内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

鏡の中のフィロソフィア(現場レポート1)

2013-07-29 21:00:00 | 講義の余白から

 今日が集中講義初日。5時起床。生憎の雨。高い湿度。その分気温が低いのが救い。傘をさして、10数冊の参考文献と自分のノート型PCとをリュッックと手提げ鞄に振り分け、復員兵さながらの体で、11時前、いざ大学へ。12時前に大学到着。すでに汗で背中がびしょ濡れ。不快。まず教務課に書類を提出してから、空調のよく効いた講師控え室で1時間、講義の最初に話すことを頭の中で再確認しながら、背中の乾燥(観想ではない)に集中する(ようなことではないが)。13時より演習開始。出席者9名。全席で10数名が座れる程度の広さの大学院専用の演習室で、出席者数に対してちょうどいいくらいのサイズ。
 まずはパワーポイントを立ち上げてから、予備的説明を開始。これを最初の2コマ(3時間)で終えて、3コマ目で本題の「鏡の中の哲学」に入るはずだった。ところが、適度な湿度のせいと1時間の休憩のもたらした物理的・心理的効果(根拠薄弱)か、あるいは日頃の学問的蓄積(普通良識ある学者は自分についてこういうことは言わない)のおかげか、舌の滑りが良好……過ぎた。「派生的」説明(だからといって、情報として重要度が小さいとは限らない)と、想定を上回る「脱線」(とはいえ、そこに含まれる問題は本題のそれより重要ではないというわけではない)とによって、予定が早くも狂う。2回の休憩を挟んで、4時間話して、予備的説明がまだ終わらず、話すつもりだったことをかなり端折って、やっとのこと、なぜ〈鏡〉が西洋哲学史を古代から中世を介して近代そして現代まで貫くテーマになりうるのかの説明の「入り口」に辿り着く。本日の私のしゃべりはここまで。残りの30分で、学生たちに感想を書いてもらって、初日終了。さすがにしゃべり疲れて帰宅した。夕食を終えて、今この記事を書いている。
 だから、授業で方法論の説明の際に一例として紹介し、このブログでも今日から紹介するつもりだった Pierre Hadot の名著 Exercices spirituels et philosophie antique (Albin Michel, 2002、未邦訳)については、明日以降、できたら取り上げる。でも、それができるかどうか、明日の演習が終わってみないと、わからない。
 以下、今日の演習のためのプランから、実際に終えたところまでをそのまま再録(4時間話した内容を要約する元気はもうありません)。

 1.「現代哲学特殊演習」の定義
 「現代」の規定 関連語「近代」「同時代」「ポスト・モダン」
 「現代哲学」の3つの指標 
   ① 近代哲学の枠組みの見直し(脱構築)
   ② 隣接諸科学との対話・対決
   ③ 哲学の応用あるいは再定義:地球環境、エネルギー問題、宗教・民族・地域
 「特殊」の基準 歴史を貫く特定のテーマ・対象を1つ選ぶ。
 「演習」の内容 自ら考え、発表し、他者と討議する。

2.この演習の目的
 哲学的思考の訓練(研究者あるいは大学教員になるための職業的訓練とは区別される)
 日常の中、歴史の中、ある地理的・地域的・社会的・文化的・経済的・政治的・宗教的諸関係の中で、
 それらを自覚しつつ哲学する。
 哲学以外に哲学を見出す。
「哲学的」とは違った仕方で哲学する。

3.演習の進め方
① テキストを読む。② 問題を取り出す。③議論する。
④ 要約・抽出・摘要 ⑤問題提起・展開 (④と⑤は毎回の小レポートとして提出)

4. 評価方法
① 出席(全5回)+小レポート(5回)
② 参加 ∋ 発言・質問(毎回随時+最終回の全体討議)
③ 発表(最終回、1人10~15分)

5. 方法論 「方法としての哲学思想史」
「哲学は哲学史である」 "La philosophie est l’histoire de la philosophie."
「受容の思想史」Ex. Histoire du sujet. Une redécouverte merveilleuse du sujet originel chez un linguiste japonais au XXe siècle.

Trois enjeux:
1/situer historiquement les questions (contextualiser)
2/ thématiser un objetparticulier
3/ s’inscrire dans l’histoire de la pensée ou de la philosophie(relecture dans l’histoire à laquelle nous appartenons)

Références Pierre Hadot, Exercices spirituels et philosophieantique;RémiBrague, Au moyen du Moyen Âge

 今晩は、これから明日の講義の準備をした後、一シャワー浴びて、早めに寝ます。