テレビドラマも時代劇もほとんど見なかったが、半年近く前から、連続ドラマ『桃太郎侍』を見ている。1976年の再放送で、平日の午前、BS日テレ。1時間足らずの、短いドラマで、1話完結。
原作は山手樹一郎。脚本と演出は、毎回変わる。主人公は、将軍の落胤で自由気ままな素浪人。剣が強く、長屋の一室で養生指南という整体師のような仕事をしている。主演は高橋英樹。
録画のドラマを見始める時、
(このあたしがテレビドラマを見るなんて!)
(時代劇を楽しめるなんて!)
不思議であり、新たな自己の発見と言っていい。年齢を重ねて生きていくということは、自分が変わって行くことだと、つくづく思う。私にとっては新たな体験である。テレビドラマなんてツマラナイ、時代劇なんて興味ないと、思い込んでいたし、周囲にも言っていたからだった。
きっかけは、昨年、状況の変化で精神不安定になったこと。こんな時こそ、好きなフランス映画やイタリア映画を観て逃避すれば精神状態が落ちつくかもと思ったが、駄目なのである。やはり落ちつかない、感情移入できない、感性を揺さぶられない。
そこで、今まで全く見る気が起こらなかった『桃太郎侍』を録画してみたら、予想外に面白くて楽しめた。主演の高橋英樹は、わりと好きな俳優で、ずっと以前、プライムビデオだったかテレビ放送だったかで、『伊豆の踊子』(1963年)を観て、
(あ~ら、美青年、日本にこんな美青年俳優がいたのね)
と思ったものの、他の主演映画を観たくなるほどでもなかった。日本映画とか日活映画には興味がなかったからだった。
その後、だいぶ経って、お正月の12時間ワイドドラマで『織田信長』を見たら、面白くて素晴らしくて最後まで見てしまった。
高橋英樹の織田信長の独特の演じ方に感動したし、長時間ドラマにするだけの、内容のあるストーリーにもなっていて飽きさせない。
当時、友人にその話をしたら、織田信長が好きな友人は、「高橋英樹が信長?」と全然、興味のない感じだった。
ということで、高橋英樹主演映画を1本、テレビドラマを1本見ただけで、今回が3度目になる。
1時間足らずのテレビドラマだから、ストーリーはマンネリ化で先が読めるし、結末もわかる。
終盤で桃太郎が悪代官たちを斬り捨てながら、「一つ、人の世、生き血を啜り……二つ、不埒な悪行三昧……三つ、醜い浮世の鬼を、退治てくれよう、桃太郎」と、鋭い目付きで睨みつけながら毎回、独特のセリフを口にする。
同じ長屋の登場人物たちのキャラクターもそれなりに面白いし、桃太郎を恋い慕う芸人の女太夫を演じる野川由美子も適役。
ただ、毎回変わる、交替で書いている脚本家の名前も覚えてしまうと、この脚本家は面白い、面白くないと、最初に流れるクレジットで名前を見て、
(やっぱり、脚本が……)
と、もの足りなさを感じながら見終えることもある。
監督名のクレジットで、〈田中徳三〉の名前を見た時は、胸が躍る感じになった。数少ない好きな日本映画の溝口健二監督の助監督で、名前を見ていたからだった。
5年間で第258話まで。もうすぐ完結。
第1話と第2話がYouTubeで無料配信されているので、見てみた。高橋英樹と野川由美子以外のキャストたちが、終盤近くとは違う。5年間も続いたドラマの最初のころの回と完結の回近くに変化があるのは無理もないこと。
すでに半分近くの回を見たが、最初から再放送したら、全部の回を見たいと思う。
先日、友人にその話をしたら、
「ああ、高橋英樹がお面かぶって出てくる」
「よく知ってる、見てたの?」
「いや」
そう言った後、
「会ったことあるよ、高橋英樹に」
「えっ、会ったの? どこで?」
「知り合いの息子さんの結婚式」
「知り合いって?」
「会社の会計士、同じ会計士さんだった」
国際級の一流ホテル、同じテーブル席で、言葉も交わした様子。
「『伊豆の踊子』、観に行った話をした。喜んでたけど……」
と、友人がその時、口にした言葉に小さな驚き。
「それは一言よけいよ、せっかく喜んでたでしょうに、気を悪くしたみたいだった?」
「いや、酔ってたしね、つい」
「笑ってた?」
「うん」
「他にはどんなこと?」
「同じテーブルの人たちと、みんなで話してたから、映画の話じゃなく」
「ふうん」
その友人と長年、会っているが、初めて聞いた話でちょっと面白かった。
原作は山手樹一郎。脚本と演出は、毎回変わる。主人公は、将軍の落胤で自由気ままな素浪人。剣が強く、長屋の一室で養生指南という整体師のような仕事をしている。主演は高橋英樹。
録画のドラマを見始める時、
(このあたしがテレビドラマを見るなんて!)
(時代劇を楽しめるなんて!)
不思議であり、新たな自己の発見と言っていい。年齢を重ねて生きていくということは、自分が変わって行くことだと、つくづく思う。私にとっては新たな体験である。テレビドラマなんてツマラナイ、時代劇なんて興味ないと、思い込んでいたし、周囲にも言っていたからだった。
きっかけは、昨年、状況の変化で精神不安定になったこと。こんな時こそ、好きなフランス映画やイタリア映画を観て逃避すれば精神状態が落ちつくかもと思ったが、駄目なのである。やはり落ちつかない、感情移入できない、感性を揺さぶられない。
そこで、今まで全く見る気が起こらなかった『桃太郎侍』を録画してみたら、予想外に面白くて楽しめた。主演の高橋英樹は、わりと好きな俳優で、ずっと以前、プライムビデオだったかテレビ放送だったかで、『伊豆の踊子』(1963年)を観て、
(あ~ら、美青年、日本にこんな美青年俳優がいたのね)
と思ったものの、他の主演映画を観たくなるほどでもなかった。日本映画とか日活映画には興味がなかったからだった。
その後、だいぶ経って、お正月の12時間ワイドドラマで『織田信長』を見たら、面白くて素晴らしくて最後まで見てしまった。
高橋英樹の織田信長の独特の演じ方に感動したし、長時間ドラマにするだけの、内容のあるストーリーにもなっていて飽きさせない。
当時、友人にその話をしたら、織田信長が好きな友人は、「高橋英樹が信長?」と全然、興味のない感じだった。
ということで、高橋英樹主演映画を1本、テレビドラマを1本見ただけで、今回が3度目になる。
1時間足らずのテレビドラマだから、ストーリーはマンネリ化で先が読めるし、結末もわかる。
終盤で桃太郎が悪代官たちを斬り捨てながら、「一つ、人の世、生き血を啜り……二つ、不埒な悪行三昧……三つ、醜い浮世の鬼を、退治てくれよう、桃太郎」と、鋭い目付きで睨みつけながら毎回、独特のセリフを口にする。
同じ長屋の登場人物たちのキャラクターもそれなりに面白いし、桃太郎を恋い慕う芸人の女太夫を演じる野川由美子も適役。
ただ、毎回変わる、交替で書いている脚本家の名前も覚えてしまうと、この脚本家は面白い、面白くないと、最初に流れるクレジットで名前を見て、
(やっぱり、脚本が……)
と、もの足りなさを感じながら見終えることもある。
監督名のクレジットで、〈田中徳三〉の名前を見た時は、胸が躍る感じになった。数少ない好きな日本映画の溝口健二監督の助監督で、名前を見ていたからだった。
5年間で第258話まで。もうすぐ完結。
第1話と第2話がYouTubeで無料配信されているので、見てみた。高橋英樹と野川由美子以外のキャストたちが、終盤近くとは違う。5年間も続いたドラマの最初のころの回と完結の回近くに変化があるのは無理もないこと。
すでに半分近くの回を見たが、最初から再放送したら、全部の回を見たいと思う。
先日、友人にその話をしたら、
「ああ、高橋英樹がお面かぶって出てくる」
「よく知ってる、見てたの?」
「いや」
そう言った後、
「会ったことあるよ、高橋英樹に」
「えっ、会ったの? どこで?」
「知り合いの息子さんの結婚式」
「知り合いって?」
「会社の会計士、同じ会計士さんだった」
国際級の一流ホテル、同じテーブル席で、言葉も交わした様子。
「『伊豆の踊子』、観に行った話をした。喜んでたけど……」
と、友人がその時、口にした言葉に小さな驚き。
「それは一言よけいよ、せっかく喜んでたでしょうに、気を悪くしたみたいだった?」
「いや、酔ってたしね、つい」
「笑ってた?」
「うん」
「他にはどんなこと?」
「同じテーブルの人たちと、みんなで話してたから、映画の話じゃなく」
「ふうん」
その友人と長年、会っているが、初めて聞いた話でちょっと面白かった。