現行民法で、最もおかしな規定。
483条(特定物の現状による引渡し)
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。
中古車を買ったら、走らなかったとしても、買主は、売主に文句が言えなくなる規定。
その引渡しをすべき時の現状こそ、走らないというものだったのだから、しかたない。
「特定物ドグマ」と言われている。
でも、実社会で、絶対におかしいと誰もが思うはず。
だからこそ、民法債権法改正の最も重要なポイントのひとつが、この改正。
すなわち、民法政策立案者の意図は、特定物ドグマを肯定して、民法を起草した事実は残る。過去のことだから動かせない事実。
厳密に言えば、政治家が過去に作った法律の趣旨をまげて解釈することの妥当性が問題となる。
よって、最終的には、民法を改正して、特定物ドグマの誤った部分を正すほかない。
現行民法でも、特定物ドグマを否定することはできる。
******************************
以下、条文を1)~4)のように読み替えることで、特定物ドグマを否定することができる。
(法廷責任説ではなく、契約責任説に立つことができる。)
特定物の引渡しを目的とする請求権において「債務の本旨に従った履行」とは何か?
<特定物ドグマ肯定説>
特定物の引渡しを目的とする請求権において、「債務の本旨に従った履行」とは、引渡債務者が引渡債権者に対し、当該特定物を引き渡すことに尽き、引渡債権者が当該特定物に期待した品質・性状を確保することは、「債務の本旨に従った履行」に含まれない。
例:中古自動車を買ったが、走らない車であったのに、売主の責任は、それでよしとする。
<特定物ドグマ否定説>
特定物の引渡しを目的とする請求権において、「債務の本旨に従った履行」とは、引渡債務者が引渡債権者に対し、当該特定物を引き渡すことに尽きるものではなく、引渡債務者において引渡債権者が当該特定物に期待した品質・性状を確保することも、「債務の本旨に従った履行」に含まれる。
例:中古自動車を買ったが、走らない車であったのであれば、売主には、その車が走るようにする責任があるとする。
↓
<特定物ドグマを肯定する論理>
1)民法483条:特定物に関する現状で引き渡すことを規定
2)民法534条1項:特定物に関する債権者危険負担主義
3)民法95条に関する動機の錯誤排除論
4)瑕疵担保責任(民法570条)に関する法廷責任説
そのままでは、売買の有償性、対価的均衡を害するから、
○ 損害賠償(信頼利益の範囲内で)出来るようにする
○ 契約の目的を達成できなければ解除可
○ 完全履行請求権はない
○ 知りたる時より1年
特定物→法廷責任説が理解するところの民法570条が適用される。
不特定物→債務不履行責任(民法415条)
<特定物ドグマ肯定説の不当性を修正するための解釈>
1)民法483条:特定物に関する当事者意思の推定規定と読み替える
2)民法534条1項:特定物に関する債権者危険負担主義を制限適用する
3)民法95条に関する動機を表示していると、錯誤とされる。
4)瑕疵担保責任(民法570条)に関する債務不履行責任説
受領を境に債務不履行責任が瑕疵担保責任に変形する。
受領前:債務不履行責任
○ 完全履行請求権
○ 損害賠償請求権
○ 解除(催告/無催告)
○ 時効10年
○ 帰責事由:不可抗力でない/債権者によるものでない
受領後:瑕疵担保責任
○ 完全履行請求権
○ 損害賠償請求権
○ 解除(催告/無催告)
○ 知りたる時から1年
○ 隠れたる瑕疵
特定物、不特定物を問わない
以上、
483条(特定物の現状による引渡し)
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。
中古車を買ったら、走らなかったとしても、買主は、売主に文句が言えなくなる規定。
その引渡しをすべき時の現状こそ、走らないというものだったのだから、しかたない。
「特定物ドグマ」と言われている。
でも、実社会で、絶対におかしいと誰もが思うはず。
だからこそ、民法債権法改正の最も重要なポイントのひとつが、この改正。
すなわち、民法政策立案者の意図は、特定物ドグマを肯定して、民法を起草した事実は残る。過去のことだから動かせない事実。
厳密に言えば、政治家が過去に作った法律の趣旨をまげて解釈することの妥当性が問題となる。
よって、最終的には、民法を改正して、特定物ドグマの誤った部分を正すほかない。
現行民法でも、特定物ドグマを否定することはできる。
******************************
以下、条文を1)~4)のように読み替えることで、特定物ドグマを否定することができる。
(法廷責任説ではなく、契約責任説に立つことができる。)
特定物の引渡しを目的とする請求権において「債務の本旨に従った履行」とは何か?
<特定物ドグマ肯定説>
特定物の引渡しを目的とする請求権において、「債務の本旨に従った履行」とは、引渡債務者が引渡債権者に対し、当該特定物を引き渡すことに尽き、引渡債権者が当該特定物に期待した品質・性状を確保することは、「債務の本旨に従った履行」に含まれない。
例:中古自動車を買ったが、走らない車であったのに、売主の責任は、それでよしとする。
<特定物ドグマ否定説>
特定物の引渡しを目的とする請求権において、「債務の本旨に従った履行」とは、引渡債務者が引渡債権者に対し、当該特定物を引き渡すことに尽きるものではなく、引渡債務者において引渡債権者が当該特定物に期待した品質・性状を確保することも、「債務の本旨に従った履行」に含まれる。
例:中古自動車を買ったが、走らない車であったのであれば、売主には、その車が走るようにする責任があるとする。
↓
<特定物ドグマを肯定する論理>
1)民法483条:特定物に関する現状で引き渡すことを規定
2)民法534条1項:特定物に関する債権者危険負担主義
3)民法95条に関する動機の錯誤排除論
4)瑕疵担保責任(民法570条)に関する法廷責任説
そのままでは、売買の有償性、対価的均衡を害するから、
○ 損害賠償(信頼利益の範囲内で)出来るようにする
○ 契約の目的を達成できなければ解除可
○ 完全履行請求権はない
○ 知りたる時より1年
特定物→法廷責任説が理解するところの民法570条が適用される。
不特定物→債務不履行責任(民法415条)
<特定物ドグマ肯定説の不当性を修正するための解釈>
1)民法483条:特定物に関する当事者意思の推定規定と読み替える
2)民法534条1項:特定物に関する債権者危険負担主義を制限適用する
3)民法95条に関する動機を表示していると、錯誤とされる。
4)瑕疵担保責任(民法570条)に関する債務不履行責任説
受領を境に債務不履行責任が瑕疵担保責任に変形する。
受領前:債務不履行責任
○ 完全履行請求権
○ 損害賠償請求権
○ 解除(催告/無催告)
○ 時効10年
○ 帰責事由:不可抗力でない/債権者によるものでない
受領後:瑕疵担保責任
○ 完全履行請求権
○ 損害賠償請求権
○ 解除(催告/無催告)
○ 知りたる時から1年
○ 隠れたる瑕疵
特定物、不特定物を問わない
以上、