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ミステリ感想-『静かな炎天』若竹七海

2021年01月12日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
多くの犠牲者を出した事故のさなか、青い服の女は犠牲者の荷物を持ち去った…青い影
次から次へと依頼が舞い込む炎天下のある日、葉村晶はある可能性に気づく…静かな炎天
35年前に失踪した気鋭の作家の足跡を追い、たどり着いた事実とは…熱海ブライトン・ロック
探偵社に勤めていた頃の同僚からの電話。彼の置かれた状況が徐々に明らかになるにつれ…副島さんは言っている
著名作家の戸籍を騙っていた身元不明死体。作家の旧友に当たりを付け正体を探るが、ことごとく行き詰まり…血の凶作
書店のクリスマスイベントのため稀覯本を受け取ってくるだけのはずが、葉村晶は次から次にお使いを頼まれる…聖夜プラス1

2016年このミス2位


~感想~
葉村晶シリーズ実に16年ぶりの短編集。
正式に探偵として復帰した葉村晶が様々な謎へ挑むが、調査会社から離れた個人経営ということもあり(少なくとも表面上は)殺人のような大掛かりな依頼はなく、いわゆる日常の謎の雰囲気がただよう。
しかしだからといって小粒なわけではなく、意外な真相や思いも寄らない展開が約束された良作揃いで、しかも短編の分量に濃縮されたクオリティは決して長編にも劣らない。

個人的には収まるべきところに全てが収まる冒頭の「青い影」が最も好みだが、最後の一撃まで実は何が起こっているのか悟らせない表題作の「静かな炎天」、順を追って明らかになっていく意外な事件と強烈なオチを兼ね備えた「副島さんは言っている」、葉村晶の不運っぷりが余すところなく発揮される「聖夜プラス1」も面白い。
残り2編もその気になれば長編化にも堪えられるプロットである。

また書き下ろしの「血の凶作」には意味深とも取れるラストから「別解があるのでは?」と議論になっているそうだが、胸糞エンドに慣れすぎて感動系SCPに「意味不明。解説求む」と言う輩と同じ曲解ではないかと自分は思う。

このミス2位はちょっと上げすぎの感も正直あるが、6編いずれ劣らぬ粒揃いの好短編集である。


20.12.24
評価:★★★★ 8

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