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ミステリ感想-『名探偵に薔薇を』城平京

2008年06月29日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「メルヘン小人地獄」という不気味な童話が、各新聞社に郵送された。
遺体になんの痕跡も残らないという幻の毒薬「小人地獄」をめぐり、童話どおりに起きていく猟奇殺人。
心に十字架を背負う名探偵・瀬川みゆきは事件の謎を解き明かせるのか。


~感想~
ひとりの作家が生涯に一冊出せるかどうかというレベルの、いわゆる破格のデビュー作。
ミステリ以前に小説そのものに慣れていないような、独特の文体とときおり飛び出す難解な単語、そして無味乾燥な会話と荒削りながら、瀬川みゆきという一人の名探偵の悲哀と運命を描ききった、まがうかたなき傑作。文章がどうのは関係ない。
これだけの才能がもし「トリックに前例がある」などというつまらない理由で新人賞を逃したことで、斯界に見切りをつけてしまったのならば、なんと愚かなことだったろうか。
報われない名探偵と作者に、一輪の薔薇を。


08.6.29
評価:★★★★ 8
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