◆〜本と歩こう(35)~◆
こんにちは。市民レポーターの 杉浦玲子 (すぎうら れいこ)です。
今回は、5月5日(木)~8日(日)の間、甲府駅北口の藤村記念館で行われた飾り結び展のご報告です★
会場には、飾り結び講師の長坂加奈子(ながさか かなこ)先生とその講習生のみなさんによる作品が展示されていました。
展示のテーマである訶梨勒(かりろく)とは、インド原産シクンシ科の植物のこと。その実「訶子(かし)」を乾燥させたものが万病に効く薬や香料として珍重され、その訶子(かし)を入れた袋に飾り結びをほどこしたものも含めて訶梨勒(かりろく)と呼ばれるようになりました。
日本には仏教の伝来とともに香料が伝わり、香道の発展とともに、訶梨勒は厄除け・開運を目的とした柱飾りとして用いられ、現在に至っています。
色とりどりの飾り結びはすべて1本の紐から作られています。平均的な長さは10m(!)。
制作時間は、短いもので2時間程度、長いもので数カ月かかることもあるそうです。
会場には、飾り結びがほどこされた甲冑(かっちゅう)や、お経の意味を表している「修多羅(しゅたら)」(材料の紐の長さ24m!!)なども展示されていました。
★長坂加奈子先生にお話を伺いました★
―飾り結びをはじめたきっかけについて教えてください
「もともとは、お香(香道)をしていましたが、あるところで出会った訶梨勒のあまりの美しさに、雷に打たれたように衝撃を受けてしまって。どうしても習いたくて、東京方面の教室を探して通うようになったのがはじまりです。もう10年くらいになりますね。」
―飾り結びの魅力についてきかせてください
「一本の紐で時間をかけて制作するので、できたときの喜びが大きいところですね。それぞれの結び目には、縁起やお守りの意味もあるので、ただ結ぶのではなく、願いをこめて、祈りをこめて、想いをこめて作ることができます。私たちはよく『手紙みたいだね』と言って作っています。」
―これから目標としていることはありますか?
「飾り結びの原点が、お香やお香袋という趣味的な文化なので、まだ一般的には知られていないと思います。ものづくりや手芸的な楽しみの要素もあるので、一人でも多くの方に飾り結びの楽しさを体験してもらいながら、日本の美しい文化をもっと知ってもらえればと思っています。」
~本と歩こう(35)~
『日本の香りと室礼(しつらい)』 宮沢敏子著 八坂書房 2019年
※出版社の許諾を得て書影を使用しています
今回は「香り」をテーマに選書しました。(注)室礼(しつらい):厄除けや縁起を担いで室内を飾ること
仏教伝来の頃の日本において、神仏との交流の場をつくるのに欠かせなかった香料。
種々の香料は霊験高い薬としても珍重され、いつしか健康長寿や吉祥を願う人々によって、四季の行事とともに室礼(しつらい)の一つとして飾られるようになりました。
どれも美しく清浄な室礼の数々に、眺めているだけでも精神が穏やかになるような心地がします。
王朝人のような調度品はなくても、ともに日本の四季の豊かさを感じられる一冊です。
―取材へのご協力、ありがとうございました―