暑かったこともあり、20人程の入り。
まあ、いつもどおり、かも。
前説(文太)
素人向けの落語教室の話。
中川兄も、元々その教え子なんだな。
浄瑠璃の代わりにカラオケでやる現代版の「寝床」は私も興味がある。
「延陽伯」(文太):○
「寿限無」や「田楽食い」の言い立てを紹介して、
「ん」が多い歌、ということで「金づちで打つ」という歌を紹介。
この歌初めて聴いたが、これはこれで悪くない。
もし「田楽食い」に入れるとすると、
途中で切ってサゲに向かうように作るのが良いように感じた。
ネタは普通と言えば普通なのだが、
甚兵衛さん(家主さん?)とアホの掛け合いが
テンポ良く楽しい。
特に強くウケを取ろうとしている訳でもないのだが、
アホが引き取って被せていくリズムが良い。
「頭が宜しい勘が宜しいピーンと来ますわ」の仕草も何か可笑しかった。
風呂行って帰ってきてから掃除してまた汚れる、
というのも如何にもアホらしくて伝わっていた。
かんてきを出してきての独り喋りは、然程派手にやる訳でもないが程が良く。
言葉の丁寧な嫁はんがくる。
何となく、単に丁寧な言葉を使っているのではなく、
「いいところで行儀見習いしていたのだな」と感じた。
言葉遣いだけでない、所作に意識が向いているのかも知れない。
声も特に高く作ってはいなかった。
「偕老同穴」は「蛙のケツ10ちぎった」に聞き違えていた。
「10ちぎった」というのも悪くないな。
「ねぶかを買う」というのに対して、
「ねぎは長い、長いのは名前でこりごり」といったサゲ。
まあ、これはこれでありかな。
全体に、調子よく、特に強く押さずにストーリーや人物を描いて進めていて、
さらっと聞けて良かった。
「蛸芝居」(文太):○-
噺家と役者の顔の話、
「住んでいる町名で声を掛ける」話、
師匠と「蛸芝居」の稽古をしていた際の話からネタへ。
「芝居の真似をしている」ことを客に見せるのではなく、
店の連中が好きにやっている、という感じ。
部分部分の決めや立ち回りも、如何にも決めています、ではなく、
お囃子に乗る中で自然に決めている、と感じた。
派手ではないのだが、古風な芝居噺の風情があってこれはこれで悪くない。
三番叟で手を振るところ、
単に振っているのではなく砂糖の袋で叩いて起こしている、という
作り方のようにも見えた。
起こされている側の反応はそうでもない(叩かれていない)ので、
私の気のせいかも知れない。
水撒き奴、位牌の掃除、坊の御守りはごく普通に。
魚喜が入ってくるが、これは如何にも芝居に出てくる魚屋らしい。
旦那に説明するところ、
鱗を起こして腸を掴むところなど、
勢いがあって良かった。
定吉に「当たるかも知らんから黒豆を買ってくるように」と
指示することでサゲの仕込みにしていた。
まあ、ありといえばありだし、
「黒豆3粒食べんならんことになるかも」と言って会話するよりは自然な流れだが、
最初から「当たるかも」という前提で買わせる、というのが不自然な気もする。
蛸との絡み。
蛸が当身を食らわせるところは、もう少しクサ目にやっておく必要があるかも。
「ロボG」(三幸):△
若い人。三枝の12人目の弟子らしい。
けっこう早口で、勢朝のような感じ。
色々「上手いことを言う」マクラを振る。
バイト話は面白いが、まあ別に、という感じ。
変におさまっているよりは良いけど。
ネタは三枝作なのだろうが、良いネタとは思えんな。
「介護が必要なおじいさんロボット」
「徐々に覚えていくのではなく、徐々に忘れていく」といった発想は良いと思うが、
最近の若者言葉を喋ったり現代風の恰好をしている女子高生、
だらしない父親、
それをバカにしている奥さん、といった舞台装置が
悉く三枝が創作落語と称するものを
大量生産していく際の「雛形」通り、の印象。
演りやすいネタではあるのだろう。
「植木屋娘」(文太):○-
出囃子の「高砂丹前」が辛い。
マクラを振らずに、幸右衛門の説明をしてネタに入る。
幸右衛門は、和尚さんとの会話の最初は落ち着いた感じで、
職人とは云え「2箱」持っている裕福さ、も何となく感じさせる。
徐々に「きょとの慌てもん」で「口ごうはい」なところを出していく。
伝吉さんに書いてもらう理由は、いつになるか分からないから、ではなく、
戒名や卒塔婆の字だから。
伝吉さんは「世が世なら」家督を相続する、と言っているのだが、
それならば別に現状であれば家督を相続しないので、
別に幸右衛門の養子になれるのでは、と思ったり。
言うだけ言って帰り、伝吉さんがやってくる。
墨や帳面を出しておいて、「一服せんと早く書いて」。
その後の字の文は特になく。
それから伝吉さんが毎日やってくる。
ここで「おとっつぁん、ここはこうした方が良いのでは」と言っているのだが、
やはり個人的には、
ここで既に「おとっつぁん」と言っているのは気になるなあ。
幸右衛門が嫁さんとお光と話をつける。
お光を放り出して伝吉さんを養子にする、とか、
嫁さんと離縁して嫁さんと伝吉が一緒になって幸右衛門を養え、とか、
このあたりの幸右衛門の感覚がよく分からない。
理論でないのは当然なんだが、
それでも何らかの感情があるだろうけど。
伝吉を呼んできて飲ませる。
嫁さんが「風呂」だけでなく「髪結い」にも行ってきた、というあたり、
もう少し強く突っ込んでいけばもう少しウケにつながりそうだったが、
特にそうもせず。
伝吉がお光に進められて「駆けつけ3杯」を飲み、
逆にお光に進めて断られるところ、
裏から見ている幸右衛門の感情の動きは分かりづらかった。
風呂から帰ってきての嫁さんと幸右衛門の会話、
幸右衛門の浮かれ方が良かった。
「このおやっさん、アホでございます」の繰り返しを入れているのだが、
個人的には特に地の文を入れる必要はないと思う。
お光から聞き出し、お寺に行く。
その後の伝吉と和尚の会話から
従来どおり「根はこしらえもの」のサゲ。
やはり「1回だけ」やっていると言っている以上、
このサゲは嫌いだなあ。
全体には幸右衛門も適度に弾けており、悪くなかった。