小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

マンガ感想-『C.M.B.森羅博物館の事件目録 2』加藤元浩

2013年09月12日 | マンガ感想
「青いビル」★★★ 6
~あらすじ~
壁を青く塗られた団地の住人が石をぶつけられた。警察に「犯人は一番下の階の右側の住人」と告発する投書が届くが、その部屋に住人はいなかった。

~感想~
トリックはとある雑学を元にした小さなものだが、投書の主を特定する過程がトリックへ、事件の解明へとつながる流れがうまい。
こうして読み返してみると最初からトリックは弱いのだが、この頃は見せ方が巧みでそれを感じさせなかったのだなと思う。


「呪いの面」★★★ 6
~あらすじ~
持ち主を呪い殺すと噂される能面。それぞれの理由からその面を求める人々が集まる中、作者の面打ちが密室で死んだ。
森羅は言う。「呪いは存在します。あの面には本当に死の呪いがかけられている」

~感想~
これも密室トリックはただの雑学レベル。しかし森羅が言う「呪い」の真意と事件の構図が見事で、佳作に引き上げられた。
少しずつ掘り下げられていく森羅のキャラも物語を牽引する力があり、シリーズの滑り出しは成功している。
あと余談だが作中の立樹の言動と表紙の絵が全く一致していなくて吹いた。
コメント

マンガ感想-『C.M.B.森羅博物館の事件目録 1』加藤元浩

2013年09月11日 | マンガ感想
傑作ミステリマンガ「Q.E.D.証明終了」で知られる作者のもう一つのミステリシリーズ。
大英帝国の三賢者の末裔として認められた天才少年・榊森羅が探偵役。博物学などの知識は学者顔負けながら、一般常識がごっそり抜け落ちている彼の破天荒なキャラと、博物学や考古学など多岐にわたったウンチクやそれにまつわる奇妙な事件を扱い、「Q.E.D.」と差別化を図っている。
巻が進むにつれ、「Q.E.D.」で扱えないような小ネタ程度のトリックと、珍しい豆知識を組み合わせて手軽に作られた短編が増えていくのだが、それでも耳慣れない珍しい知識で興味を引くには十分。これはこれで魅力的な作品である。
「Q.E.D.」28巻でこのシリーズとクロスオーバーを果たすため、それまでは集中的に「C.M.B.」の感想を書いていく予定。

「擬態」★★★ 6
~あらすじ~
昆虫のコレクターとしても知られる教師が失踪し、後には人体発火現象で焼け死んだとしか思えない死体が残された。
友人のため事件に首を突っ込むことにした女子高生・七瀬立樹は、謎めいた博学な少年・榊森羅と出会う。
驚異的な推理力で事件の真相を見抜いた森羅は言う。
「これから先は入館料が必要となります。払ってくれれば驚異の部屋(ヴァンダー・カンマー)をご案内します」

~感想~
というわけで第一話。「Q.E.D.」と比べればミステリ的に弱いと書いたが、そこはさすがにシリーズの開幕だけあり、ミステリ的にもおいしい事件と鋭いトリックが用意されている。
森羅のキャラと彼の背景を描くだけでも取れ高は十分。立樹は「Q.E.D.」の可奈とほとんど違いがない気がするが。


「幽霊博物館」★★★ 6
~あらすじ~
深夜の博物館に響き渡る壁を叩く音や人の泣き声。それは空襲で亡くなった人々の無念の叫びか、それとも……?
さらに事務所では盗難事件が発生し、立樹の知り合いの警備員が疑われてしまう。

~感想~
まるで場違いな感もある盗難トリックや、博物学の小ネタを組み合わせて一つの事件を型作り、最後の最後に大胆な真相が待ち受ける。
その意外性は面白かったが、盗難事件の小ネタさ加減と、絶対気づきそうな無茶な糸細工には吹かざるをえない。
コメント

マンガ感想-『Q.E.D.証明終了 27』加藤元浩

2013年09月09日 | マンガ感想
「鏡像」★★☆ 5
~あらすじ~
両親の離婚によって別れて暮らすことになった双子の姉妹。姉がついていった父が亡くなり、その一年後に家が全焼した。
火事は放火なのか? 双子の姉妹のいずれかが犯人なのか?

~感想~
そういう仕掛けならもうちょっとタイトルに絡めて、怪奇味を出したり謎を深められたような。
謎と解決の所在がいまいちあやふやで、もったいない一編。


「立証責任」★★★★ 8
~あらすじ~
実際の事件をもとにした模擬裁判の裁判員に選ばれた燈馬と可奈。
強盗事件の犯人に燈馬が下す判決は。

~感想~
これは良作。逆転裁判シリーズの大ファンとしても納得の、模擬裁判ならではの仕掛けが鋭く光る。
燈馬の下す判決とその理由に、決めの一言も見事にはまった。一定以上のクオリティを常に保ちつつ、数巻ごとにこういった目を見張る作品があるからたまらない。
コメント

マンガ感想-『Q.E.D.証明終了 26』加藤元浩

2013年09月08日 | マンガ感想
「夏のタイムカプセル」★★★☆ 7
~あらすじ~
可奈が小学3年生の時に埋めたタイムカプセル。
中に入っていた野球のボールをなぜしまったのか思い出せないが、誰かの宝物のような気がして……。

~感想~
この時期に読み返すにはタイムリーな夏の物語。
少しずつ明らかになっていく淡い記憶、犯人(?)の誤導、そして燈馬が導き出す真相の絶妙な隠し方と、ミステリ的にも美味しい一品。


「共犯者」★★☆ 5
~あらすじ~
密室で発見された死体。犯人はすぐに名乗り出たが、被害者もそして犯人も密室に入ることはできないはず。
共犯者がいるならば犯行は可能なのだが……。

~感想~
創作ノートによると作者は「なんでもあり」を避けるため、事件に共犯者は出さないよう務めているそうだ。
だがその禁をあえて破りそのものズバリ「共犯者」と題した作品。タイトルの意味を逆手に取った真相はやや期待はずれかつ偶発的にすぎる。
冒頭から自白し「私が殺した」と言い続ける犯人は非常に印象に残った。
コメント

マンガ感想-『Q.E.D.証明終了 25』加藤元浩

2013年09月07日 | マンガ感想
あいつを…土下座する生き物に変えてやる!

「宇宙大戦争」★☆ 3
~あらすじ~
部室を乗っ取られた探偵同好会の三人組。燈馬は彼女らのため奇想天外な作戦で部室奪回を企むが……。

~感想~
同好会の面々が再登場するドタバタ騒ぎ。トリックも何も見当たらないが、燈馬の最後の一言が腹黒くて良い。


「パラレル」★★★ 6
~あらすじ~
山奥の別荘地で起きた殺人事件。被害者も容疑者もシンクロトロン建設に関わっていた。超ひも理論の導き出す犯人の姿は?

~感想~
前後編にまたがるだけはある大盤振る舞い。が、肝心の(?)超ひも理論は超ひも理論言いたいだけだろという薄い関わり方。
犯人を特定するロジックもニコリのパズルじみて、密室(?)トリックもごく単純。だが燈馬の役どころや犯人の思惑など物語の構成自体が面白く、佳作に仕上がった。
コメント

マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 24』加藤元浩

2011年05月22日 | マンガ感想
「クリスマスイブイブ」★★ 4
~あらすじ~
クリスマスの前の前の日、想と可奈のバイト先で、多重トラブルが発生。紛失した財布に一組多い客、突如現れた足跡と浮気問題……。皆が幸福になる方法とは?

~感想~
トリックとも言えないような小ネタを組み合わせて一編仕上げた。しかし雑多な事件の集まりでクリスマスの喧騒を表現したともとれるといったところ。


「罪と罰」★★★★ 8
~あらすじ~
「世の中は不公平」そう感じた金欠の院生が盗みを実行に移すが、盗みに入った場所で殺人事件に遭遇。
そのうえ水原警部に殺人犯として疑われ執拗に追い詰められてしまい……。

~感想~
言われてみれば当たり前の真相を覆い隠す、ミスディレクションが冴えに冴え渡る。こんなあからさまな真相を気づかせないのだから本当にすごい。
逆に一切引っかからなかった方にとっては、実に退屈な一編だったろう。
コメント

マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 23』加藤元浩

2010年10月16日 | マンガ感想
「ライアー」★★☆ 5
~あらすじ~
両親に会うため偶然想の友人・ライアンのクルーザーに乗船した燈馬兄妹と可奈。だが海上でライアンが殺害される事件が発生。
しかも乗船した全員にはアリバイがあり、皆ライアンに恨みを抱いていた。

~感想~
あらすじからして思い出すのはかの古典的名作。となれば、もちろんそれを逆手にとったトリックを仕掛けてくれるのはお約束。
……などとそんな大掛かりな所業を、お約束などと気楽に言ってしまえる、ミステリ書きとしての信頼感を持っているのだから、この作者は本当に恐ろしい。
しかしそれだけ大掛かりなだけに、筋が複雑に過ぎてややこしくなってしまったのも欠点。
ここまでのロジックを操れる作家はそうはいないのだから、贅沢な注文なのだが。


「アナザー・ワールド」★★★☆ 7
~あらすじ~
想にリーマン予想を説くと宣言した数学者が学会に現れずに失踪してしまった。
彼は自宅に四行詩を、4人の関係者には四行詩と関連する絵を残していた。4枚の絵に隠された真実とは。

~感想~
とりあえずスキューズ数に燃える。なにそれ熱すぎ。
熱いといえば、暗号に熱が入っていて、読者にはほとんど解きようもないものと、ミステリではおなじみのネタに数学を絡めたものの二つがあり、どちらも面白い。
物語としても、タイトル通り「アナザー・ワールド」に惹かれる燈馬と、彼を現実につなぎとめる可奈との関係が興味深い。
まあこの先も進展はしないんだけども。
コメント (2)

マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 22』加藤元浩

2010年10月15日 | マンガ感想
「春の小川」★★★★☆ 9
~あらすじ~
記憶をなくし絵が書けないという日本画家。そんな彼の前に彼を別人だと思い込む人が2人も現れる。彼の記憶の鍵を握る「大切な場所」の真実とは?

~感想~
これはとにかく読んで欲しい。そしてこの作品がアンフェアかどうか議論しましょう。僕は驚ければよし!


「ベネチアン迷宮」★★★☆ 7
~あらすじ~
銀行強盗に人質としてアランが誘拐された。想たちは彼を助け出すことができるか?

~感想~
天藤真の傑作『大誘拐』を想起させる展開が楽しい。
ベネチアという舞台を活かしたトリックはおいといて、シリーズの重大な転機となるあるエピソードや、意外なところに潜ませた仕掛けもまたお見事。
コメント

マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 21』加藤元浩

2010年10月14日 | マンガ感想
「少しは反省してください」
「朝寝坊に反省しどころある?」



「接がれた紐」★★★ 6
~あらすじ~
雪山で見かけた浮かない表情の男女2人組。想たちの「心中」の予感は取り越し苦労だったが、彼らにはある事情があった。

~感想~
正統派本格ミステリ。物理的なトリックの部分にやや小粒なものが混じってはいるが、それが全てを支えるものではなく、多くの要素が絡み合って物語を作っているため、気にはならない。
短いながらに多くの趣向を盛り込んだ意欲作である。


「狙われた美人女優、ストーカーの恐怖絶壁の断崖にこだまする銃声燈馬と可奈はずっと見ていた」★★★☆ 7
~あらすじ~
落ち目の女優が、マネージャーと仕掛けた狂言のストーカー事件。事件担当の火サスマニア刑事・笠山によって女優の思惑通り騒ぎは大きくなるが、事件は狂言ではなくなってしまう。

~感想~
2時間サスペンスの定石をなぞりつつ、期待通りに定石を逆手にとった思わぬ展開を仕掛けてくれる。
笠山の造型の楽しさはもちろん、伏線も冴えた良作。
コメント

マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 20』加藤元浩

2010年10月13日 | マンガ感想
「無限の月」★★★ 6
~あらすじ~
亡くなったはずの友人から、想にメールが届いた。そこから発生する中国マフィアのボス達による殺人の連鎖。メールに残された「φの場所」の意味とは?

~感想~
お得意の数学ネタ。犯人が消えてしまう連続殺人という趣向がまず面白い。
トリックはそこから考えうる範疇からは外れなかったが、その稚気だけでも買うべきだろう。


「多忙な江成さん」★★★★★ 10
~あらすじ~
資産家である江成姫子の祖母が命を狙われているという。探偵同好会と可奈がその危機を防ごうとするが、その周辺で奇妙な出来事が起こり始める。

~感想~
これは傑作。日常の謎に連なる系譜でありながら、思わぬところから裏の真相が降って湧く。
メインの物語を追いながら、そのところどころに張られた伏線と、最後の逆転劇。年間ベスト級の一作である。
コメント