昨日は動楽亭昼席へ。
開場15分位前に着いたのだが、並んでいるのは2,3人。
ちょうどサンケイの南天襲名披露の日なので、
仕方ないと言えば、まあ、仕方がない。
結局25人程度の入り。
「転失気」(優々):△
そうばがインフルエンザ、ということで代演。
珍念は楽しげで、まあ良かったが、
和尚さんがイマイチ。
膝を叩くところなど、ベースにあるべき風格が感じられなかった。
この風格がないと、「それでも知ったかぶりをする」業や
後でおさまってバカなことを言うギャップが映えない。
テキストとしては
和尚さんが最初から「花屋さんに借りに行きなさい」と言うのに
違和感を持った。
これで「物」に限定されることになるが、
特に何も限定しない方が自然かな、と思う。
サゲは「奈良平安の昔から」。
分かりやすいし、悪くないサゲだと思う。
「道具屋」(佐ん吉):△
マクラは米朝事務所HPリニューアルに伴う紹介文の話など。
全体に、やはり優々と比べると安定感が違う。
おじさん、アホともきっちり描けている。
ただ、この日はあまりウケにつながっていなかった。
一つの理由は、ツッコミに微妙な待つ間が空くこと。
それが盛り上がりに水を注すことにつながってしまったように思う。
個人的にはこの人は好きな噺家で、
期待していただけに残念。
「公園の幼児ん坊」(遊方):△
これまた非常に粗いマクラ、ネタ。
マクラの着眼点、紹介の仕方など、
素材が良く、よくウケていた。
舌足らずなところや口調など、しんどいところはあるが。
ネタは、2人の父親の会話で展開する話。
子どもが喋っている場面も間接話法で続けていくところ、
テンポや雰囲気は良いが、技術的には難しいところ。
もう少し父親の子どもに対する愛情のようなものが出た方が
伝わりやすかったと思う。
設定やギャグなど、個々の題材は良いのだが、
全体に起伏がなくダラダラする印象。
また、シモがかった部分でやや引かれてしまっていたように感じた。
「荒茶」(学光):△+
医者や「予防介護」の人などと一緒に回る話。
デイサービスのように、客に実際に手を動かしたりさせる。
内容的にはけっこう興味深かった。
マクラとして適切かどうか、というと無論別の話。
ネタは、この人らしく全体にあっさりやっている。
武将が長生きだった話やいろいろ年号なども入れて尤もらしさを増している。
特に七人の大名の人物描写をする訳ではなく、
細川忠興と他の大名の会話のテンポや応酬で
大ウケではないが軽く笑わせている。
強く押す南左衛門とはまた違う行き方。
清正の髭が入る件りで客席に語りかけるのは、好みではない。
理解している客が多いのだから、
そこで敢えて理解させるために説明を加えるのはクドいと感じる。
ここはさらっと進めてしまう方が良いと思う。
「たいこ腹」(福楽):○
復帰後初めて見た。顔も艶々している。
元気そうで良かった。
この人のマクラの、少し引いた味がけっこうハマっていた。
ネタは、幇間にしても若旦那にしても
その適当さ、軽さがよく出ており、楽しく聞けた。
もう少しギャグを入れてもいいかな、とも思うが、
若旦那が適当なことを言って2本目、3本目の鍼を打っていくところが
「訳分からんことを適当に言っている」ことも伝わってきっちりウケていたので、
良かったと思う。
若旦那が帰った後、
店の者が上がってくるまでの主との掛け合いや幇間の説明など、
少しクドく感じた。
見ている側としては状況は分かっているので、
もう少し省略してテンポ良く進めた方が良いと思う。
「文六豆腐」(文太):○
娘さんの話を軽く振ってネタへ。
ネタは、要は「文七元結」。
大工が置屋で金を借りて意見される場面はなく、
手代が四ツ橋で飛び込もうとしている場面から。
上方の人間としては「金を押し付ける」気持ちは
親和性を持ちづらいのでは、と思っていたのだが、
「死なせる訳にはいかない」「後ろで死なせたら気が悪い」
あたりの気持ちは、上方/江戸問わず共通で伝えられるんだな。
ただ、長屋での「見つかったので50両返す」とする旦那に対して
「もう縁が切れているから受け取れない」とする大工の気持ちは、
少し上方では分かりづらい。
おかみさんが出てくるところなど、
歌舞伎の影響が強いかな、と思う。
全体に、良い噺としてきっちり伝えられていたと思う。