帰宅後、入浴した。洗髪して身体を洗う爽やかさもあるが、日中のお風呂は気持ちがいい。湯の中ではいつものように首の筋肉の痛みを感じず、頭痛も起こらなかった。いい経験だったわと、その日の半日を想いながら、しばらく浴槽に身を沈めていた。
夜と違う日中の入浴独特の心地良さに、たっぷりと浸った後、浴室を出た。湯滴を吸い取るバスタオルを身体に巻きつけ、洗面所の鏡の前に立って、用意しておいた湿布を透明フィルムからはがし、
(いよいよ、ロキソニン湿布初体験!)
と、ワクワク気分に包まれた。何と言っても、病院で処方してもらった湿布である。
(冷湿布より、きっと効くわ!)
フィルムからはがした茶色の湿布を、鏡を見ながら首の右横に近づけ、少しずつ、ゆっくり貼っていく。
(あ……)
かすかに妙な感覚。いつも使用していた冷湿布の、冷んやりした気持ち良さは、なかった。
けれど、貼り終えた時、ジワーッとするような温感が、肌の奥へ染み込むようにして広がる感覚があった。
(これ、効きそう、ジワーン、ジワーンて感じ、凄く効いてるみたい!)
うれしくなった。市販のと同じと医師は言っていたけれど、
――病院で処方してもらった湿布のロキソニン――
と意識するせいかどうか、明らかな効能を、貼った瞬間から感じたのだった。
(それに比べて通販の冷湿布は何だったの)
使用期限が数か月後だから効き目が良くなかったのかもしれないけれど、貼った瞬間の冷んやり感が気持ちいいだけで、何と6日間も貼り続け完治しなくて、私のモチ肌に赤いかぶれを起こしてしまったなんて。もう2度と買わないことに決めた。まだ数枚残っている冷湿布を箱ごと、屑箱に捨てた。
(即効性があって夜までに治っちゃうかも!)
パジャマ姿で昼食の用意をしながら、ロキソニン湿布~、ロキソニン湿布~と、歌い出したい気分に包まれた。
録画の朝のワイドショーを見ながら食事をすませ、少ししてから処方薬の3つの袋から薬を1つずつ取り出した。それを眼にして、超ビックリ。
(こんな小さい薬もある! 良かった!)
3種類のうちの1つは予想をはるかに超えた小さなサイズの薬で安堵した。他の2つの薬も、そう大きくない。きっと薬の進化で、処方薬はすべて小粒のサイズになったのかもしれない。
錠剤の薬を飲むのは苦痛に近いほど苦手な体質なのだった。
(ちゃんと飲み込めるかしら、気管に入っちゃったらどうしよう)
という不安感が、かすめるからだった。水だけ飲み込み、錠剤の薬は口に残ったまま、ということがよくあった。勢いをつけて薬をゴクンと飲み込むのが至難の業と言いたいくらい嫌いだった。ずっと以前、現実に、私は目の前で、錠剤の薬を3粒、同時に1度で飲み込んだ人を見たことがある。驚愕のあまり瞬きもせずに凝視したまま、「特技ね」と言ったら、逆に驚かれた。
けれど世間には、錠剤より粉末のほうが飲みやすいという人は少なくないと思う。逆に、粉末より錠剤のほうが飲みやすい、という肉親が何人かいる。
ともあれ、飲み込みやすそうな小粒の薬を見て、あの病院を選択した運の良さを感じたし、担当医師に感謝したくなった。
3種類の袋から1つずつ出した後、包装紙からも取り出して、小皿に入れておく。薬を飲む時は水より湯冷ましのほうが好きなので、カップの中にポットから熱湯を少し入れて水で薄めた。
カップを手にして、小皿の上の3粒の薬を、1粒ずつ見つめた。
(どれが魔法の薬かしら)
早く治ると医師が説明した、魔法の薬。これかもしれないと一番最初に、一番小粒のサイズの薬を飲み込んだ。ゴクンというほどではなく、それほど勢いをつけなくても、一度で、ちゃんと飲み込めた。
他の2つの薬も、昔の大きなボタンみたいなサイズの薬ではなく、少しゴクンと勢いつけて飲んだら、1つずつ、それぞれ一度でちゃんと飲み込めた。自分で自分を褒めたい気分だった。
どれが魔法の薬だったか、わからなかったが、
(即効性があるのかしら、ううん、完全に治癒するまで数日間は飲むのかも)
2週間分はいくら何でも多過ぎる気がしたが、すべて処方薬は2週間分出すという病院の決まりがあるのかもしれない。
「治ったら飲まないで」
という医師の言葉を、思い出した。やはり薬は毒。薬は諸刃の剣。副作用が続くと身体によくないということなのだと思った。
食器洗いと歯磨きをすませ、スマホを手にしてベッドに入った。ニュース速報を最後まで読まないうち、いつもの昼食後の心地良い眠気に襲われた。
夜と違う日中の入浴独特の心地良さに、たっぷりと浸った後、浴室を出た。湯滴を吸い取るバスタオルを身体に巻きつけ、洗面所の鏡の前に立って、用意しておいた湿布を透明フィルムからはがし、
(いよいよ、ロキソニン湿布初体験!)
と、ワクワク気分に包まれた。何と言っても、病院で処方してもらった湿布である。
(冷湿布より、きっと効くわ!)
フィルムからはがした茶色の湿布を、鏡を見ながら首の右横に近づけ、少しずつ、ゆっくり貼っていく。
(あ……)
かすかに妙な感覚。いつも使用していた冷湿布の、冷んやりした気持ち良さは、なかった。
けれど、貼り終えた時、ジワーッとするような温感が、肌の奥へ染み込むようにして広がる感覚があった。
(これ、効きそう、ジワーン、ジワーンて感じ、凄く効いてるみたい!)
うれしくなった。市販のと同じと医師は言っていたけれど、
――病院で処方してもらった湿布のロキソニン――
と意識するせいかどうか、明らかな効能を、貼った瞬間から感じたのだった。
(それに比べて通販の冷湿布は何だったの)
使用期限が数か月後だから効き目が良くなかったのかもしれないけれど、貼った瞬間の冷んやり感が気持ちいいだけで、何と6日間も貼り続け完治しなくて、私のモチ肌に赤いかぶれを起こしてしまったなんて。もう2度と買わないことに決めた。まだ数枚残っている冷湿布を箱ごと、屑箱に捨てた。
(即効性があって夜までに治っちゃうかも!)
パジャマ姿で昼食の用意をしながら、ロキソニン湿布~、ロキソニン湿布~と、歌い出したい気分に包まれた。
録画の朝のワイドショーを見ながら食事をすませ、少ししてから処方薬の3つの袋から薬を1つずつ取り出した。それを眼にして、超ビックリ。
(こんな小さい薬もある! 良かった!)
3種類のうちの1つは予想をはるかに超えた小さなサイズの薬で安堵した。他の2つの薬も、そう大きくない。きっと薬の進化で、処方薬はすべて小粒のサイズになったのかもしれない。
錠剤の薬を飲むのは苦痛に近いほど苦手な体質なのだった。
(ちゃんと飲み込めるかしら、気管に入っちゃったらどうしよう)
という不安感が、かすめるからだった。水だけ飲み込み、錠剤の薬は口に残ったまま、ということがよくあった。勢いをつけて薬をゴクンと飲み込むのが至難の業と言いたいくらい嫌いだった。ずっと以前、現実に、私は目の前で、錠剤の薬を3粒、同時に1度で飲み込んだ人を見たことがある。驚愕のあまり瞬きもせずに凝視したまま、「特技ね」と言ったら、逆に驚かれた。
けれど世間には、錠剤より粉末のほうが飲みやすいという人は少なくないと思う。逆に、粉末より錠剤のほうが飲みやすい、という肉親が何人かいる。
ともあれ、飲み込みやすそうな小粒の薬を見て、あの病院を選択した運の良さを感じたし、担当医師に感謝したくなった。
3種類の袋から1つずつ出した後、包装紙からも取り出して、小皿に入れておく。薬を飲む時は水より湯冷ましのほうが好きなので、カップの中にポットから熱湯を少し入れて水で薄めた。
カップを手にして、小皿の上の3粒の薬を、1粒ずつ見つめた。
(どれが魔法の薬かしら)
早く治ると医師が説明した、魔法の薬。これかもしれないと一番最初に、一番小粒のサイズの薬を飲み込んだ。ゴクンというほどではなく、それほど勢いをつけなくても、一度で、ちゃんと飲み込めた。
他の2つの薬も、昔の大きなボタンみたいなサイズの薬ではなく、少しゴクンと勢いつけて飲んだら、1つずつ、それぞれ一度でちゃんと飲み込めた。自分で自分を褒めたい気分だった。
どれが魔法の薬だったか、わからなかったが、
(即効性があるのかしら、ううん、完全に治癒するまで数日間は飲むのかも)
2週間分はいくら何でも多過ぎる気がしたが、すべて処方薬は2週間分出すという病院の決まりがあるのかもしれない。
「治ったら飲まないで」
という医師の言葉を、思い出した。やはり薬は毒。薬は諸刃の剣。副作用が続くと身体によくないということなのだと思った。
食器洗いと歯磨きをすませ、スマホを手にしてベッドに入った。ニュース速報を最後まで読まないうち、いつもの昼食後の心地良い眠気に襲われた。