開場時には10人程度だったが、結局30人程度の入りにはなった。
もっと入っても良さそうな会なのに。
「米揚げ笊」(染吉):△
この人を見るのは初めて。
声が大きいのは良い。
若干演劇風の発声で、遠くに声が飛んでいっている気はする。
マクラを振らず、時間の都合かネタもかなり端折っていた。
「急いている男に尋ねる」や「笊売りの売り声の練習をする」場面なし。
確かにこのネタの本筋でないと言えばないのだが、
このあたりのよくウケる箇所を抜くのは非常に勿体ない。
きっちり語尾まで喋っているが、少しリズムが悪いところがあった。
あと、堂島の旦那のベースに
大きさと相場師の修羅場をくぐって来た凄みは欲しい。
一度めくりを返し忘れたところがあったが、
座布団を折って返すなど、
お茶子としての動きが丁寧できびきびしており、好感が持てた。
「口合小町」(雀三郎):○-
マクラで学生時代に言っていたものなど、
様々な口合を紹介。
南光の作ったものが素晴らしい。
演り慣れていないネタらしく、
言い淀んだり流れが悪かったりする箇所が散見された。
最初のおかみさんの言い立てははっきり聞き取れるが、
「立て板に水で喋り続ける」感じが「船弁慶」などに比べて弱い。
もう少し間を詰める箇所を増やす必要があるのかも知れない。
オリジナルと思われる口合も、2つ3つ入っていた。
「口合を言うための無理やりの設定だろう」と感じることの多い
「衝立を水で拭くか湯で拭くか」や、
「餅屋の作兵衛さんが樒持って歩いている」や
「隣の茂兵衛さん」などが自然に聞こえるのが良い。
恐らく、その光景やそれを見た際の人物の心理を想像し、
良いバランスで表現できているからだと思う。
例えば「樒持って歩く」と言う時には
それを見た甚兵衛さんの「死人が出ている」ことを悼む様子が見えるし。
最後の夫婦の会話、徐々におかみさんが調子に乗っていく様子が明確に描写され、
徳さん(だったか)が「悪かった、もう遊びに出ない」「お前が心配」と言うのが
さもありなん、と思わせて良かった。
「餅屋問答」(出丸):○-
以前の公開収録の際と同様のマクラ。
その時よりも詰まる箇所も少なく、勢い良く進めていた。
雀松とは違う雰囲気だが、
餅屋の六兵衛さん(ざこばを想定しているように思う)、
偽住職、権助の乱暴さや軽さなど、この人に合ったネタだと思う。
雲水はもう少し収まった方が良いかも知れないが、まあ、仕方ないだろう。
途中で科白を(けっこう)飛ばして言い直してしまっていたのが勿体ない。
最後のバラシの最初の「こんなに大きい」の言い方が
一瞬引いてしまっていたように感じた。
ここはこの人らしく、押し続けて欲しかったところ。
体調・体力的な問題かも知れないが。
「軒づけ」(雀三郎):◎-
パンフにも書いている「初音ミク」の話。
演者だけでなく、3Dの客を入れる、
笑う箇所や笑い方をいろいろ変える、という発想が面白い。
特定の客の名前を出すのはどうかと思う(分かってしまう自分も嫌だ)が。
ネタは枝雀ベースだと思うが、
雀三郎なりのギャグ、誇張、ツッコミの科白がいろいろ入っていて良かった。
「てんさん」の三味線に対する不安や、
「てんさん」が「ここかな」と言って(座敷に上がった時も)軽く一撥入れるところなど。
「鰻の茶漬」と「てんさん」という2人のアホというかイチビリについて、
「てんさん」メインで「鰻の茶漬」はそこまでではない、と感じることが多いのだが、
どちらも同程度にかなり難儀な人になっていた。
また、浄瑠璃好きな他の連中も振り回されつつ、
単なる一般人ではなく、
この連中はこの連中で(家族からだけでなく)一般社会では
爪弾きに遭っているんだろうな、と感じられる人物設定になっていた。
語っている人の名前を聞く科白が入るのだが特に回収せず。
この科白、入れなくても良いのでは?と思った。
浄瑠璃を大声で語っているのが楽しげ。
特に最後、「てんさん」がイチビリなだけでなく、浄瑠璃に乗って
「トテチン」や「チリトテチン」を入れてしまうのも分かるし、
その後「語っていられない」や、おばあさんの「浄瑠璃が上手」まで、
陽気に流れていた。
満腹。