二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

皮を張り替えたら、音色は変わりますか?

2011-10-03 09:17:52 | ■工房便り 総合 
基本的には、変わりませんが、

張り替える前の状態に戻るというのはありません。

皮を張り替えるというのは、二つのパターンがあります。


先ず、10数年弾きこんで、皮の寿命が尽きた時。


もう一つは、皮が歪んで、雑音が出るようになった時、

この中には更に、3つのパターンがあります。


① 最初の皮が、蛇の背骨の処を中心にして貼られていない場合。
  
この時には、左右どちらかお腹に近いほうだけ伸びてきます。

人もそうですが、蛇もお腹の方の皮が伸びやすいからです。

最初に皮を張った時には、何回かぬらして引っ張って乾かし、それを繰り返すことで、

かなり硬い皮が出来上がりますが、お腹に近いほうは、更に伸びる可能性を残したままなのです。

(ですから良い蛇皮と言われる物は、尻尾の方の横に伸びにくい物です。)

貼った後でも、お腹に近い物は、湿気で伸びてきますし、振動でも伸びやすいのです。

均一に張られていた状態が、無くなりますので、二胡全体が綺麗には鳴らなくなります。

この時には皮は張り替えるきりありません。


② 使っているうちに、気候の変化により、胴の木が、変化した場合、

これは必ずしも同じように変化するわけではありません。

胴を構成している6枚の木がバラバラに収縮したとしたら、皮の張り方は均一ではなくなります。

これもやはり皮を張り替えるきりありません。

量産物に関して言うと、ほぼ70%位の二胡がこのようになっていくと思われます。


③これは人為的な皮に対するダメージですね。

一番多いのは、オイルを皮に塗ってしまうことでしょう。

程度問題ですが、何回か繰り返すと、かなり緩みます。

無理やり緩ませるのですから、弾きこんで柔らかくなったのとは違います。

皮の全体に渡って、ばらばらに柔らかくなります、均一ではなくなることが多いですね。ですから雑音になることも多いですし、高音が出にくくなります。

もう一つは、人為的というかうっかり、夏の日に、うっかり車の中に長時間二胡を置いたり、ストーブの前、或いは部屋の中のかなり暑くなるところに、置き忘れが続いた時です。

もちろん全く何もない場合も有ります。

しかし木も蛇皮も、熱には弱いのです。

特に皆さんが思っているより、蛇皮は繊細な物です。

人の皮膚などと変わらないと思って下さい。

但し、オイルを塗った時でも、このように熱に当たった時でも、一時的には、

高さのある駒を、削り込んで上手く調整することは可能ですが、

皮が軟らかくなっていますから、高さのあるもので皮に対する圧迫を強めるのですから、皮の変形は促進します。

ですからこの方法も1時的なものでしかありません、

状態にもよりますが、短ければ、3ヶ月、長くても2、3年の延命でしかありません。

これは私が自分の二胡で確認しています。

さて、皮を張り替えた時に、音色は変わるかという話。

よく弾きこまれている二胡は、張り替えたばかりの時は、硬い音がし、

また高音はよく出ますが、十分に鳴っているというわけではなさそうです。

半年ぐらいは弾きこまないと低音は十分鳴りにくいと思います。

しかし、半年ぐらいで、殆ど元の音に近くはなります。

さすがに、同じ皮を張るということではありませんので、完全には戻りませんが、

十分に弾かれた二胡は、木がもうすでに良い振動をしているのと、

木が、皆さんの家の環境に慣れているということも有って、それ以上には狂いにくくなっています。

ですから、張り替えた二胡の方が、長持ちしますし、音も十分に出ます。

2,3年ぐらいきり弾いていない二胡の皮を張り替えた時には、

元に戻るというより、新しい二胡を購入されたと考えていただいた方が良いと思います、

新たに弾きこんで、育てていくということになります。

ただ張り替えの時に、最初に購入された時の皮よりレベルアップしますから、

花梨などの、重量感の無い樹種意外でしたら、

自動的に、10数万円上がった二胡に格上げになるのも、間違いありません。

殆ど工房物の、高級品と変わらないことになります。

そのくらい二胡の鳴りというのは皮によることが多いのです。


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