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ミステリ感想-『少女を殺す100の方法』白井智之

2018年03月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「死んでる? 誰が?」「みんなです」

名門女子中学校である日、教室内で20人の生徒が死体で発見される。
教頭のクサカベは学校に都合よく真相を偽装するため、警察よりも先に犯人を捕らえようと目論む。
「少女教室」他4編収録。


~感想~
白井智之はやっぱり頭おかしいな! 短編でも完全に頭おかしいな!
これまで長編3作を発表しいずれもエログロ(※グロ八割)なSF設定ながら、論理と推理に彩られた一級の本格ミステリをものしてきた作者による初の短編集。
期待通りに短編でも論理の冴えはキレッキレで、長編と同じくエログロ(※グロ九割)かつ説明不要のSF的な特殊設定を活かした、他に無い個性が輝く。

冒頭の「少女教室」からして「バトル・ロワイアル」か「悪の教典」かというクラス丸ごと皆殺し事件を、些細な手掛かりから論理的に紐解いて見せ、さらに何捻りも加えるという年間ベスト級の代物。

続く「少女ミキサー」は「まず少女がミキサーに放り込まれます」という動機も世界観も何もかも放棄した特殊設定にもほどがある舞台なのに、殺人事件がやはり論理的に解かれてしまう。

「「少女」殺人事件」はアンフェアの謗りを受けた作家が、フェアプレイに徹して(?)書いた作中作が描かれるパロディミステリ。

「少女ビデオ 公開版」はSF設定は無いものの登場人物が全員はっちゃけており、5編中最もエログロ(※グロ五割)に特化しつつも意外性のある物語でぐいぐい読ませる。

そして掉尾を飾る「少女が街に降ってくる」はタイトル通りの現象が起こる村で、この設定から考えられる限りの発想の飛躍と意外性を突き詰め、同時にデビュー作も想起させるとにかく無茶苦茶な一編で、まるで長編を圧縮したような濃密さ。

白井智之が短編を書いたらどうなるか? という疑問にほぼ100%期待通りに応えてみせた満点回答の一冊で、短編集ながら今年の本ミスランクインも十分に狙えるのではなかろうか。


18.3.7
評価:★★★★ 8
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