東京昆虫記

東京の自然環境に棲む昆虫たちの生態写真
.My Real Insects Photo Style in Tokyo.

暑さが和らぐ頃

2022年08月30日 | トンボ
お盆が過ぎ、猛暑が和らいだこの日は、雨が降り出しそうな雰囲気の中、近くの自然池に訪れた。

Nikon D800E+AF-S Nikkor 20mm f/1.8G ED
散歩がてら通りすがりに池を覗かれる方には、草ボウボウで藻がたくさん浮いていて何だか汚い池だね!と言う声を耳にする。確かに一般の方が見たら手入れがされていない汚い池かも知れない。でも、これこそ多様性を育む理想的な自然池だと言う事を理解して欲しい。

アジアイトトンボ(交尾)

Nikon D800E+AI AF-S Micro-Nikkor 60mm f/2.8D
春と初秋の年2回発生するイトトンボで、ここ数年の観察記録では同時期に発生するクロイトトンボに制圧されてしまい春型は少ない。しかし、この日は驚いた事に水辺周辺のいたるところに見られ、初秋の大発生に心良くしてカメラを向けた。ただ、大発生の様子をカメラで撮らえるのは難しい。それでもカシャカシャ頑張ったらこんなのが撮れた。


アジアイトトンボの交尾態にちょっかいを出すアオモンイトトンボのオス。

Nikon D800E+AI AF-S Micro-Nikkor 60mm f/2.8D
どちらも体色が似ているので同定が難しいけれど、その説明はまた今度の機会に。両種とも普通種だけれど、水辺環境を測る指標生物として重要視され、水性植物が豊富な池に無くてはならない種類。


水辺周辺の草地環境

Nikon D800E+AF-S Nikkor 20mm f/1.8G ED
特に移動距離が少ないイトトンボ科は水辺に隣接した草地環境を生活の場として必要とする種類が多く、例え池の環境が良好でも周辺に草地がなければ生息種、数ともに少ない傾向が見られる。

アジアイトトンボ(交尾)

Nikon D800E+AF-S Nikkor 20mm f/1.8G ED
ここは池の周辺にチガヤが群生する環境を持つのでトンボの種類も多く、今がいちばん良い状態。逆光で金色に輝くチガヤの穂の景観を楽しめるのと、トンボ以外にも日当たりの良い草地環境を好む昆虫のためにも、園路確保だけの草刈りにしてもらいたいと管理者側に訴えてはいるものの、冬にはチガヤ原が丸坊主にされてしまい、自然を主役にしてくれないのが残念。余談が過ぎてしまったが、本命のイトトンボの姿を探してみた。すると...

ベニイトトンボ ♂

Nikon D800E+AI AF-S Micro-Nikkor 60mm f/2.8D
自分がこの池の管理者の一員として水辺環境を背負っているのは、絶対にこのイトトンボを東京都から失いたくない思いが強いから。全国的に数を減らしている種類で東京都では準絶滅危惧種Ⅱ。最上位から三番目のカテゴリーに位置付けられている。ただ、トンボを含めた昆虫は自ら環境を作れないので、保全を行うのは我々人間の役目だと言う事を理解しなくてはならなく、多くの方々の協力が必要でそれに取り組んでいる最中。6月中旬から発生している夏のイトトンボだけれど、猛暑日にはあまり姿を見せないので、暑さが和らいだタイミングに合わせて健在であるかを見に訪れ、いてくれて一安心。

ベニイトトンボ ♂

Nikon D800E+AI AF-S Micro-Nikkor 60mm f/2.8D
池の中に浮いた汚い藻(タヌキモ)が唯一の産卵場所で、そのタヌキモが無くなれば途端に姿を消してしまう、最初に掲載したアジアイトトンボよりもデリケートな種類。だから毎年の記録が欠かせない。この日はあまり天気が良くなく、産卵活動には期待出来ないと感じたので、次回に持ち越した。昨年は9月に連結産卵の記録があるので、今シーズンは産卵の様子が見られるのか再び訪れたい。

撮影日:8月21日


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