憲法14条を考える準備として、知識の整理をします。
(かつてのブログ http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/43a9d028c76ebb79604435665c5ba078 )
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「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」
憲法では、ご存知のように、第14条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
○2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
○3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
と謳われているところです。
平等の考え方を整理します。
自然的事実としての不平等が世の中には存在しています。
能力や資質の差、環境の差、人格の差などです。
もし、形式的平等のルール(A=B=C=D=E=F=G・・・・)を適用すると、能力のある人、資質のある人、そして、能力や資質をのばすための環境が整備されているひとが、高い成績をあげることができ、結果に大きな差が生じてしまいます。
行きつく先は、格差社会です。
今の世の中では、基本は形式的平等のルールです。
入試、選挙権、運賃、消費税、法律が等しく適用されること、誰でもどんな職業にもつけるということなど。
形式的平等のルールの長所は、分かりやすい、「公平」らしく見えるという点にあります。
ただ、背後にある不平等を隠しており、格差を無視しています。
行きつく先には、例えば、富裕層と貧困層の間の格差が広がり、貧困層が拡大し、貧困層から脱出困難な社会ができあがることにつながります。
そこで、どうすればよいか。
実質的平等のルールの採用です。
簡単に言えば、下駄を履かせ、機会を実質的に平等にすることです。
累進課税を想像すればわかりやすいですが、同じレベルの収入のひとにかかる税率は同じですが、高い収入のひとにかかる税率は、高い税率を課しています。
実質的平等の極端な例は、結果まで平等にすることです。(結果の平等)
この場合の短所は、「モラル・ハザード」が生じることです。
がんばっても、がんばらなくても結果は同じですので、がんばる意欲がそがれる状態になります。
例外のない平等を「絶対的平等」というのであれば、このような平等は、「相対的平等」すなわち「等しいものは等しく、等しくないものは等しくなく扱うべし」といいます。
そして、このことが、平等原則となっています。
再度、整理しますと、
形式的平等、ペアの概念として、機会の平等そして絶対的平等があります。
それに対して、実質的平等、相対的平等が言われ、実質的平等を突き詰め過ぎると結果の平等となります。
日本国憲法のもと、場面場面で、形式的平等と相対的平等、一部実質的平等が保障されています。
一日一条ずつの日本国憲法の解説です。あわせて、自民党改憲案の問題点の分析。
8月14日は、14条、平等権。
以下、比較すると大差ないようにお感じになると思います。
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日本国憲法
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
自民党案
(法の下の平等)
第十四条 全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
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私も、最初、「あれっ」と思いました。
なぜ、今までの14条に至るまで問題点が多々あったのに、ここでは「障害の有無」の追加をするもその他の変更をしなかったのだろうかと。
日本国憲法14条≒自民党案14条 ?
よくよく、考えると、ぞっとしました。
日本国憲法が機能する人権の世界と、自民党案が機能する人権の世界では、世界が異なるのです。
その条文だけで考えてはいけません。
人権の総則規定12条を思い出して下さい。
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日本国憲法
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
自民党案 (国民の責務)
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。
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人権の世界が、まるっきり自民党案では変えられていて、「公益及び公の秩序」に反することは許されなくなっているのです。
12条と14条を併せて考えると、
日本国憲法 12条+14条=「公共の福祉」のために実質的平等のルールの採用を可能にする。 (実質的平等「等しいものは等しく、等しくないものは等しくなく」の考え方。例、所得税)
自民党案 12条+14条= 「公益及び公の秩序」に反しないように、形式的平等を課す。(形式的平等「A=B=C=D=E=F=G・・・・」の考え方。例、消費税)
日本国憲法と自民党案では、意味をしている平等概念そのものが異なるのです。
日本国憲法においては、「障害の有無」の文言をいれることはよいと思いますが、自民党案では、とても危険です。(ターゲットを増やしたかと、悪意さえ感じます。)
すなわち、形式的平等のルール(A=B=C=D=E=F=G・・・・)を適用すると、能力のある人、資質のある人、そして、能力や資質をのばすための環境が整備されているひとが、高い成績をあげることができ、結果に大きな差が生じてしまいます。
行きつく先は、格差社会です。
それをよしとするぞと、自民党案は、宣言をしているのです。
(実質的平等、形式的平等などの概念は、前のブログhttp://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/c6493bd72f0b2d3296c2da24d939ce8dで基本的なところの解説をしています。)
日本国憲法14条≠自民党案14条 !
国家主義を目指す自民党案では、憲法の人権概念を、大きく覆す「公益及び公の秩序」という文言を、「公共の福祉」を削除して入れ替えており、人権規定を注意深く読んで行く必要があります。
一体、誰を守るための憲法なのだろうか?