都市計画審議会委員の皆様へ
この度の平成30年7月30日開催の第2回中央区都市計画審議会における審議案件である『月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業(本件事業)』について、懸念される点が多々ございますため、それらのことを委員の皆様にもお伝えしたいと考えます。
現在、月島西仲通り商店街周囲で、本件事業だけではなく、西仲通り地区第一種市街地再開発事業(西仲通り地区事業)と月島三丁目南地区第一種市街地再開発事業(南地区事業)を合せ、3つの大規模再開発がなされるにも関わらず(●資料1、●資料2)、それら事業に伴う生活住環境及び教育環境に及ぼす影響が住民に示されておりません。それら影響がきちんと住民に知らされたうえで、十分な議論を経て合意形成が図られるべきですが、現状は、都市計画手続きだけが先行しています。
すなわち、本件事業に対する都市計画原案への意見書数(総数73通108人、賛成10通13人/反対63通95人)、都市計画案への意見書数(総数63通230人、賛成15通16人/反対48通214人)の状況は、それぞれ賛成より反対が圧倒的に優位な状況にあります。平成30年3月29日開催の都市計画原案説明会や平成30年5月21日開催の都市計画案説明会において出された意見も、本件事業に対する問題点を指摘するものが大半でした(『都市計画原案説明会 議事要旨』 『都市計画案説明会 議事要旨』参照)。
●資料1
●資料2
本件事業における主な問題点を、具体的にご指摘させていただきます。
<本件事業の主な問題点>
一、日影被害について
中央区は、浜離宮以外に日影規制がございません。しかし、日影規制がないからと言って、再開発に伴いどれだけでも周辺地域の日照を奪ってよいわけではなく、建築基準法その他の公法規制に適合していても、4時間以上の日照阻害は受忍限度を超えて違法であるとする裁判例が出されています(東京高裁平成3年9月25日判決)。実際に中央区でも用途地域が「商業地域」指定である晴海五丁目西地区開発計画でも4時間以上は住宅に日照を奪わないように配慮した内容が環境影響評価書に記載されており(●資料3)、「第二種住居地域」及び「商業地域」指定である月島三丁目は、晴海五丁目より厳しい受忍限度の基準が設けられるべきところです。
日影被害については、一級建築士による分析のもと、本件事業により4時間以上の日照阻害が生じることを指摘した詳細な意見書が近隣マンションにお住いの方々から中央区に届けられました。この意見書を提出された方々は、自らの意見書が要約されることなく、そのまま原文の形で都市計画審議会の委員の皆様に届けてほしい旨の請願『「月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業」に係る意見書提示についての請願(請願第5号)』も議会に提出されました。
どのようにこの意見書が実際に要約されて委員の皆様のお手元に届けられているかはわかりませんが、本件事業が、上述裁判例にあった受忍限度を超え違法ともいえる4時間以上の日照阻害を生じることを同請願の紹介議員のひとりとしてご指摘させていただきます。
●資料3 日影部分のみ抜粋
一、都市計画で求められる規模の妥当性の疑義について、特に近隣小学校の教室数の絶対的な不足について
本件事業等による過剰な住宅の供給(本件事業1160戸、南地区事業750戸、西仲通り地区事業503戸)は、急激な児童数の増加と教室数の不足(●資料4)をもたらし、月島第一小学校の増築を余儀なくさせますが(●資料5)、増築に伴う同校の教育環境の悪化が甚だしく、本件事業は、都市計画に求められる「規模の妥当性」を有しているとは到底言えません。また、現在素案の段階であり、今後、委員の皆様が審議されることとなる中央区全域の『地区計画の改定』が目的とする「定住住宅に対する容積率緩和の廃止」という人口回復策から舵を切る現在の区のまちづくりの政策と相反しています。
委員の皆様には、月島第一小学校に増築する余地が本当にあるのか、狭い校庭をこれ以上狭くしてよいのか、そこで教育を受ける子ども達の目線に立って同校の現場を見学頂きたいと考えます。
月島第一小学校の許容量にあった規模に、本件事業の規模を縮小すべきではないでしょうか(南地区事業も同様)。本件事業における容積率1000%の緩和は、経済合理性のみを重視し過ぎであると考えます。
●資料4 月島地域のみ抜粋
●資料5
一、区道821号線の廃道について
生活道路として使われている区道821号線を廃道すること自体、廃道の要件である道路法10条1項の「一般交通の用に供する必要がなくなった」とは認められないため、同条文に反すると考えます。
さらに、本件事業で自動車流入が一日約1000台増加する試算であり(●都市計画案説明会 配布資料27頁上段参照)、近接する南地区事業と西仲通り地区事業の両再開発により生じる流入増加にも合わせて対応するために当該区道の存続は必須です。一方通行も多い月島路地の交通の混乱をもたらす虞があることから廃道ができないと考えます。
●都市計画案説明会 配布資料27頁上段参照
一、本件事業と南地区事業の近接した大規模再開発の二事業が、ほぼ同時期に工事を行うことについて
本件事業と南地区事業は、工事期間がほぼ重なり(本件事業2024年-27年、南地区2023年-26年)、工事の騒音・振動・粉じんや車両の危険性など月島の住環境に深刻な影響がもたらされます。
月島三丁目の同じ町内で近接した大規模な再開発工事を同時期に行うことが可能なのかどうか、工事車両が狭い月島の路地に溢れないかどうか、中央区からこれらを説明する資料は提示されていません。両工事に挟まれる住民の過大なご負担を考えるのであれば、少なくとも工事期間をかぶらないようにする配慮が求められると考えます。
一、本件事業と南地区事業の二事業、場合によっては西仲通り地区事業も合わせた三事業について環境影響評価をすべきことについて
本来、東京都環境影響評価条例では、高層建築物の新築の場合、「高さ100m以上かつ延べ面積10万㎡以上」で環境影響評価が実施されることとなっており、本件事業は対象になるはずですが、月島三丁目が「良好な環境を確保しつつ都市機能の高度化を推進する地域(条例第40条4項)」(=「都市再生緊急整備地域」)と指定さているため、その場合には環境影響評価は「高さ180m以上かつ延べ面積15万㎡以上」で実施されることとなります。
本件事業が、延べ面積の点で対象事業から外れるとしても、近接する南地区事業を合わせた規模は、環境アセスメントが要求される都の基準である延べ面積15万㎡をはるかに上回る約23万㎡(南地区約8.2万㎡、北地区約14.5万㎡)であることを中央区は重大視すべきです。
二事業、評価項目によっては三事業を合せた環境影響評価をなすことは、上述の日照阻害や交通問題、工事の影響、社会的インフラの不足等住民のご不安な点について、正確な情報が提供されることに繋がります。環境影響評価を実施して、都市計画法で求められるまちづくり行政手続における説明責任(『都市計画運用指針』Ⅴ参照)を中央区が果たすべきであると考えます。
まだまだ、問題点がございますが、重大な点を五項目ご指摘させていただきました。
意見書や説明会で出されたご意見が指摘しておりますこれらの問題点が、7月30日開催の都市計画審議会において、十分にご議論いただけますようにどうかよろしくお願い申し上げます。
月島の防災性の向上、老朽化した建物の更新、空き家問題、老々介護や独居高齢者の見守り等の地域課題の解決の必要性は強く感じており、再開発自体を全面否定するつもりはございません。
月島の再開発問題について地域住民の有志で定期的な勉強会を開催している「愛する月島を守る会」の皆様は、少額の自己資金での共同建て替えの代替案も検討されています。超高層再開発の一案に固執することなく、再開発の手法を、オープンな形で議論をする場ができないものかと考える次第です。
長文にも関わらずお読み頂き感謝申し上げます。
平成30年7月24日
中央区議会議員
小坂和輝
東京都中央区月島3-30-3-2F
電話03-5547-1191/fax03-5547-1166
メール kosakakazuki@gmail.com
根拠資料:
●資料1 私の作成スライド 三事業の比較
●資料2 中央区の作成スライド 三事業の位地図
●資料3 晴海五丁目西地区開発計画 環境影響評価書について
●資料4 中央区作成資料 『晴海新設校開設を想定した推計』
●資料5 中央区作成資料 『小学校児童数増加に対する今後の対応について』
〇都市計画原案説明会 議事要旨 1頁のみ
〇都市計画案説明会 議事要旨 1頁のみ
〇「愛する月島を守る会」作成『月島の路地文化を引き継ぐ小さな再開発』 一部のみ抜粋
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