認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

認知症の地域予防と脳を活性化する生活習慣の指導-その2 Q/A Room(A-56)

2012-08-23 | アルツハイマー型認知症の予防活動

 Q:「アルツハイマー型認知症」の早期発見と回復及び予防の為の「生活習慣の改善」を目的とする「地域予防活動」を展開する上での保健師の役割については、基本的な理解はできているつもりです。脳を活性化する為の「生活習慣の改善」指導が回復と予防の要となると言うことも分かりました。ナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続による廃用性の「加速度的な機能低下」とイキイキとした生活による「脳機能の改善」について、「脳の機能」の構造的な測面から、もう少し詳しく説明して欲しいのですが。

           

 A: 生き甲斐なく、趣味なく、交友なく、運動もせず、目標もない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」、「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)の出番が極端に少ない生活の継続により、脳が廃用性の加速度的な老化(機能の低下)を速めていく過程について、脳の神経心理機能の測定による脳の機能レベル(正常、小ボケ、中ボケ、大ボケ)と定期的な検査によるその変化(改善、維持、悪化)を調べる「二段階方式」の手技で詳細にチェックしてみると;最初に、脳全体の司令塔の役割をしていて最高次機能である「前頭葉」の働きだけが加速度的に衰え始めることが分かります(この間は、高次機能である「左脳」と「右脳」の機能は正常なレベルのままなのです)。

           

 「アルツハイマー型認知症」の場合は、高齢者と呼ばれる年代のお年寄りだけが対象となるのです。第二の人生を送っている「高齢者」が、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が継続する日々を送っていると、最初に「前頭葉」の働きだけが加速度的に衰えて異常なレベルに入り込み「社会生活」に支障がでてきます(ここからが「小ボケ」の段階)。その後も「単調な生活」が継続したままでいると、「前頭葉」の機能の加速度的な衰えが更に進行していきます。「社会生活」に支障が出てくる域と「家庭生活」に支障が出始める域との境界点に達したときになって初めて、「前頭葉」を支えて協働する働きをしている高次機能である「脳の後半領域」の「左脳」と「右脳」の働きも、その順番で加速度的な衰えを示し始めるのです(ここから、家庭生活に支障が出てくる「中ボケ」の段階に入ります)。

前頭葉と高次機能の加速度的な「機能の衰え」の進行に連動して、その機能障害の相乗効果が症状(態様及び程度)となって現れてくるのです。「中ボケ」レベルになっても何も対策が取られないで(或いは、「年のせい」などと誤解されて放置され)「単調な生活」がそのまま継続されていると、脳全体の機能が更に加速度的に衰えていき、「セルフ・ケア」に支障が出てくるようになったところが回復困難な末期段階の「重度認知症」(大ボケ)なのです。「大ボケ」の領域は、「前頭葉」以外の機能は或る程度残っているレベルから「脳全体」がほとんど機能しなくなる植物人間状態までとても幅が広いのです。(ここをクリックしてください)。

       

上述した「二段階方式」の解析データから言えることは、「前頭葉」の機能が正常なレベルにあるということは、「左脳」も「右脳」も「運動の脳」もちゃんと働いているということなのです。すなわち、「前頭葉」がちゃんと働いていれば「脳全体」が正常なレベルで働いていて、たとえ物忘れなどの「記憶障害」の症状を示していても、「アルツハイマー型認知症」を発病してはいないと言うことなのです。加齢の中で「正常な老化」のカーブを描きながらも、「前頭葉」の出番が十分に確保された(しっかりと使う)「生活習慣」の維持の下で、「前頭葉」の機能が正常なレベルを保っていれば、「アルツハイマー型認知症」を発病することはないのです。「前頭葉」の機能を正常なレベルに保つ「生活習慣」の維持こそが、「アルツハイマー型認知症」の「予防」に直結するのです。「物忘れ」は、ここをクリックしてください)。

      

「アルツハイマー型式認知症」は、脳の機能レベルの加速度的な衰えに連動しつつ、「小ボケ」、「中ボケ」、「大ボケ」と何年もかかって緩やかに「段階的」に症状が進んでいくのが特徴です。「軽度認知症」(小ボケ)は回復が容易で、「中等度認知症」は回復可能で、「重度認知症」(大ボケ)のレベルになると、せっかく見つけても手遅れ回復は困難となるのです。(ここをクリック)。

回復可能な早期の段階を見つけるには、「脳の委縮」の度合いとか「記憶」のレベルとかに焦点を当てるのではなくて、「前頭葉」の働きのレベルに焦点を当てることが必要不可欠の条件になるのです。「記憶」の障害を第一の要件とし、「失語」「失行」「失認」を第二の要件に規定している「DSM-4」の診断基準は、その意味で重大な誤りを犯していると言わざるを得ないのです。「DSM-4」の基準に依拠して診断する限り、回復可能な早期の段階(「小ボケ」及び「中ボケ」)を見つけることはできず、回復困難な末期の段階(「大ボケ」)でしか見つけることが出来ないのです。「失語」「失行」「失認」の症状は、「重度認知症」(大ボケ)レベルの中でも後半になって出てくるとても重い症状であり、(MMSの換算値が一桁のレベル)にまで脳の機能が衰えてこないと出てこない症状だからです。

「アルツハイマー型認知症」の原因を研究している人達は、長年「重度認知症」(大ボケ)のレベルにあったお年寄りの死亡後の脳の「解剖所見」を基礎とした推測に基づいて、アミロイドベータ或いは、タウ蛋白が情報を伝達する神経細胞を侵し、そのことによって、「記憶の障害」が起きてくることが、「アルツハイマー型認知症」発病の原因だと理解しているのですが、これも重大な「誤解」なのです。

     

脳全体の「司令塔」の役割という極めて重要な機能でありながら、複雑で高度なその働きを調べる「手技」の開発が難しいが為に、これまで脳の専門家達から余り注目されず世界的にも研究が遅れて、脳の中の「空白域」と称されてきた「前頭葉」には、意欲、注意集中力、注意分配力、自発性、発想、計画性、洞察力、工夫、創造力、機転、推理、好奇心、感動、抑制力及び忍耐力並びにテーマや、その内容や、実行の方法や程度などを選択する為に不可欠の「評価の物差し」といった、私達が「意識的」に何かの「テーマ」を思いつき実行しようとする上でなくてはならない高度な機能が集積されています。

「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズム、早期診断と回復及び予防等のテーマについて深く理解するには、この極めて高度な働きをしている「前頭葉」の機能(機能レベルとそのアウトプット)に焦点を当てることが不可欠になるのです。この「前頭葉」の機能は、人間だけに特有のものなのです。この複雑で極めて高度な機能は、人間に最も近いとされるオランウータンやゴリラやチンパンジー等の類人猿にさえ原始的なレベルのものしか備わっていないのです。ましてや、認知症の治療薬の開発段階で記憶に絡むデータが良く使用される「ラット」などにはそのカケラさえも備わっていない、極めて高度な機能なのです。

       

専門家が注意を向けなければならないのは、「前頭葉の機能」機能レベルとそのアウトプットなのであって、いろいろな認知レベルで必要ではあるがその単なる手段としての機能でしかない、「記憶」ではないのです。ましてや、「前頭葉」とのリンクも考えずに単に「症状」だけを基礎とした「記憶」を追っていたのでは、何時まで経っても、「アルツハイマー型認知症」の本質を理解することはできないのです。その「記憶」のレベル(症状の程度及び態様)自体も、「記憶」の構成要素である記銘、保持、想起について「二段階方式」の手技を活用して詳しく調べてみると、「記銘」と「想起」の両面で「前頭葉」の三本柱である意欲、注意の集中力及び注意の分配力の働き具合に大きく左右されていることが分かるのです。

自分が置かれている状況下で、何を(テーマ)どのように(程度及び態様)実行するのか、それをシミュレーションした上で選択することが出来る脳の正常な働き具合、言い換えれば「前頭葉」の正常な機能レベルが失われた時、「アルツハイマー型認知症」は、もう始まっているのです。とわいえ、「前頭葉」の機能だけが異常なレベルに衰えている「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、高次機能である「左脳」も「右脳」も「運動の脳」も、機能が全て正常なレベルにあるので、DSM-4が第二の要件として規定している「失語」(左脳の機能障害)も「失行」(運動の脳の機能障害)も「失認」(右脳の機能障害)も全く起きてきていないのです。

       

(コーヒー・ブレイクーその1)認知症の研究者や治療薬を開発している人や医師達は、このことに早く気づいて欲しいと切に願うのです。大事な一生をかけて研究に打ち込んでいるはずなのに、「前頭葉」の機能が備わっていない、本能だけで行動している「ラット」の記憶行動などを追いかけていたのでは、何時まで経っても本質は見えてこないのです。(ここをクリックしてください

(コーヒー・ブレイクーその2)更に、働き盛りの50歳代で「アルツハイマー型」認知症になる人が増えているなどとテレビで放映されることがあります。それらケースの殆どは、「アルツハイマー型認知症」ではなくて「アルツハイマー型認知症」と紛らわしい病気である「側頭葉性健忘症」や「感覚性失語症」や「緩徐進行性失行」とまちがえている場合が殆どなのです。それらのケースは、若年性の認知症と誤診されるケースが多いのです。重度の「記憶障害」の症状や記憶障害と誤診されやすい「感覚性失語」による症状、或いは「緩徐進行性失行」の症状があっても、前頭葉」の機能レベルが正常な場合は、認知症ではないのです。なお、「前頭葉」の機能レベルは、神経心理機能テストで容易に確認できます。CTやMRIでは、確認することはできません。念のため注意を喚起しておきます。

             

そして、原因が分からないとされている「アルツハイマー型認知症」を発病するメカニズムを解明する上で重要なのは、肝心要のこの「前頭葉」には、「20歳を過ぎると、年をとるにつれて100歳に向かって、緩やかではあるが徐々に働きが衰えていく」という特徴を有する老化曲線、言い換えると「正常老化曲線」があること(第一の要件)なのです。それなりに前頭葉の出番がある「生活習慣」を維持していても、加齢とともに機能が緩やかに衰えて行くのです(高齢者の入口である65歳では、三本柱の機能レベルが最も高い20歳ごろのほぼ半分くらいに衰えてきていることが注目すべき要素なのです:「アルツハイマー型認知症」は、60歳以降の高齢者が発病の対象となり、70歳、80歳、90歳と高齢になればなるほど発病する人の割合が、どんどん増えて行くのです)。

私たちが意識的に何かのテーマを思いつき実行しようとするときに、必要とされる各種の認知機能を発揮する上で、必要不可欠の機能である「前頭葉の三本柱」とも言うべき、「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」には、この「正常老化曲線」の性質があるのです。そのカーブは、下図に示すとおりです。

               

この「前頭葉」の老化の曲線のカーブの行く先は、60歳を過ぎた高齢者と言われる年齢になると、脳の使い方という視点からの「生活習慣」に大きく左右されるようになります。脳の後半領域の働きである左脳、右脳及び運動の脳から送られてくる情報の質と量次第で、前頭葉の老化の曲線は、「緩やかなカーブ」(正常な老化)を描き、或いは、「加速度的に低下するカーブ」(異常な老化)を描くのです。 

たくさんの量と質のよい情報が送られてくるような「生活習慣」が継続されているお年寄りは、老化の曲線は緩やかなものとなり、身体が持つ限り脳も保てる、「かくしゃく老人」への道が開けてきます。生き甲斐なく、趣味なく、交友なく、運動もせず、目標もない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が継続されていて、量も少なく質も劣る情報しか送られてこない「生活習慣」が継続されている(「第二の要件」)お年寄りは、老化の曲線が加速度的な低下の曲線を描いて、急速に低空飛行していくことになります。その先には、「アルツハイマー型式認知症」の発病が待っていることになるのです。(発病のメカニズムについては、ここをクリック)。

            

上述のように、「アルツハイマー型認知症」は、脳の使い方という視点で言うところの「生活習慣病」なのです。本来的な性質として内包している「前頭葉」の「正常老化の曲線」の問題(「第一の要件」)と第二の人生に入って、何かを「キッカケ」にして、「右脳」も「運動の脳」も極端に使う機会が少なくなるような生活、「生き甲斐なく、趣味なく、交友なく、運動も楽しまない」ナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まり、そうした生活が継続していく(「第二の要件」)と、出番が極端に少なくなった「前頭葉」が「第一の要件」と「第二の要件」との「相乗効果」により廃用性の機能低下を起こしてきて老化を加速させていき、「アルツハイマー型認知症」発病への道を歩みだすことになるのです。(「キッカケ」については、ここをクリックしてください)。

高齢になったお年寄りが、何かをキッカケとして、歩行する機会が極端に少なくなると、膝の筋肉が廃用性の機能低下を起こして来て歩けなくなります。「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズムは、高齢者の膝の筋肉が廃用性の加速度的な機能低下を起こしていくのと同じメカニズムと考えられるのです。つまり、「アルツハイマー型認知症」の発病を予防するには、脳をしっかり使う自分なりの「生活習慣」の構築と維持が不可欠だと言うことになるのです。

       

(コーヒーブレイクーその3)前頭葉と左脳及び右脳の働き具合を同時に測定し、その「機能レベル」を総合的に判定すると共に、脳の機能レベルにリンクした「症状」を段階別に定型化し、且つ脳の機能を加速度的に衰えさせる原因となった「キッカケ」後のナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続という「生活歴」の確認により、「アルツハイマー型認知症」の早期診断を可能にした「二段階方式」の手技は、他に例のない独自のものです。その手技の詳細は、「マニュアル」化されています。「二段階方式」の手技は、簡便でありながら、極めて的確に、「アルツハイマー型認知症」の判定、認知症の重症度の判定並びに「アルツハイマー型認知症」以外のタイプの認知症との鑑別及び認知症と紛らわしい病気との鑑別が出来るように工夫され、様式化されています。

        

日本中どこの市町村でも、一部の大都市を除いて、近い将来に高齢化率が30%を超えるような高齢化がどんどん進んでいく中で、独居老人や老夫婦のみの世帯が加速度的に増加してきている現状を考えるとき、「お年寄りが、いつまでも元気なままでいられる」、「身体が持つ限り、脳もちゃんと持たせる」、或いは、「年齢相応の社会生活が送られる」レベルに脳の機能を保つための施策が、すべての市町村で切実に求められているのです。

もちろん、お年寄り本人自身が、「アルツハイマー型認知症」にならない為の最大限の努力を日々行う(「脳が生き生きと働くような」自分なりの生活習慣を構築し、維持するよう努力する)ことが大前提なのですが、家族がそれを側面から支える体制を築き、さらに行政が地域全体で支える「地域予防活動」を展開するための啓蒙活動や支援システムの構築や文化の創成やボランティアの組織化を行うことが超高齢化社会では求められるのです。こうした社会的要求にこたえられる効果的な施策が、エイジングライフ研究所が提案し、450を超える市町村で先駆的に実践されてきた、「二段階方式」に基づく「認知症予防教室」の展開を柱とした「地域予防活動」なのです。

       

そして、脳を活性化する「生活習慣」の構築により、イキイキとした第二の人生を送る上での自分なりの「生き甲斐を創造」する新しいコンセプトに基づく「地域予防活動」を展開する中で、市町村の保健師さん達に期待されているのは、「脳の健康」の必要性と重要性とを地域住民に啓蒙する活動を立ち上げて、全域に拡大していくことなのです。

第二の人生を歩んでいるお年寄りが、家に閉じこもる時間をできるだけ避けて、できるだけ家の外に出ていく時間を多くして、できるだけ多くの人と交わり、コミュニケーションや交歓の場を楽しみしながら、何らかの共通の目的に添った「テーマ」や「活動」を集団で協働して行うこと、換言すれば、「社会生活」を楽しむ時間を集団の中での交わりを通じて共有する生活を送ることが、「アルツハイマー型認知症」の予防に不可欠の条件となるのです。(ここをクリック)

         

(コーヒー・ブレイクーその4)「前頭葉」は、「社会生活」を送る上で不可欠な脳なのです。第二の人生を送っている高齢者にとって、その「前頭葉」を支えるもっとも頼りになる柱は、「右脳」なのです。「右脳」の出番は、趣味や遊びや人付き合いを楽しむ場が中心となるのです。保健師さんを中心とした「アルツハイマー型認知症」予防のための新しい地域活動は、「脳の働きという物差し」により定期的に脳の働き具合を検査する機会を持ち、且つ「右脳を活性化させる集団活動の場」の創造を柱とするものであることを肝に銘じておいて頂きたいのです。

注)本著作物(このブログA-56に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

        エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

    

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