~あらすじ~
食べれば食べるほど頭の冴えるグルメ探偵アレックスが失踪。彼の助手を務めたがたもとを分かったティムは、過去に関わったマフィアを見かける……グルメ探偵が消えた
トラックにはねられた俺は口と肛門の役割が逆転した異世界に迷い込み、しかも殺人容疑を掛けられていた……げろがげり、げりがげろ
再開発地区に引っ越した梨沙子は、マンションの隣人が誘拐される現場を目撃。出産を控えた身重の身体で事件を追う……隣の部屋の女
フナムシ大食い大会に参加したアイドルフードファイターが対戦中に毒を盛られ死亡。容疑と命をかけられた司会者は真相を探る……ちびまんとジャンボ
亡き探偵の師匠をしのび別荘に集まった弟子の探偵達。だが別荘には死体が転がり、火山性ガスで閉じ込められる……ディティクティブ・オーバードーズ
~感想~
前作「名探偵のはらわた」は持ち味のグロ&SFがだいぶ控え目ながら、もう一つの持ち味であるキレッキレの論理で読ませる入門編のような一冊だったが、短編集の本作はグロもSFも論理も全開。全開どころか2冊分のグロの激しさとともに、変わらぬ論理の冴えを存分に見せつけてくれた。
「グルメ探偵が消えた」はどこかで見たような探偵と助手やその他大勢が登場し、一見ただの名探偵の失踪を描いたような話が、転がりもつれてとんでもない悪魔的発想の決着を迎える。
いやこの「一から斬新な処刑方法を考案しました」みたいなオチを悪魔的発想の一言で片付けていいのだろうか。
「げろがげり、げりがげろ」は「口と肛門の役割が逆転した異世界」という発想そのものがキ●ガイじみていて、それを考えつくこと自体がイカれてるのに、期待通りにその異世界でしかなし得ない事件・トリックをぶち込み、とどめの納得するしかないが予想だにしない結末もお見事。このトリックを成立させるために相当強引なことをやってはいるが、しっかり書いてる伏線で黙らせる力業なやり口も良い。
それにしてもトラックで轢かれさえすれば一発で異世界転生できるという共通認識は、この手のギャグめいた面もある作品には便利な手法である。
「隣の部屋の女」は冒頭から白井智之を読み慣れた人間にはそういうことだろうなあ…と思わせる描写からもちろんそういうことが起こるのみならず、大胆な仕掛けが施され、一読で真相を見抜くことはまずできないだろう。その分やり口が多少強引すぎて、無理やりなところもあるにはあるか。
「ちびまんとジャンボ」は白井智之ワールド全開なグロに次ぐグロに次ぐグロで、作中でも事件の概要を聞いただけで嘔吐する人物が登場するが、読者にいても全然不思議ではない壮絶なグロさ。なんせフナムシ大食い大会である。食うな。
そしてグロ事件のグロトリックをグロ手掛かりとグロ伏線からグロ真相を暴くというもうお腹いっぱいのグログロさ。これぞ白井智之!とまでは言わないが流石流石である。
ラス前にあんなのを持ってきておいて実質的に表題作の「ディティクティブ・オーバードーズ」では何を見せてくれたかというと、なんとグロさもSF要素もほとんど無い、オーソドックスな残された手記の謎を解く系の雪の山荘ミステリ。
もちろんオーソドックスなまま終わるわけがなく、目眩のするような、いや眩暈のするようなトンデモ手記が御登場し、読者を苦笑と混乱に陥れる。だが恐るべきことにこのむちゃくちゃな手記から論理的に真相が導き出されてしまうのだからたまらない。ちょっとした島田荘司「眩暈」くらいの趣向である。
こうして感想を書くために改めて振り返ってみるだに、5編ともせいぜい50ページしか無いことが信じられないほどの濃密さで、あのむちゃくちゃぐちゃぐちゃな内容が50ページぽっちしか無かったなんて絶対に説明がつかない。
新作を出すたびに「こいつ完全に頭おかしいな!!」を塗り替え続けていく作者だが、今回もマジで完全に頭おかしい、並ぶ者なき比類の短編集である。
21.5.29
評価:★★★★☆ 9
食べれば食べるほど頭の冴えるグルメ探偵アレックスが失踪。彼の助手を務めたがたもとを分かったティムは、過去に関わったマフィアを見かける……グルメ探偵が消えた
トラックにはねられた俺は口と肛門の役割が逆転した異世界に迷い込み、しかも殺人容疑を掛けられていた……げろがげり、げりがげろ
再開発地区に引っ越した梨沙子は、マンションの隣人が誘拐される現場を目撃。出産を控えた身重の身体で事件を追う……隣の部屋の女
フナムシ大食い大会に参加したアイドルフードファイターが対戦中に毒を盛られ死亡。容疑と命をかけられた司会者は真相を探る……ちびまんとジャンボ
亡き探偵の師匠をしのび別荘に集まった弟子の探偵達。だが別荘には死体が転がり、火山性ガスで閉じ込められる……ディティクティブ・オーバードーズ
~感想~
前作「名探偵のはらわた」は持ち味のグロ&SFがだいぶ控え目ながら、もう一つの持ち味であるキレッキレの論理で読ませる入門編のような一冊だったが、短編集の本作はグロもSFも論理も全開。全開どころか2冊分のグロの激しさとともに、変わらぬ論理の冴えを存分に見せつけてくれた。
「グルメ探偵が消えた」はどこかで見たような探偵と助手やその他大勢が登場し、一見ただの名探偵の失踪を描いたような話が、転がりもつれてとんでもない悪魔的発想の決着を迎える。
いやこの「一から斬新な処刑方法を考案しました」みたいなオチを悪魔的発想の一言で片付けていいのだろうか。
「げろがげり、げりがげろ」は「口と肛門の役割が逆転した異世界」という発想そのものがキ●ガイじみていて、それを考えつくこと自体がイカれてるのに、期待通りにその異世界でしかなし得ない事件・トリックをぶち込み、とどめの納得するしかないが予想だにしない結末もお見事。このトリックを成立させるために相当強引なことをやってはいるが、しっかり書いてる伏線で黙らせる力業なやり口も良い。
それにしてもトラックで轢かれさえすれば一発で異世界転生できるという共通認識は、この手のギャグめいた面もある作品には便利な手法である。
「隣の部屋の女」は冒頭から白井智之を読み慣れた人間にはそういうことだろうなあ…と思わせる描写からもちろんそういうことが起こるのみならず、大胆な仕掛けが施され、一読で真相を見抜くことはまずできないだろう。その分やり口が多少強引すぎて、無理やりなところもあるにはあるか。
「ちびまんとジャンボ」は白井智之ワールド全開なグロに次ぐグロに次ぐグロで、作中でも事件の概要を聞いただけで嘔吐する人物が登場するが、読者にいても全然不思議ではない壮絶なグロさ。なんせフナムシ大食い大会である。食うな。
そしてグロ事件のグロトリックをグロ手掛かりとグロ伏線からグロ真相を暴くというもうお腹いっぱいのグログロさ。これぞ白井智之!とまでは言わないが流石流石である。
ラス前にあんなのを持ってきておいて実質的に表題作の「ディティクティブ・オーバードーズ」では何を見せてくれたかというと、なんとグロさもSF要素もほとんど無い、オーソドックスな残された手記の謎を解く系の雪の山荘ミステリ。
もちろんオーソドックスなまま終わるわけがなく、目眩のするような、いや眩暈のするようなトンデモ手記が御登場し、読者を苦笑と混乱に陥れる。だが恐るべきことにこのむちゃくちゃな手記から論理的に真相が導き出されてしまうのだからたまらない。ちょっとした島田荘司「眩暈」くらいの趣向である。
こうして感想を書くために改めて振り返ってみるだに、5編ともせいぜい50ページしか無いことが信じられないほどの濃密さで、あのむちゃくちゃぐちゃぐちゃな内容が50ページぽっちしか無かったなんて絶対に説明がつかない。
新作を出すたびに「こいつ完全に頭おかしいな!!」を塗り替え続けていく作者だが、今回もマジで完全に頭おかしい、並ぶ者なき比類の短編集である。
21.5.29
評価:★★★★☆ 9
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