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日本国憲法の一日一条ずつの解説、8月25日は、第25条。生存権

2014-08-25 01:05:59 | 日本国憲法

 一日一条ずつの日本国憲法の解説と、自民党憲法草案の問題点の考察。
 8月25日は、25条。
 
 本日25条、おそらく、「生存権」という名と共に、社会科でも何度も出てきて、最も親しみの持てる条項ではないでしょうか。

 その分、とても重要な条項です。

 25条から、26、27、28と社会権が保障されています。


 社会権とはなにか、憲法学者の故芦部先生の解説を読みます。


 「日本国憲法は、生存権(25条)、教育を受ける権利(26条)、勤労の権利(27条)、労働基本権(28条)という社会権を保障している。社会権は、20世紀になって、社会国家(福祉国家)の理念に基づき、とくに社会的・経済的弱者を保護し実質的平等を実現するために保障されるに至った人権である。その内容は、国民が人間に値する生活を営むことを保障するものであり、法的にみると、それは国に対して一定の行為を要求する権利(作為請求権)である。この点で、国の介入の排除を目的とする権利(不作為請求権)である自由権とは性質をことにする。もっとも、社会権にも自由権的側面がある。

 社会権が保障されたことにより、国は社会国家として国民の社会権の実現に努力すべき義務を負う。たとえば、憲法25条2項が、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定するのは、その趣旨である。」

(『憲法第5版』岩波書店 258頁)



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日本国憲法
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。



自民党案
(生存権等)
第二十五条 全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、国民生活のあらゆる側面において、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。


(環境保全の責務)
第二十五条の二 国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない。〔新設〕


(在外国民の保護)
第二十五条の三 国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。〔新設〕

(犯罪被害者等への配慮)
第二十五条の四 国は、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮しなければならない。〔新設〕
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 自民党案は、日本国憲法とほぼ同じといえるでしょうか。
 憲法「すべての生活部面」が自民案「国民生活のあらゆる側面」となっています。
 これも同じとみてよいでしょうか。
 内容が狭まっていなければよいと思います。

 あと、自民党案では、25条の2、25条の3、25条の4が新設されています。

 これら新設された内容は、方向性としてはよいと思います。
 文面は、検討の余地が多分にあり。自民案は、すべて文言が弱すぎる。そのような文面で、本当に国は、それら新たな人権を守る気があるのかと思いたくなる。
 例えば、自民党案25条の4「犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮」ではなく、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇を「保障する」レベルまでの表現はほしいと思います。


 もし、文面がきちんと直されたと仮定しても、ただ、とても、とても残念なのは、自民案全体が、これまで述べてきましたように

〇憲法を、国家を縛る最高法規から、国民を縛る法律に変えていること

〇人権規定に根本的な誤りがあること
 「公共の福祉」による人権間の調整ではなく、「公益及び公の秩序」による強制であること

〇表現の自由が否定されていること

〇戦争の放棄が否定されていること

〇象徴天皇制が否定されていること

〇結局、大日本帝国憲法への回帰の方向であること

 など、根本的な誤りがあって、憲法と呼べるものではないため、実現不可能であります。
 よって、これら新設条項も同時に、死文化される運命にあります。
 万万が一、自民党案が通ったとしても、25条の2、25条の3、25条の4は、国民のために機能はしないことが考えられます。自民党案は、人権規定に根本的な誤りがあるからです。


 自民案に頼るのではなく、これら条文の文面をよく練り、適正手続きのもと、憲法に入れていくべきか、法律の規定を充実させることで済むのか、議論を深めることこそが求められていると思います

 一番やってはならない選択肢は、これら条文に飛びついて、自民党案の負の部分に目をつぶってしまうことです。一旦、これらを含めて自民党案で改憲させておいて、後ほど、これら条項を削除する手口が用いられることまで、私達国民は、念頭に置いておくべきです。
 言っておきます。自民案は21条において、表現の自由が否定されています。改憲のハードルは、とても低く設定されています。正しい情報が伝えられることなく、次なる改憲も容易です。情報がまともに伝わらないことをよいことに、国に不都合な条文はすぐに削除されることでしょう

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