検索すると動画がたくさん落ちている。栽培技術とかさぞかし難しくて社外秘にしてるんじゃないかと思ったら、けっこうコアなことまで公開している。すげー、オープンだわ中国。
中国で栽培されているアミガサタケは、イエローとブラックの2種類ある系統のうちのブラックの方。
日本ではトガリアミガサタケに代表される、こげ茶色で先端の尖ったタイプのアミガサタケだ。
中国のアミガサタケ栽培についての論文にはMorchella importuna (モルケラ インポルトゥナ・・・学名。和名はついてない)という種類が使われると記してあるが、現地の栽培品種がすべて同種かどうかはよくわからない。
現地では『羊肚菌(ようときん・イァンドゥヂィン)』・・・”羊の臓物キノコ”と呼ばれている。羊の臓物などと言われてもなんのこっちゃわからんだろうが、焼肉の『ハチノス』といったら分かる人がいるかもしれない。ちょっとマイナーな焼肉の部位で、牛の第二胃(牛は胃が四つある)の肉のことを指すが、『羊肚』もおそらくハチノスと同じ役割を持つ臓器だ。表面が蜂の巣のように多角形の凹凹で覆われており(グロテスクゆえ閲覧注意)見た目がアミガサタケに似ている。
アミガサタケは菌床をつかって栽培するが、シイタケやエノキタケのように棚にならべるのではなく、畑に埋めて育てる。アミガサタケを育てるには菌糸が菌床に蔓延するだけでは足りなくて、「菌核」という菌糸のカタマリを作らせないといけないのだが、それは土の中の微生物の力を借りないとうまくいかないようだ。
四川省の徳陽という地方で大規模栽培している産地の動画を見てみよう。
①11月ごろに菌床を仕込む。おがくずを主原料にした培地を袋詰めして殺菌したのちに菌を植えつけ、3カ月ほど培養する。
②2月ごろ、黒いビニール製資材(寒冷紗)で覆った簡易ハウスをつくり、圃場に菌床を埋める(または砕いてバラまく?)
③15℃、スプリンクラーで多湿を保ちながら約40日、圃場に菌を蔓延させる。コケが生えるような状態がベスト。
④3~4月、菜の花が咲くころに収穫
といった流れである。思ったより粗放的に栽培してる感じで、そんなに複雑なノウハウがあるようには見えない。菌糸を培養するだけならわりと簡単と聞いたことがあるし、適した品種さえ見つかれば、栽培は難しくないのかもしれない。
ちなみに、中国で標準的な200坪(正方形にしたら26メートル四方、小学校の25メートルプール2つ強くらい)の畑で、最大200kgの収量が見込めるそうだ。
なんかこの動画、アミガサタケがいくらで売れるかとかすごい細かく解説してるけど、一般向けの番組にここまで必要か?(笑)
ちなみに、先ほどの論文にはアミガサタケ栽培にENBなるものが重要と記してある。ENBとは意訳すると「ポイ置き栄養袋」と言った感じで、小麦や米ぬかを袋に詰めて殺菌しただけのものなのだが、これに穴をあけて畑の地面に置いておくと、アミガサタケの菌糸が穴から侵入して栄養源にする、という。他のキノコ栽培では目にすることがないユニークな方法だ。ただ、この四川の産地では、ENBにあたるものが使われている気配がない。
いっぽうで、イエローモレルの方も栽培に向けて研究されているようだ。
アメリカでは、イエローモレルの菌床が実際に販売されている。探してみると、自宅の庭で栽培にチャレンジしている動画もある。
ただ、これが大規模に栽培されているという話は聞かない。あるいは企業秘密として公にしていないだけかもしれないが・・・
思うに、イエローモレルはブラックモレルに比べて物質を分解する能力が弱いのかもしれない。野外で観察すると、ブラックモレルが落ち葉がたまったような肥沃な場所を好むのに比べ、イエローモレルは清潔な開けた場所を好む傾向がある。木や草の根に菌根を作ることができるそうなので、その差なのかもしれない。
・・・と思ってたらこんな記事を見つけた。これも調べないと・・・
以上、長くなったが、ビジネスとしてアミガサタケ栽培はどうなのかについても後日まとめてみようかと思う。