夕方に豪雨などもあり、そんなに混んでいないかな、と思ったが甘かった。
ほぼ100人の満員。
「前説」(生喬)
何故この会をやることにしたのか、といった経緯。
ABCで収録したのだが、
放送されずお蔵入りになったのが引っ掛かっており、
文三を誘い、染雀に声を掛けたらしい。
会場選びの話や、
昼席の後に丁度動楽亭にいたざこばやまん我との話など。
「鼠の耳」(染雀):○
張り形の話を少し振ってネタへ。
「最初に大きいのを出す」と言っていたが、特に小噺はせず。
まあ、やらなくて正解かな。
最初の「何を使うか」という女子衆連中の話が少し長い、と感じた。
確かに、この場面の女子衆の照れつ喜びつの会話は悪くないが、
バランスとしてここに重みが掛り過ぎるのは好みではない。
まあ、後で考えてみると、
この部分の「女子衆の会話」やその後の権助の登場など、
「お店の雰囲気を描く」という意味はあるのかも知れない。
ただ、ここはメインではないだろう。
茄子、胡瓜、長芋、と言っていた。
「長芋」の「好みの形に加工できる」「ずるずるが気持ちいい」は面白い。
後で鼠が食べるものとして自然な「焼き芋」とどちらをとるか、は
好みの問題かな。
後家さんの性描写を濃くするのは難しいが、
最初の一瞬だけキツく描いておく必要があるかも知れない。
少しこの部分の説明、地の文が多い印象だが、
あまり濃く描写する訳にもいかないだろうから仕方ないか。
ただ鼠の動きの地の文での描写は、もう少し減らしたほうが良いと思う。
権助を誘う際はあっさりしており、これはこれで悪くないが、
もう少し必死さ(鼠を出して欲しいのだが、権助には飢えていると見える)が
あった方が良いかも知れない。
また、権助の逸物を入れて「抜いた時に鼠が飛びだしてくる」よりも、
「逸物に食いついたまま」の方が絵面として好み。
暇を出された権助が田舎に戻るが、
これも「下の見合い」をする、と言うよりも、
無理やり「鼠はいない」と言って婚礼させられて、
寝床から「鼠がいる」と思って飛び出す方が派手で良いかな。
全体には、やはり林家らしく、地の文が多い印象。
「金玉茶屋・揚子江・赤貝猫」(文三):◎-
今里新地の話、おばさんとの会話の話などから「金玉茶屋」。
このあたりのおばさんや娼妓が、
如何にもその世界に身を沈めた人の首まで漬かった雰囲気が出ていて面白い。
そのあたりの会話もごく自然に。
こういった雰囲気を出す必要があるネタは
なかなか演る機会がないだろうから、ちと勿体ない。
「金玉茶屋」(「狸茶屋」)も、
その辺りの下世話な空気が横溢していて良かった。
女の子が「男の子を象ったパン」を選ぶ、という小噺、
「大根と大きさ比べをする」小噺
(「大根舟」は「舟」だから嫁さんに呼ばれて「舟まで取られる」なのであって、
車ではちと違うと思うのだが)から「揚子江」。
「息子」を大きくする部分や「娘」で吸い取る部分の描写は
然程要らないのでは、と思う。
結局サゲの「麻雀」のバカバカしさがポイントではなかろうか。
最後は軽く「赤貝猫」。
猫が息を吹く理由を「息を吹いたら口を開けるから」という説明にしていた。
サゲの部分は別に赤貝に挟まれている訳ではないから、
「さっき挟まれた赤貝の同類」を見て怒りで息を吹いているのでは、と思うのだが。
息の吹き方の調子、突然のサゲが(「何を見ましたか」と言っていたが)面白かった。
「羽根つき丁稚・宿屋嬶」(生喬):○+
軽く飛田の話をして
「しつけぼぼ」や娘が大人になるまでの「一つき」の小噺、
娘の話のつながりで「羽根つき丁稚」。
丁稚をかなりアホっぽく作っている印象。
最初に晴れ着などを「綺麗やな」と言って褒めておく方が、
「綺麗→突かしてくれ」という流れが親にとって自然に聞こえるので良いかな。
押し倒したために「着物が汚れている」、
羽子板の「堅いのを握って思いっきり突かれた」といった加薬は面白かった。
そこから旅へ出るとハメを外す、といった話で「宿屋嬶」。
初老の客の雰囲気が良く出ている。
最初に下で宿屋の亭主夫婦の営みを聞いている際に、
「いい声で泣く」といった状況を入れておいた方が良いのかも知れない。
その後嬶を客に貸して、上で二人が営んでいる様子を
下から宿屋の亭主が聞いている、
或いは3日目にはやきもきして眠れなくて寝不足の様子を見せる、
といったあたりが面白かった。
「綿屋火事」(染雀):○
軽く昔の罪や罰の話(サゲの仕込み)をマクラに振ってネタへ。
「火打石と袋を代用に使う」発想やその際の描写、擬音が面白いネタではある。
あと、納まりかえったお奉行さんの目の前での
「失火」に至る顛末の説明、という「緊張の緩和」もポイントになってくるのだろうが、
ここは店の主人(弟)が
最初は奉行所の雰囲気に飲まれている「緊張」がメインであるところが若干弱く、
最初から「緩和」が勝ってしまっており落差がつかなかった印象。
まあ、珍しいだけのことはある。
「艶笑小噺集」(生喬・文三・染雀):◎-
3人が浴衣姿で並んで、うだうだ喋ったり、本の紹介を入れたりしながら、
各々の師匠が座敷や劇場で演っていた小噺、
お互いからのリクエストを受けた小噺などを披露。
タイトルが分からないのもあるが、ざっと、以下のようなもの。
「膨らむ風船」(生喬)
「新婚旅行」(染雀)
「女漁り」(文三)
「雀の巣」(染雀)
「丸干し」(生喬)
「エロミオとジュリエット(架け橋)」(文三)
「万戸流れる」(生喬)
「電話番号~自動車修理工場」(染雀)
「時計屋」(生喬)
「子どもできますか」(生喬)
「貞操帯2題」(生喬)
「女漁り」は文枝が車の中で繰っていた、という
繰るほどでもない(笑)話。
「時計屋」はさらっと筋を紹介したくらいで、
「どれくらい嵌めているか」といったギャグはなかった。
「貞操帯2題」は「10人の内9人」と、
その前に演るという「鍵」のもの。
「10人の内9人」のサゲを地でなく仕草で演るのは、
確かにこの方が良いだろう。
最後に幾つか「ちょんこ節」を披露してお開き。
結局終演は21時過ぎ。満腹でした。
個人的に、丁度昨日は私の誕生日だったのだが、
非常に素晴らしい誕生日プレゼント、でした(笑)。