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ミステリ感想-『悪いうさぎ』若竹七海

2020年12月23日 | ミステリ感想
~あらすじ~
葉村晶は家出した女子高生ミチルを連れ戻す調査に同行し、思わぬ災難から重傷を負う。
だがそれは悪夢の前触れに過ぎなかった。
退院後間もなくミチルの友人の美和を探すことになり、有能だが不運な探偵・葉村晶の最悪の日々が始まる。


~感想~
シリーズ初長編。やってることはしごく典型的な職業探偵の人探しなのに、序盤から次々と無数の事件が起こり、登場人物はどれも特徴的で一癖あり、手掛かりを得れば意外な事実と次の手掛かりが顔を出しと一気に引き込まれ、作者の話作りの上手さをまざまざと見せつけられる。
同時に葉村晶は延々と災難に見舞われ続け、事件に巻き込まれ続ける。さしもの不屈の探偵も最悪の危機に陥り……。そこから先がちょっとやりすぎた。
前作「依頼人は死んだ」ほどのファンタジー展開ではないが、無茶さではどっこい。ネタバレを避けて例えると、急に飛鳥部勝則作品の倫理観になって、警察組織を一切恐れない犯人が大暴れしてしまう。長編を締めくくる真相としてはあまりに現実味がなく、説得力に欠けた。もう少し警察と有罪を恐れて欲しい。
真相こそ腰砕けだったが、そこに至るまでの物語はめっぽう面白く、葉村晶の不幸とそれに立ち向かう不屈の闘志は楽しめるので、ファンなら読んで損は無いだろう。


20.11.19
評価:★★★ 6

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