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三浦春馬氏イメージ小説「姥捨て山伝説」 第九章(全十一章)

2020-04-30 08:52:13 | イメージ小説
第 九 章 (全十一章)


「林檎だと??」
領主の家来が首をかしげて釣瓶(つるべ)を
上げようとした時、
井戸から溢れてくる林檎がどんどん飛び出してきた。
「なんだこりゃ。姫さまたちが見えなくなったぞ」
「重くて釣瓶がビクともせん!!」
騒ぐ村人たちをかき分けて領主が駆けつけてきた。
「姫、姫りんご姫や、どこにおるのじゃ、この林檎の山は何じゃ!!
生きているのか、皆の者、早う、姫を引きあげよっ!」
家来が十人くらい井戸の釣瓶に取りつき、
ひっぱり上げようとする。
その間にも井戸からどんどん林檎があふれてきて
その辺りに転がり始める。
 馬作と姫の姿は林檎に覆われて完全に見えない。
「姫~~~!!生きていてくれっ!!」
「馬作ぅ!!」
ばあちゃんも井戸へ向かって叫んだ。
家来どもが真っ赤な顔をして「せぇ~~の!!」で 
釣瓶を引上げ…… 、
やっと青林檎の中から馬作と姫のおでこが見えた。
「姫様、地上に上がれました。大丈夫か!?」
「は、はい」
ふたりは家来の手で井戸の外へ引き上げられ、地面に転がった。
全身びしょびしょだ。




「ちち……父上さまっ!!」
「倒れていた姫が侍女に助け起こされながら領主に叫んだ。

「この林檎たちは神様からのお恵みです。
一刻も早う、飢えている村の者たちに分け与えてくださいませっ!!
これだけあれば飢えているものの命を救うことができまするっ!」
「お~~~~~~!!」
一同、そろって姫りんご姫に目をやった。
馬作もギョッとして傍らの姫を改めて見つめる。


「そうじゃ!!そうじゃねえか!!
この林檎で腹が減りまくってる皆を満腹させることがで
きるじゃねえだか!!」
思いがけず、ヤマで拾った林檎を神社の井戸に
投げ込んだことが幸いして、村の窮地を救うことができる。
 たちまち有り余るほどの林檎が山から山へ選ばれた。







餓えに餓えていた農民たちは瑞々しい林檎の山に目を見開き、
老若男女は飛びついて、まず、丸かじりした。
「何日ぶりの食べ物じゃろう」
「むむ、歯ごたえがあって美味えのう」
「生き返る思いじゃ」
「五臓六腑に沁み渡るとはこのことじゃ!!」
 皆、生き生きとして大人は子どもにも与えてやっている。
農民だけでなく領主たちも皆、飢えているところを、
この林檎の山で潤った。
井戸からはまだまだ林檎が湧き続けて止まらない。


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