Cathay Pacific Air line
店を出て歩き始めると、風はないが落ち着いた心地よい暑さに、独特の香辛料の香りが漂う。
この雰囲気にも慣れてきた。現地の人にも見えなくないかもと思うとちょっとした楽しさが込み上げる。
先ほどから彼女は無言だ。何か覚悟を決めたような、それでいて何か別のことを考えているのだろうか
表情からはどちらとも受け取れる
交差点を左に曲がり、何か話そうかとしばらくすると
ピリリリ・・・ピリリリ・・・
彼女の携帯電話が鳴る。
どうやらメールのようだ。慣れた手つきで日本では見ないような個性的なスマホで返信をしている。
そろそろ目的の建物が見えてもいい頃に、彼女の手が止まりどうやら返信は完了したらしい。
よく考えろ、メールの相手は誰だろう?彼氏か?それとも現地のマフィアか?はたまた屈強な軍人崩れか?
「ほらっ。見えてきたわ。」
彼女の指差す方向に、雰囲気的には日本でいう格安ビジネスホテルようなしっかりして清潔そうな建物が見える。
「もしよかったら一杯飲んでいかない?ビールが安いから一人で飲むには多すぎる量を買っちゃったの。ダメ?」
なんだかいけるようで断るのもどうかと思うけど。
さりげなくその可能性 (相手に気がある) を残す振りをして逃げるべきだ。
ホテルはこの辺りなの?
「向かいの交差点を左に曲がって、通りを250mくらい歩くかしら。」
じゃぁそこまで送っていくよ!
「そうね。あなたお酒を飲めそうな感じじゃないもの。」
かなり飲めるけどね!
言った後に、しまったぁ、余計なことを言ったと直ぐに考えた
ほら自分はまだ宿が決まってないから、飲んじゃうとまともに探せない気がする。からさ
「いいわ、送って。先に言っておくけど一緒に泊めれないわよ。」
えっ?だめなの?
「いい?私は何しにここにいるのか言ったはずよ。」
遊びたかったからじゃないの?
「えっ?そんな、って言うかまぁちょっとわね。」
じゃぁそろそろ行きますか。いいよ払うよ
「大人だねー!ご馳走になりまーす。」
確実にからかわれている。
「彼は日本人ですよ。身長が高くて180cmあるわ。」
「そして彼は力も強いの。けんかしても勝てないから現地の人も従いやすいみたい。」
へぇーそうなんだ。
うっわっ最悪、とんでもないもの引いてしまった。
やられる前に逃げよう。でもちょっとだけ寂しさと共に、危ない橋も良いかなーなんて
「で、どうするんですか?このあと」
えっ?何の答えも用意していなかった。
いやぁー
安いホテルでも探そうかな?
「えっ?もう帰るんですか?」
まだ宿を決めていなし、簡単に見つかりそうだけどやはり日本人というだけでアジアでは感情が一味違う。
あっ!
当然わかっていますよね、言いたい事は
「ふふっ何度も私ここに来ていますけど、あなたみたいに楽しそうな日本の方は見たことないわ。」