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ミステリ感想-『刀と傘』伊吹亜門

2019年05月21日 | ミステリ感想
~あらすじ~
徳川幕府が倒れ、異国の脅威に揺れる日本。
大志を抱いた後の司法卿・江藤新平は京に上り、協力者を得ようとした矢先に事件に巻き込まれ、尾張藩士の鹿野師光とともに捜査を始める。

2018年本格ミステリ大賞


~感想~
本格ミステリ大賞受賞作と聞くと「あ、はい」となるが地味に良い連作短編集。
被疑者の誰よりも腕が立つのに惨殺された剣豪、間諜として雇われた矢先に密室で切腹した男、死刑寸前に毒殺された死刑囚等々、いかにも本格ミステリらしい事件を上手く維新直後の時代に溶け込ませた。
冒頭の「佐賀から来た男」が伏線満載のロジカルな一編でその先も期待させるが、以降はどちらかというと連作としての、というか物語としての仕掛けを整えるための事件が続きいささか拍子抜け。とはいえいずれも何かしら意表を突くか目をみはらせるものはあり、短編としての質も上々。
結末の「そして、佐賀の乱」である人物が豹変しジョーカー・ゲームの結城中佐みたいになってしまうのは面食らうが、連作として歴史物としてまとめ上げ作品自体を一段引き上げたのは間違いない。本格ミステリ大賞はどうかと思うが、時代物に抵抗がなければ読んで損のない秀作である。


19.5.18
評価:★★★☆ 7
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