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ミステリ感想-『さよならの手口』若竹七海

2020年12月21日 | ミステリ感想
~あらすじ~
40代を迎えた葉村晶は勤めていた調査会社が閉鎖し、悠々と古本屋でバイトしていた。
ところが仕入れ作業中に不運に見舞われ入院したのをきっかけに、探偵の仕事が舞い込む。
死期の迫った母のため、失踪した娘を駄目元で探すだけの、決して難しくない依頼だったはずが…。

2015年このミス4位

~感想~
葉村晶シリーズ実に13年ぶりの新作。ここからコンスタントに刊行され、そのたびにこのミスランキングを賑わしていくのだが、それも当然と納得のむちゃくちゃ面白い作品だった。

間が空いた13年とほぼ同等の時が作中でも流れ、探偵ですら無くなった葉村晶だが、有能さと不運さは全く変わらず、ただの家出人探しが雪だるま式に膨れ上がっていき、とんでもない所まで連れて行かれる。
その過程で起こる大小さまざまな事件は一個の短編として読めるものもある贅沢な作りで、とにかく無数の事件と出来事が葉村晶を襲う。怒涛の展開に巻き込まれ、傷つきながらもしぶとく岸に這い上がっては、衰え始めた身体に鞭打って調査を続けるものの、13年ぶりでも軽快にしてハードボイルド気味な独特の語り口と彼女のキャラは一切変わらないおかげで悲哀の陰は見えず、読者はその勇姿(?)を応援しつつも面白がれてしまう。
作中での探偵の休業期間はわりと短いが、葉村晶という稀有の探偵の挫折と再生の物語でもあり、素晴らしいラストシーンと相まってファンを確実に満足させる傑作である。


20.12.14
評価:★★★★☆ 9

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