小金沢ライブラリー

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マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 19』加藤元浩

2010年05月06日 | マンガ感想
怪しいってのは勘か?
僕は勘なんか持ってません。
……かもな。



「マクベスの亡霊」★★★ 6
~あらすじ~
シェイクスピアの戯曲マクベスの舞台で主演を務めるベテラン俳優を、積もり積もった恨みから殺害した若手俳優。
だがまるでマクベスのあらすじをなぞるように、彼は殺した俳優の亡霊と燈馬の推理に追い詰められる。

~感想~
小さな、しかし物珍しい仕掛けが次々と積み重ねられていくなか、ミステリマニアにはおなじみのトリックが急に降ってわいて驚かされた。
犯人の細工、燈馬の気づき、偶然のトリック、そして罠。多くの要素を出し惜しみせず詰め込んだ佳品。


「賢者の遺産」★★★ 6
~あらすじ~
ひょんなことから昭和初期にタイムスリップしてしまった可奈。
燈馬に似た書生とともに資産家が残した隠し財産をめぐるトラブルを収束させることに。はたして可奈は元の世界に戻れるのか?

~感想~
シリーズ作品ながらタイムスリップという大胆な仕掛けを持ってこられるのがマンガの強みだろう。
単純にタイムスリップ譚として話が面白い。ラストも作者は肝を心得ている。
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マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 18』加藤元浩

2010年05月05日 | マンガ感想
「名探偵"達"登場!」★★★ 6
~あらすじ~
たった3人きり、しかし個性派ぞろいの探偵同好会。彼女らの前に現れた、数々の小事件。
ケーキの盗み食い、無人のトイレに響く声、鏡に映る女の霊。はたして真相は?

~感想~
初登場にも関わらずキャラの立ちまくった探偵同好会3人のやりとりだけで最後まで引っ張ってくれる。
トリックは物理化学の応用授業だが、組み合わせと扱い方でこうも楽しく見せられるのだ。


「3羽の鳥」★★☆ 5
~あらすじ~
笹塚刑事の故郷で心中した男女の遺体が発見された。
事件の鍵は笹塚の記憶の中に隠されていた?

~感想~
謎めいた絵本をうまく絡め、どうということもないトリックで小粒な作品を作り上げたという印象。
これといった仕掛けが無いのに一定レベルに達する作品をものしているのだから、この場合は褒め言葉である。
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マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 17』加藤元浩

2010年05月04日 | マンガ感想
「災厄の男の災厄」★★★ 6
~あらすじ~
アランの誕生日パーティーに招待された燈馬たち。それはアランが人材確保のため、招待客に盗難事件の容疑をふっかけるための作戦だったが、事態はアランの予想を離れた騒動となる。

~感想~
トリックそのものよりも構成の妙が光る。最後の一言がなんとも心憎いではないか。
こういうことをちょくちょくやってくれるから、このミステリは面白いのだ。


「いぬほおずき」★★☆ 5
~あらすじ~
映画の撮影中、模擬刀が本物とすり替わり主演俳優が死亡した。そして事件をめぐる人間模様は製作中の映画「いぬほおずき」を軸に浮かび上がる。映画に秘められた事件の「謎」とは?

~感想~
密室とかトリックとかかなり投げやりなのだが、その分ストーリー展開に気合が入っている。
ラストの燈馬の一言や、映画と現実の虚々実々の絡み合いなど見どころが多い。
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マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 16』加藤元浩

2010年04月18日 | マンガ感想
「サクラ サクラ」★★☆ 5
~あらすじ~
燈馬と可奈の関係を問いただす女子の先輩。花見の場所取りで隣の人達が大事な物を紛失し困っている中、可奈が語る燈馬との微妙な関係への答えとは?

~感想~
トリックはあってないようなもので、短編ひとつを支えることもできないレベルなのだが、その分ストーリーに気合が入っており、名言連発でファンには見逃せない作品になっている。


「死者の涙」★★☆ 5
~あらすじ~
休日を利用して燈馬と水原親子がやってきた山奥の村で夫の暴力に悩む女性が失踪した。この失踪事件の末に可奈は信じられない光景を目の当たりにする。

~感想~
こちらもトリックは読者に解きようがないもので、冒頭に予告された「信じられない光景」が物語の中核をなしている。
その「信じられない光景」に対する僕の解釈は、「THE TRICK NOTE」の作者コメントによると間違っていたのが意外なところ。あー言われてみればそういう反応するわな。
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マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 15』加藤元浩

2010年04月17日 | マンガ感想
なにかわかったところでそれは"真実"じゃない
全部がわかったとき初めて……"真実"が現れる



「ガラスの部屋」★☆ 3
~あらすじ~
可奈の友人の祖父が、真空管のコレクションに囲まれた密室で殺された。事件の真相、そして会う人ごとに違う印象を受けたという祖父の真意とは。

~感想~
第三の入り口がなんの脈絡もなしに飛び出してきて吹いた。ここにせめてなにがしかの理由があれば印象も変わったろうに。


「デデキントの切断」★★★ 6
~あらすじ~
元助手の嫌がらせに苦しむ老教授。かつて彼に燈馬は「デデキントの切断です」という言葉を残していた。

~感想~
冒頭から即座に真相に思い至る人も多いだろう。実際問題、ロキが気づかないわけがないのだが。
それはともかくとして、デデキントの切断というキーワードをうまく絡め、お話としてはよくできている。
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マンガ感想-『Q.E.D 証明終了 14』加藤元浩

2010年04月16日 | マンガ感想
「夏休み事件」★★☆ 5
~あらすじ~
剣道場に猛スピードで飛び込んできたバスケットボール。校内で多発する小さな事件。容疑者と思われる4人はそれぞれ対立していた。

~感想~
真相を聞けばミステリマニアなら即座にあの作品を思い浮かべることだろう。
トリックはともかくとして、一連の騒動の中で最も怒っていたのは誰か……というラストが面白い。


「イレギュラーバウンド」★★ 4
~あらすじ~
市議会議員が重傷を負い意識不明の状態となった。彼は刺された後に飛行機を操縦したのか? さらに持っていたはずの大金も消えていて……。

~感想~
タイトルを「オッカムの剃刀」にしなかったのはそこまでの事件ではないからか、単に「オッカムの剃刀」と言いたかったからだけか。
それはともかく小粒なトリックと小粒な真相で、それより納得できないのがこんなに丸く収まるのかという疑問。
あの人物の性格から考えると、絶対に許さないと思うのだが。
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マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 13』加藤元浩

2010年04月15日 | マンガ感想
「災厄の男」★★★★☆ 9
~あらすじ~
燈馬と旧知の大企業の会長アランが来日し、燈馬を自社に迎えるために勝負を仕掛けてくる。
かくして燈馬と可奈はレンブラントの絵を巡り、アランと騙し合いをすることに。

~感想~
これはすごい。起承転結全てが(以下ネタバレ)「籍」というキーワードで貫かれているのだ。
まず発端となるのは燈馬が18歳になったときに選ぶ国籍で、騙し合いの道具となるレンブラントは、弟子の描いた作品が世に出回り、その真贋が問われており、絵の戸籍問題と言える。
燈馬が仕掛けた罠は船籍を利用したもので、オチとなる可奈の悩みは、燈馬の国籍にまつわる習慣で解決する。

徹底してよく考えられた作品である。


「クラインの塔」★ 2
~あらすじ~
「黄泉の塔」と呼ばれる栄螺堂を調査する燈馬と可奈。この塔は一人の男が「あの世へ行くため」に建てたもので、彼は塔の中で1年間姿を消していた。
そんな中、塔内で殺人事件が発生し……。

~感想~
マンガでしか描けない、活字で描いたら殴られるようなトリックで、しかも驚く要素が一切ないため、非常に小粒な印象しか受けない。
コメント

マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 12』加藤元浩

2010年04月14日 | マンガ感想
「銀河の片隅にて」★☆ 3
~あらすじ~
オカルト否定派の大学教授が、宇宙人の絵に「興味深い」と発言し騒然となる。その後、絵が何者かに盗まれる事件が発生し、偶然居合わせた可奈にも疑いが向けられてしまう。

~感想~
作者の言うとおり、辻褄あわせに汲々となって「こうすればできる」というだけの真相になってしまった。
それでもシチュエーションの面白さと、犯人に対しての可奈の一言などはいいのだが。


「虹の鏡」★★★★ 8
~あらすじ~
「魔女の手の中に」続編。過去の燈馬が関わった事件の関係者が燈馬の行く先々で次々と命を狙われる。犯人の目的は? それとも燈馬が……?

~感想~
前作と密接に絡み合った、表裏一体の作品。
燈馬の足跡を追うという展開も面白く、最後にはやりすぎな気もする豪快な真相も待ち受ける。
丁寧な伏線と、あわせて一冊半に及ぶ分量で丹念に描かれた物語が読ませる良作。
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マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 11』加藤元浩

2010年03月21日 | マンガ感想
「寄る辺の海」★★☆ 5
~あらすじ~
一人の少年が溺死した40年前の事件。その真相を告発する手紙により一堂に会した当事者たちと少年の父親。そして起こる事件。40年前の真相は?

~感想~
トリックとしては小粒で、証言の矛盾を突き合わせる解決も物足りないが、ストーリー展開だけで読ませる。
結末の一言も冴え、ロジックだけではないマンガとしての面白さのある佳作。


「冬の動物園」★★ 4
~あらすじ~
冬の動物園で起きた殺人事件。その事件には推理作家志望の青年が、成仏できないほどの思いが託されていた。

~感想~
こちらも小粒なトリック。話の面白さだけで引っ張った印象。
実は次巻の労作の前に書かれていたのだが、刊行時期と作中の季節を合わせるために、こちらが先に収録されたため、この11巻は小さめの事件が集まってしまったという裏事情がある。
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マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 10』加藤元浩

2010年03月20日 | マンガ感想
「魔女の手の中に」★★★★☆ 9
~あらすじ~
優が持ってきた1枚の葉書から語られる、想の悲しき過去の事件。始まりは想と女検事・アニー、そして魔女裁判と呼ばれた公判との出会いだった。

~感想~
初の二話ぶち抜き構成となっただけはある、分量に見合った大作。
法廷劇としての面白さと本格ミステリのキレを兼ね備え、もちろん最後には意外な真相を見せてくれる。
おまけにシリーズとしても重要な一編であり、ファンは見逃せない一冊である。
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