小山田の庵ちかく鳴く鹿の音におどろかされて驚かすかな 西行
新古今の歌だが、こちらのカテゴリでいいだろうと思う。
西行は孤高の歌人である。こういう繰り返しは、ほかに和泉式部の歌が思い浮かぶが、なかなかこなれていないとできるものではない。
山田の中の庵の近くで鳴いた鹿に驚かされてしまったので、こちらも驚かしてやるとするか。
たまたま里近くおりてきたものだろう。そういう鹿への驚きとともに、情愛をも感じさせるものである。田を荒されてはかなわないと驚かしてやろうとするのだが、その心にも、歌人の鹿への暖かな心があるのだ。
奥山にたづねてきかむ鹿の音を夢にも聞きしかたいほの床 揺之