古代の日本語

古代から日本語には五十音図が存在しましたが、あ行には「あ」と「お」しかありませんでした。

月の名前の語源

2024-02-18 07:51:46 | 古代の日本語

2月は、旧暦では正月にあたり、これを睦月(むつき)とよんでいましたが、この意味を漢字から類推して、「親戚が集まって仲むつまじくする月」などととする俗説が流布しているのは残念なことです。

そこで、『新編日本古語辞典』(松岡静雄:著、刀江書院:1937年刊)という本を参考にして、月の名前の語源についてまとめてみました。

月の名前
読み
語源
睦月 むつき メツキ(芽月)の転呼、発芽する季節を芽月とよんだ
如月 きさらぎ キアラツキ(木新月)の約濁、草木更新の月を意味する
如月と書くのは、『爾雅』という本に「二月爲如」(二月を如となす)とあるため
弥生 やよい イヤ(弥)オヒ(生)の転呼で、草木がいよいよ生い茂るという意味
卯月 うづき ウツツキ(たがやす月)の約濁で、田ウツ月という意味であろう
田植えのために田をウツのは旧暦4月頃であるから、十二支の4番目の卯の字を借りたと思われる
皐月 さつき サ(挿)ツキ(月)で、苗を挿す月、すなわち田植えの月という意味
水無月 みなつき 旧暦の6月は日照りに苦しむことが多かったので水無月となった
文月 ふみつき 原語はフツキで、ホツキ(穂月)の転呼(旧暦の7月には稲が穂を出す)
フツキの音便がフムツキで、これに文月という字をあてたためフミツキと訛ったと思われる
葉月 はつき ハエ(南風)ツキ(月)の転訛、台風が多い月という意味であろう
(南風については、本ブログの「南風を意味する古語」で解説済み)
長月 ながつき ナは食を意味し、食之月、すなわち新穀を収穫する月という意味
神無月 かみなつき ナは食を意味し、カムナヘツキ(神嘗月)、すなわち新穀を神にそなえる月という意味
霜月 しもつき これは文字どおり霜が降る月という意味
師走 しはす シハ(終)シ(下:スヱ(末)の語源)の転呼、年の終末の月という意味

いかがでしょうか? これは、言語学者・松岡静雄氏の見解ではありますが、古代の日本人が四季の移り変わりを月の名前にしたことは明らかなようです。

なお、旧暦は月の満ち欠けの周期に同期するため、年によって太陽暦とのズレが変化し、季節が定まらないという欠点があります。

例えば、旧暦の正月元旦は、去年は1月22日でしたが、今年は2月10日、来年は1月29日、2026年は2月17日となり、2023年と2026年では26日ものズレが生じます。

一方、節月(せつげつ)という、二十四節気を用いた月の区分があり、これは太陽暦に準拠しているので、季節がズレないという利点があります。

そこで、次のように月の名前を節月に対応させれば、その意味がより明確になるように思われます。

節月
期間
月の名前
語源
寅の月 立春(2月4日頃)から啓蟄の前日まで むつき メ(芽)月、発芽する月
卯の月 啓蟄(3月5日頃)から清明の前日まで きさらぎ キアラ(木新)月、草木更新の月
辰の月 清明(4月5日頃)から立夏の前日まで やよい イヤオヒ(弥生)、草木がいよいよ生い茂る月
巳の月 立夏(5月5日頃)から芒種の前日まで うづき ウツ月、田をたがやす月
午の月 芒種(6月6日頃)から小暑の前日まで さつき サ(挿)月、田植えの月
未の月 小暑(7月7日頃)から立秋の前日まで みなつき 水が無い、日照りの月
申の月 立秋(8月8日頃)から白露の前日まで ふみつき ホ(穂)月、稲が穂を出す月
酉の月 白露(9月8日頃)から寒露の前日まで はつき ハエ(南風)月、台風が多い月
戌の月 寒露(10月8日頃)から立冬の前日まで ながつき ナ(食)が月、新穀を収穫する月
亥の月 立冬(11月7日頃)から大雪の前日まで かみなつき カムナヘ(神嘗)月、新穀を神にそなえる月
子の月 大雪(12月7日頃)から小寒の前日まで しもつき 霜が降る月
丑の月 小寒(1月5日頃)から立春の前日まで しはす シハシ(終下)、年の終末の月

このように書き直すと、月の名前と四季の移り変わりの対応がはっきりしますから、月の名前は本来は太陽暦に対応したものだったのかもしれませんね。

にほんブログ村 歴史ブログ 考古学・原始・古墳時代へ
にほんブログ村



最新の画像もっと見る

コメントを投稿