ゆらぎつつゆく

添島揺之歌集。ツイッター感覚で毎日つぶやきます。色調主義とコラボ。

都会の夏の夜

2018-01-27 03:05:38 | 資料


また中也に興味を持った。


 
月は空にメダルのように、
街角に建物はオルガンのように、
遊び疲れた男どち唱いながらに帰ってゆく。  
――イカムネ・カラアがまがっている――

その脣は胠ききって
その心は何か悲しい。
頭が暗い土塊になって、
ただもうラアラア唱ってゆくのだ。

商用のことや祖先のことや
忘れているというではないが、
都会の夏の夜の更――

死んだ火薬と深くして
眼に外燈の滲みいれば
ただもうラアラア唱ってゆくのだ。



飼いならされた男というのは悲しい。

荒ぶる心を鼠のように丸めて心の奥に押し込み、
羊のように生きていかねばならない。

いずれ何か暗いものに食われていくのがわかっていながら何もできない。

男になれないのではない。なろうとしないのだ。

堕落になれきった人間は、終末願望を歌いながら、文明の与える刹那の愉楽にいつまでも浸っている。


政治家が悪いといひて飲む酒にやらぬ男は腐りゆくかな    揺之






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