「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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犯罪実行の着手を、実行行為の開始だけでなく、法益侵害の危険性が具体的に惹起する行為と捉える

2014-10-01 23:00:00 | 刑法学
 以下、教室事例。

 「強姦致死罪」がひとつ考えられます。

 「実行の着手」が、最も大きな争点になるケース。

 客観的には、車を20kmで衝突させ、乙が死亡した。
 姦淫を行っていないのに、強姦目的で、車を衝突させており、強姦の着手ありと判断でき、その結果的加重犯として、強姦致死罪となります。

 「実行の着手」が、〇実行行為を行うこと、〇反抗を困難にさせるだけではなく、より実質的に考え、法益侵害の危険性が具体的に惹起されたならば、実行の着手有りと判断すべき事例があるということです。

***************教室事例*******************************************
<事例1>
甲(男、30歳)は、勤務していた会社の営業先で乙(女、25歳)と知り合い、やがて好意を寄せるようになった。
乙は、甲に対して特別な感情は抱いていなかったが、甲は、乙と会話を重ねるうちに、乙が自分に好意を抱いていると思い込むようになった。
嫉妬深く、独占欲が強い甲は、乙が他の男性と楽しそうに会話をするのを目にするたび、鬱憤を募らせていたが、次第に、「なぜ俺がいるのに他の男と仲良くするのか。他に男がいるのではないか。」などと勝手な妄想を抱くようになった。

甲は、そのような妄想に基づき、乙の男性関係を探るため、平成25年9月ころから、乙が退社した後、乙を尾行するようになった。
すると、ある日、乙が見知らぬ男性を伴って自宅マンションに入っていくのを目撃し、絶望と憎悪の気持ちから、自暴自棄となり、「この際、乙を強姦して自分のものにしよう。もし、乙が抵抗するようであれば殺してしまおう。」と考えた。

甲は、計画を立てる際、以前、乙が大学時代陸上部に所属していたと話していたのを思い出した。
甲は、身長170cm、体重70kgであったが、乙は、身長150cm、体重45kgであったため、体格では勝るものの、敏捷性・走力では劣ることから、正面から襲ったのでは逃げられてしまうと思った。
そこで、甲は、乙の背後から車で近づき、低速度で乙に衝突させて転倒させた上、乙を車内に引きずり込んで人気のいない場所に移動し、そこで乙を強姦することにした。
そして、もし乙が激しく抵抗した際には、乙の首を絞めて殺してしまおうと考えた。
甲は、車を衝突させる場所として、乙の自宅マンションからそれほど離れていない人通りの少ない路地を選び、そこで待ち伏せすることとした。

平成26年8月1日、甲は、日頃自分が使用している普通乗用自動車の後部座席の両ドアにチャイルドロックをかけて内側から開かないようにした上、左右の窓ガラスに黒色フィルムを貼り、外から中が見えないようにした。
そして、抵抗された場合に備えて、ロープを用意し、助手席のグローブボックスにしまった後、上記路地まで運転し、同日午後9時頃から車内で乙を待ち伏せた。

同日午後11時頃、甲は、自車の後方から乙が自宅マンションに向かって歩いてくるのを発見したことから、乙が車の脇を通り過ぎるのを待って車を発進させ、時速約20kmの速度で乙の背後から車両を衝突させた。
これにより、乙は、ボンネットに跳ね上げられ、後頭部をフロンドガラスに強打した後、路上に落下し、意識を失った。甲は、路上に転倒している乙を車の後部座席に引きずり込み、ドアを施錠した上、現場から約5km離れた人気のない工事現場に向けて運転を開始した。

ところが、途中で、甲は、乙が意識を取り戻し、呻き声をあげながら激しく嘔吐するのを見て、自分のしたことの重大さに気づき、直ちに119番通報をした。  
そして、救急隊が到着するまで、乙を介抱し、救急隊が到着した後は、隊員に対して正直に状況を説明し、病院まで付き添うなどしたが、乙は、同日午後11時30分頃、上記衝突による外傷性脳内出血により、搬送先の病院で死亡した。
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