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ミステリ感想-『兇人邸の殺人』今村昌弘

2021年08月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
斑目機関との関連を聞き、葉山たちが向かったのは、遊園地の中に建つ「兇人邸」。
そこでは機関の研究者が怪しげな実験を行い、わけありの従業員らが犠牲になっているという。
研究成果を奪うため傭兵も同行するが、思いも寄らないものが待ち受けていた。


~感想~
シリーズ第3弾。いわゆる特殊設定ミステリに分類されるシリーズだが、今回は原点回帰し、第一作を思い出させるようなある存在が立ちはだかる。
そして推理やトリックも特殊設定を根本としたもので、パニックホラー的な要素と噛み合い、本作でしか味わえない面白さに仕上がった。
それだけではなく、名探偵と助手の関係性についても今回も思索を続け、その進展も見どころである。
トリックに関してはミスディレクションはあからさまで、伏線もかなり大胆なものの、それでもギリギリで裏をかいて来るし、解明のロジックも明快かつ緻密に組み立てられる。終盤に明かされる事件の背景も意表を突きつつ納得の行くもので、かなりどぎつい外道な(しかしそれしかない)逆転の秘策も見事だった。さらっと流され過ぎてて笑ってしまったが、あの外道さをつつくと大変なことになるので仕方ない。
前作から実に1年半ぶりの刊行と、漫画化!映画化!100万部!という周辺の騒がしさとは無縁の落ち着きぶりで、安定した良作を生み出し続けている作者だが、それにしても本作のラストには驚いた。これだけ完成度の高い作品がまさか単なる前編に過ぎないのか? この作者ならばまた期待に応えてくれるに違いない。楽しみにゆっくり待ちたい。


21.8.24
評価:★★★★ 8

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