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日本国憲法の一日一条ずつの解説、8月7日は、第7条。

2014-08-07 16:18:35 | 日本国憲法
 一日一条ずつ進む日本国憲法の解説。
 あわせて、自民党改憲草案の問題点も分析します。

 8月7日は、7条です。

 憲法7条に相当する条文は、自民党改憲草案では6条であり、その6条と比較して見ます。


*************
(日本国憲法)
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。


(自民党改憲草案)
(天皇の国事行為等)
第六条 天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。

2 天皇は、国民のために、次に掲げる国事に関する行為を行う。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の国の公務員の任免を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 全権委任状並びに大使及び公使の信任状並びに批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行うこと。

3 天皇は、法律の定めるところにより、前二項の行為を委任することができる。

4 天皇の国事に関する全ての行為には、内閣の進言を必要とし、内閣がその責任を負う。ただし、衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による。

5 第一項及び第二項に掲げるもののほか、天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。

**************************

1)自民党側の説明

 以下、6条関連の自民党側の説明を見ます。

*****自民党Q&A*****

Q6 その他、天皇に関して、どのような規定をおいたのですか?

6条に天皇の行為に関する規定を置きましたが、現行憲法を一部変更してい
る所があります。

(国事行為には内閣の「進言」が必要)
現行憲法では、天皇の国事行為には内閣の「助言と承認」が必要とされていますが、
天皇の行為に対して「承認」とは礼を失することから、「進言」という言葉に統一しま
した(6 条4 項)。従来の学説でも、「助言と承認」は一体的に行われるものであり、区
別されるものではないという説が有力であり、「進言」に一本化したものです。

(天皇の公的行為を明記)
さらに、6 条5 項に、現行憲法には規定がなかった「天皇の公的行為」を明記しました。
現に、国会の開会式で「おことば」を述べること、国や地方自治体が主催する式典に出
席することなど、天皇の行為には公的な性格を持つものがあります。しかし、こうした
公的な性格を持つ行為は、現行憲法上何ら位置付けがなされていません。そこで、こう
した公的行為について、憲法上明確な規定を設けるべきであると考えました。
一部の政党は、国事行為以外の天皇の行為は違憲であると主張し、天皇の御臨席を仰
いで行われる国会の開会式にいまだに出席していません。天皇の公的行為を憲法上明確
に規定することにより、こうした議論を結着させることになります。

(国事行為の基本に変更なし)
なお、6 条2 項では、天皇の国事行為について列記されていますが、規定を分かりや
すく若干整理したものの、基本は変えていません。

********************




2)さて、以下、問題と感じることを書きます。

問題点1 整理して書いたというが、自民党改憲草案は、実は、整理されていなく、逆にわかりずらい。

問題点2 現行憲法3条の大事な条文「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」が、条文から項に格下げされ、自民党案のこの6条4項に追いやられている。

問題点3 「進言」という言葉を持ち出しているが、現行憲法の「助言と承認」のままでよいのではないか。

問題点3 1項は、内閣と司法のことを、日本国憲法では2項に分けて書いていたものを一緒くたに書いている。これは、よろしくない。2項に別々に分けて書くべき。

問題点4 衆議院の解散は、「内閣」ではなく、「内閣総理大臣」の「助言と承認」(自民党の言葉では、進言)でよいか。

問題点5 5項で、「天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。」と「公的な行為」の規定がなされている。
    議論が必要で、必要最小限の「公的行為」となるようにすべき。そのための手立てはあるのか。
    現行憲法では、国事行為を限定して書くことを目指していたのが、自民党案5条で、大事な「のみ」(現行憲法4条には入っていた)をとったことと相まって、天皇の「国事行為」や「公的行為」が安易に拡大される素地がつくられている。

cf.
自民党案5条
(天皇の権能)
第五条 天皇は、この憲法に定める国事に関する行為を行い、国政に関する権能を有しない。

現行憲法
第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。





3)自民党改憲案は、天皇の国事行為を整理して書いたということだが、逆にわかりにくくされてしまったため、改めて整理します。

 日本国憲法では、天皇の国事行為を13明文規定(日本国憲法4条2項、6条1、2項、7条1号~10号)しています。これらは、すべて、内閣の助言と承認を必要とする行為です(現行憲法3条「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」)

 それら規定の文言が、どのように自民党改憲案でなっているのか。



○4条2項
現行憲法:天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。

自民党案:天皇は、法律の定めるところにより、前二項の行為を委任することができる。(自民党改憲案では、6条3項)




○6条1項
現行憲法:天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。

自民党案:天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。(自民党改憲案では、6条1項)

⇒自民党案では、内閣は内閣、司法は司法で条文をわけるべきであると考えます。



○6条2項
現行憲法:天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

自民党案:天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。(自民党改憲案では、6条1項)

⇒自民党案では、内閣は内閣、司法は司法で条文をわけるべきであると考えます。


○7条1号~10号
現行憲法:天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

自民党案:天皇は、国民のために、次に掲げる国事に関する行為を行う。

自民党案では、「内閣の助言と承認により」が削られています。後の条項で補足するのではなく、柱書きに入れるべきだと思います。自民党案6条4項だけでは、わかりにくいです。

現行憲法:
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。

自民党案:
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の国の公務員の任免を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 全権委任状並びに大使及び公使の信任状並びに批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行うこと。


以上
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危険負担を買主に負わせるのであれば、果実もまた買主に帰属させることが、論理的帰結であるように感じる。

2014-08-07 09:30:54 | 民法 債権総論
 民法534条

 売主が、保管義務を尽くしたが、売主の責めに帰すべき理由なく、売買契約の目的物が滅失した場合、その負担は、買主が負う。すなわち、それでもやはり、商品を受け取れなかったとしても、買主は、売主に、期限に代金を支払う義務がある(危険負担、リスク負担は、買主にあり。危険負担の債権者主義)。


 その代わりに、ローマ法では、バランスを取る意味で、果実収取権は、買主にある
 このことで、代金支払い義務はあっても、果実分を控除できるようにしている。

 日本では、民法575条で、果実収取権は、売主にある
 おそらく、計算が面倒になることを避けたのであろう。


 危険負担を、買主に負わせるのであれば、果実もまた、買主に帰属させることが、論理的帰結であったように、感じる。



 現行解釈では、商品を管理できることができたかどうかで、危険負担を分けており、それはそれで、実際は、問題ないことではるが。

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民法

(債権者の危険負担)
第五百三十四条  特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2  不特定物に関する契約については、第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。


(果実の帰属及び代金の利息の支払)
第五百七十五条  まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。
2  買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない。
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違法性の相関関係理論

2014-08-07 09:24:44 | 民法 不法行為・不当利得
 被侵害利益の種類、侵害行為の態様で、違法性を判断。

 侵害行為の態様が悪質な場合、たとえ、被侵害利益の種類が、不法行為を問うには軽微なものでも、違法性があるとする。


 例、大学湯事件


(2014.8.6法史学)
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