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ミステリ感想-『破線のマリス』野沢尚

2022年05月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
映像編集者の遠藤瑤子は、敏腕だが捏造スレスレの過激な編集で人気を博していた。
彼女を訪ねた郵政官僚を名乗る男は、ある転落死の他殺の証拠だというビデオテープを渡し、放送するよう依頼する。プライドをくすぐられた瑤子はその映像を信じるが…。

1997年江戸川乱歩賞、文春3位

~感想~
作者は脚本家として10年以上のキャリアを持ち、このデビュー作で乱歩賞も射止めた。
当時はまだテレビの力が強く、その信頼性も高かった頃で、捏造や印象操作を題材にした作品が、しかもテレビマンによって書かれたことは目新しかったという。
さすが多くの作品を手掛けてきた脚本家だけあって、転落死の映像の信憑性をめぐる謎や、告発された男と、窮地に陥った瑤子が次第に呑まれていく狂気がそつなく描かれ、最後にはある一つの謎の意外な真相が明かされる過不足ない物語で、際立った長所こそないものの、一息に読み通せる。
強くおすすめはしないが、乱歩賞や文春のマラソンをしている方なら安心して読んでもらえる一冊だろう。

余談だが20世紀の作品だけあり、瑤子がさして意味もなくシャワーを浴びてその乳首の張りに言及される無駄なサービスシーンには笑った。
なおwikiのあらすじには内容が全て書かれているので要注意。それはあらすじではなく梗概だと思う。


22.4.23
評価:★★★ 6
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