【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

社会保障制度改革プログラム(工程表)閣議決定 窓口負担は2倍増かつ少子化対策見送りへ【追記あり】 

2013年08月21日 16時39分04秒 | 第185臨時国会(2013年10~12月)秘密保護法


 安倍自民党内閣は2013年8月21日(水)の閣議で野田首相が政治生命をかけた3党合意の背骨である「社会保障制度改革推進基本法」(長妻昭筆頭発議者、平成 24 年法律第 64 号)の第4条の規定に基づ く「法制上の措置」を閣議決定しました。いわば、社会保障制度改革推進プログラム・工程表です。

 この情報は、内閣官房の次のホームページから取り出すことができます。

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/

 このうち、まず、政府は、本骨子に基づき、社会保障制度改革推進法第4条の規定に基づく「法制上の措置」として、社会保障制度改革の全体像及び進め方を明ら かにする法律案を速やかに策定し、次期国会(2013年10月召集予定の第185臨時国会)冒頭に提出する、と断定しました。

 次の3点の法制化も決定しました。

 「次期医療計画の策定時期が平成 30 年度(2018年度)であることを踏まえ、必要な措置を平成29 年度(2017年度)までを目途に順次講ずる。その一環としてこのために必要な法律案を平成 26 年通常国会(2014年1月召集予定の第186?通常国会)に提出すること を目指す

 「難病対策に係る都道府県の超過負担の解消を図るとともに、難病及 び小児慢性特定疾患に係る公平かつ安定的な医療費助成の制度を確立 するため、必要な事項について検討を加え、その結果に基づいて必要 な措置を平成26年度(2014年度)を目途に講ずる。このため に必要な法律案を平成26 年通常国会(2014年1月召集の第186?通常国会)に提出することを目指す」  

 「第6期介護保険事業計画が平成27年度(2015年度)から始まることを踏まえ必要な 法律案を平成26 年通常国会(2014年1月召集の第186?通常国会)に提出することを目指す

 と第186(?)通常国会に「提出を目指す」とした法案はこの3本だけのようです。

 少子化対策では「平成27年度(2015年度)以降の次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120 号)の延長について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講 ずる」とあります。少子化対策の新しい法制化は先送りされたようです。

 昨年の社会保障と税の一体改革関連法案は「社会保障4分野」として、「少子化・子ども子育て支援」を人生前半の社会保障としました。これに関しては30代40代から支持がある一方、20代からは「4分野とも充実させないで消費税増税分はすべて借金返済に充てるべし」との意見が強くなっており、通常国会での法案提出は先送りを示唆した格好になります。団塊ジュニア、ロスト・ジェネレーションはまたしても政治から切り捨てられました。

 その一方、安倍総理自体が受給者である難病対策では、潰瘍性大腸炎だけでなく他の病気にも広げる法案が通常国会で提出されることになり、対象の指定に関して、各種患者団体や製薬会社から自民党への働きかけが活発化しそうです。

 一方、前期高齢者(70歳から74歳)の病院窓口負担を1割から2割への引き上げですが、これは平成18年健康保険改正法(舛添法)で「本則2割」となっておりので、現在の暫定1割を、厚労省の一存で、2割にすれば対応できるようです。当然法案は国会に出ません。

 安倍晋三首相のもとで、1割から2割へと倍増することになります。ただ、これは年間2000億円もの巨費がかかっていましたし、69歳3割が70歳2割になれば、本人は安くなったという印象ですから、賛成です。やるべし。ただ、こういった生殺与奪の権を安倍ちゃんに握られていることをすべての日本国民は心しなければなりません。

【追記 2013年10月16日午後3時】

 社会保障制度改革プログラム法案は15日、国会に提出されました。法案全文と法案要旨のアドレスをおしらせします。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/185.html

【追記おわり】

 ◇

 以下、自民党政府の閣議決定全文です。

 1  
   社会保障制度改革推進法第4条の規定に基づく「法制上の措置」の 骨子について 
平成25 年8月21 日 閣議決定   
社会保障制度改革推進法(平成 24 年法律第 64 号)第4条の規定に基づ く「法制上の措置」に関し、 ① 同法第2条の基本的な考え方にのっとり、かつ、同法第2章に定める 基本方針に基づき、 ② 自らの生活を自ら又は家族相互の助け合いによって支える自助・自立 を基本とし、これを相互扶助と連帯の精神に基づき助け合う共助によっ て補完し、その上で自助や共助では対応できない困窮等の状況にある者 に対しては公助によって生活を保障するという考え方を基本に、 受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図るため講ず べき改革(以下「社会保障制度改革」という。)の推進に関する骨子につい て、社会保障制度改革国民会議の審議の結果等を踏まえ、次のとおり定め る。 政府は、本骨子に基づき、社会保障制度改革推進法第4条の規定に基づ く「法制上の措置」として、社会保障制度改革の全体像及び進め方を明ら かにする法律案を速やかに策定し、次期国会冒頭に提出する。  
一 講ずべき社会保障制度改革の措置等
  人口の高齢化が急速に進展する中で、活力ある社会を実現するために も、健康寿命の延伸により長寿を実現することが重要である。このため、 以下の社会保障制度改革を推進するとともに、個々人が自助努力を行う インセンティブを持てる仕組みや、サービスの選択肢を増やし、個人が 選択することができる仕組みを入れるなど、高齢者も若者も健康で、年 齢等にかかわりなく、働くことができ、持てる力を最大限に発揮して生
 

きることができる環境の整備に努めるものとする。あわせて、住民相互 の助け合いの重要性を認識し、これらの取組の推進を図るものとする。  
1.少子化対策
(1)急速な少子高齢化の進展の下で、社会保障制度を持続させていくた めには、その基盤を維持するための少子化対策を総合的かつ着実に実 施していく必要があることに鑑み、就労、結婚、妊娠、出産、育児等 の各段階に応じた支援を切れ目なく行い、子育てに伴う喜びを実感で きる社会を実現するため、子ども・子育て支援の量的拡充及び質の向 上を図る観点並びに仕事と子育ての両立支援を推進する観点から、次 に掲げる措置(待機児童解消加速化プランの実施に当たって必要とな るものを含む。)等を着実に実施する。 その際、全世代型の社会保障を目指す中で、少子化対策を全ての世 代に夢や希望を与える日本社会への投資であると認識し、幅広い観点 から取り組む。 ① 子どものための教育・保育給付及び地域子ども・子育て支援事業 の実施のために必要な措置 ② 保育緊急確保事業の実施のために必要な措置 ③ 社会的養護の充実に当たり必要となる児童養護施設等における養 育環境等の整備のために必要な措置
(2)平成27年度以降の次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120 号)の延長について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講 ずる。  
2.医療制度
高齢化の進展、高度な医療の普及等による医療費の増大が見込まれる 中で、国民皆保険制度を維持することを旨として以下のとおり、必要な 改革を行う。
(1)個人の選択を尊重しつつ、健康管理や疾病予防など自助努力を行う インセンティブを持てる仕組みの検討など、個人の主体的な健康の維
 

持増進への取組を奨励する。
(2)情報通信技術、レセプト等を適正に活用しつつ、事業主、地方公共 団体及び保険者等の多様な主体による保健事業の推進、後発医薬品の 使用の促進及び外来受診の適正化その他必要な措置を講ずる。
(3)医療従事者、医療施設等の確保及び有効活用等を図り、効率的で質 の高い医療提供体制を構築するとともに、今後の高齢化の進展に対応 し、地域包括ケアシステム(医療、介護、住まい、予防、生活支援サ ービスが身近な地域で包括的に確保される体制)を構築することを通 じ、地域で必要な医療を確保するため、次に掲げる事項その他診療報 酬に係る適切な対応の在り方等について検討を加え、その結果に基づ いて必要な措置を講ずる。 ① 病床の機能分化・連携及び在宅医療・在宅介護を推進するために 必要な次に掲げる事項 イ 病床機能に関する情報を都道府県に報告する制度の創設 ロ 地域医療ビジョンの策定及びこれを実現するために必要な措置 (必要な病床の適切な区分の設定、都道府県の役割の強化等) ハ 新たな財政支援の制度の創設 ニ 医療法人間の合併、権利の移転に関する制度等の見直し ② 地域における医師、看護職員等の確保及び勤務環境の改善等に係 る施策 ③ 医療職種の業務範囲及び業務の実施体制の見直し
(4)(3)に掲げる医療提供体制及び地域包括ケアシステムを構築するに 当たっては、個人の尊厳が重んぜられ、患者の意思がより尊重され、 人生の最終段階を穏やかに過ごすことができる環境の整備を行うよう 努める。
(5)次期医療計画の策定時期が平成 30 年度であることを踏まえ、(3) に掲げる必要な措置を平成29 年度までを目途に順次講ずる。その一環 としてこのために必要な法律案を平成 26 年通常国会に提出すること を目指す。
(6)持続可能な医療保険制度を構築するため、次に掲げる事項等につい て検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。
 

① 医療保険制度の財政基盤の安定化について次に掲げる措置 イ 国民健康保険(国保)の財政支援の拡充 ロ 国保の保険者、運営等の在り方に関し、保険料の適正化等の取 組を推進するとともに、イに掲げる措置により、国保の財政上の 構造的な問題を解決することとした上で、国保の運営業務につい て、財政運営を始めとして都道府県が担うことを基本としつつ、 保険料の賦課徴収、保健事業の実施等に関する市区町村の積極的 な役割が果たされるよう都道府県・市区町村で適切に役割分担す るために必要な措置 ハ 健康保険法等の一部を改正する法律(平成 25 年法律第 26 号) 附則第2条に規定する所要の措置 ② 保険料に係る国民の負担に関する公平の確保について次に掲げる 措置 イ 国保及び後期高齢者医療制度の低所得者の保険料負担を軽減す る措置 ロ 被用者保険者に係る後期高齢者支援金の全てを総報酬割とする 措置 ハ 所得水準の高い国民健康保険組合に対する国庫補助の見直し ニ 国保の保険料の賦課限度額及び被用者保険の標準報酬月額の上 限額の引上げ  ③ 保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等について次に掲げる 措置 イ 低所得者の負担に配慮しつつ行う、70 歳から 74 歳までの者の 一部負担金の取扱い及びこれと併せて検討する負担能力に応じた 負担の観点からの高額療養費の見直し ロ 医療提供施設相互間の機能の分担や在宅療養との公平の観点か らの外来・入院に関する給付の見直し
(7)次期医療計画の策定時期が平成 30 年度であることも踏まえ、(6) に掲げる必要な措置を平成26 年度から平成 29 年度までを目途に順次 講ずる。法改正が必要な措置については、必要な法律案を平成27年通 常国会に提出することを目指す。
(8)(6)に掲げる措置の実施状況等を踏まえ、高齢者医療制度の在り方 等について、必要に応じ、見直しに向けた検討を行う。
 

(9)難病対策に係る都道府県の超過負担の解消を図るとともに、難病及 び小児慢性特定疾患に係る公平かつ安定的な医療費助成の制度を確立 するため、必要な事項について検討を加え、その結果に基づいて必要 な措置を講ずる。
(10)(9)に掲げる必要な措置を平成26年度を目途に講ずる。このため に必要な法律案を平成26 年通常国会に提出することを目指す。  
3.介護保険制度
(1)個人の選択を尊重しつつ、介護予防など自助努力を行うインセンテ ィブを持てる仕組みの検討など、個人の主体的な取組を奨励する。
(2)低所得者を始めとする国民の保険料に係る負担の増大の抑制を図る とともに、給付範囲の適正化等による介護サービスの効率化及び重点 化を図りつつ、地域包括ケアシステムの構築を通じて必要な介護サー ビスを確保する観点から、次に掲げる事項その他介護報酬に係る適切 な対応の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措 置を講ずる。 ① 地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業の見直しによ る次に掲げる措置 イ 在宅医療及び在宅介護の連携の強化 ロ 高齢者の生活支援及び介護予防に関する基盤整備 ハ 認知症に係る施策 ② 地域支援事業の見直しと併せた地域の実情に応じた要支援者への 支援の見直し ③ 一定以上の所得を有する者の利用者負担の見直し ④ いわゆる補足給付の支給の要件に資産を勘案する等の見直し ⑤ 特別養護老人ホームに係る施設介護サービス費の支給対象の見直 し ⑥ 低所得の第一号被保険者の介護保険料の負担軽減
(3)第6期介護保険事業計画が平成27年度から始まることを踏まえ(、2) に掲げる必要な措置を平成27 年度を目途に講ずる。このために必要な 法律案を平成26 年通常国会に提出することを目指す。
 

(4)(2)に併せて、後期高齢者支援金の全てを総報酬割とする措置に係 る検討状況等を踏まえ、介護納付金の算定の方法を被用者保険者につ いては総報酬割とする措置について検討を加え、その結果に基づいて 必要な措置を講ずる。  
4.公的年金制度
年金生活者支援給付金の支給、基礎年金の国庫負担割合の2分の1へ の恒久的な引上げ、老齢基礎年金の受給資格期間の短縮、遺族基礎年金 の支給対象の拡大等の措置を着実に実施するとともに、次に掲げる事項 について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。 ① マクロ経済スライドに基づく年金給付の額の改定の在り方 ② 短時間労働者に対する厚生年金保険及び健康保険の適用範囲の拡大 ③ 高齢期における職業生活の多様性に応じ、一人一人の状況を踏まえ た年金受給の在り方 ④ 高所得者の年金給付の在り方及び公的年金等控除を含めた年金課税 の在り方の見直し ⑤ ①から④に掲げるもののほか、必要に応じ行う見直し  
二 改革推進体制
  一に掲げる社会保障制度改革の措置等を円滑に実施するとともに、引 き続き、社会保障制度改革推進法の基本的な考え方等に基づき、2025 年 を展望しつつ、中長期的に受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保 障制度を確立するための改革を総合的かつ集中的に推進するために必要 な体制を整備する。  
三 その他
1.財源の確保
一に掲げる措置については、関連する法律の施行により増加する消費 税及び地方消費税の収入並びに社会保障給付の重点化・効率化により必
 

要な財源を確保しつつ行う。 
2.地方公共団体等との協議
一に掲げる措置等のうち病床の機能分化、医師等の確保及び国保の見 直しに関する事項について必要な措置を講ずるに当たっては、これらの 事項が地方自治に重要な影響を及ぼすものであることに鑑み、地方六団 体等の関係者と十分に協議を行い、当該措置についてこれらの者の理解 を得ることを目指す。


配偶者の海外転勤同行休業法案を人事院提出へ 総論賛成だが、労働協約締結権が先だ

2013年08月21日 07時14分47秒 | 第184臨時国会(2013年8月)黄金の3年間

 斎木昭隆外務事務次官というと、夫婦そろって美形のオシドリ外交官ということで、外務省ですら嫉妬されるし、霞が関では当然嫉妬されることが多いのですが、国益のために強気なタフネゴシエーターであることは間違いないでしょう。ただ、オシドリ外交官が可能になるのは、外務省がそれを可能にする人事の道を整えていたからでしょう。

 人事院は、2013年8月8日に、安倍自民党内閣に意見書を提出。配偶者が海外転勤する国家公務員に最長3年間無報酬の「休業」を認める法案(国家公務員法改正法案?)が第185臨時国会に提出される可能性が高まりました。

 私が知っている限りでは、女性の厚生官僚の旦那さんが、X新聞横浜支局の記者だったのですが、同居できませんでした。その男性記者は、私に「政治部出身ならわかるでしょ」と、国会待機など厚生官僚の残業の多さを嘆いていました。ところで、この記者、「安倍総理大臣の名前で私に戦没者記念式典の招待状が来た」というコラムを書いていて、厚生省の取り込み方もうまいなと感じました。

 人事院は、結婚・事実婚に限らず、配偶者(民間人含む)の海外転勤に同行するときの休業と、その代わりの臨時職員の任用ができる制度を整えたい構え。総論は賛成です。ただ、官僚には、労働契約も、労働協約もありません。労働契約は使用者と労働者の個別の契約、労働協約は使用者と労働組合の取り交わし文書のことです。

 法律を改正すると天皇陛下が公布されます。その天皇の権威のもとに威張るのが官僚です。外務省は東宮を支配し、厚生省は皇居を支配しています。自律的労使関係もないくせに生意気だ。まさに現代の宦官といえるでしょう。時折、国会議員のブログに「労働者の党なのに、質問通告が遅い」との書き込みをする官僚がいます。これも、総論は賛成ですが、労働契約も労働協約もない自律的労使関係を持たない官僚は、24時間365日働かされても文句をいう権利はありません。質問通告など午前8時で十分です。

 このような法改正ではなく、民主党政権が出した、国家公務員制度関連4法案(人事院を廃止し労働協約締結権を付与する法案)を修正し、成立させるべきなのです。

 一人一人の国家公務員が連合傘下の労働組合員になる。

 それがすべてのスタートであり、そこから労働環境の改善が始まります。

 ディーセント・ワーク(まともな働き方)の官僚を増やして、皇居を厚生官僚から、東宮を外務官僚から救い出しましょう!


キャリア女性1985年夏の敗戦 タイピスト、翻訳、通訳など労働者派遣法「専門26業種」廃止へ

2013年08月21日 06時02分27秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

 2013年8月6日付で書いた「自民党政府、労働者派遣法改正法案を第186通常国会に提出へ 「40条の2」再改正」は多くの方にお読みいただいているところですが、きのう(2013年8月20日火)、この法案の基となる「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書」ができました。
 これに関する情報は、
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000015879.html
のホームページから取り出すことができます。

 1985年というと、竹下登先生が大蔵大臣としてプラザ合意を実現したバブル絶頂期。この第102通常国会では、男女雇用機会均等法(昭和60年法律第45号)」が昭和天皇によって6月1日に公布されました。

 そして、7月5日には「労働者派遣法が昭和60年法律88号として公布されました。

 これは自民党政権が男女雇用機会均等法とセットで、労働者派遣法により、女性大生にいわゆる総合職としてキャリアサラリーマンとして企業戦士の道を選ぶか、あるいは、通訳、翻訳、タイピスト、社長秘書として、派遣労働者になるかを迫るメニューの提示だったのでしょう。

 「育児休業・介護休業法」が公布されたのは、1991年5月15日法律76号として、今の天皇陛下によって公布されました。このころには、おそらく住友銀行は不動産融資から撤退しはじめ、バブル崩壊という言葉は世間にはありませんでしたが、後から指標を振り返ればバブルは崩壊しだしたころです。

 この1985年の男女雇用機会均等法とセットでつくるべき法律は、育児休業・介護休業法であったことは言うまでもなくこの6年間の遅れが日本社会を崩壊に追い込んだ、まさに「1985年夏の敗戦」としか言いようがありません。

 さて、報告書通りに、自民党が法律改正に成功すると、企業はある職種を人を変えれば、ずっと派遣労働者に任せ続けることができ、常用雇用の義務がなくなります。私は、来年の通常国会中に原発事故から3年が経つ東京電力が「原発廃炉業種」を派遣労働者にまかせっきりにするための法改正ではないかと考えます。

 専門26業種は実は法律ではありません。労働者派遣法施行令の第4条などに決まっています。「施行令」なので、事実上、厚労省官僚の一存で変えられるものです。

 専門26業種は次の通り。
(1)パソコンのシステム・プログラムの設計(SE)
(2)機械の設計・製図(CAD・CAM)
(3)放送番組の映像・音声機器の操作(カメラマン、サウンドマン)
(4)放送番組の制作における演出(ディレクター、アシスタントディレクター)
(5)事務用機器の操作
(6)通訳・翻訳・速記
(7)秘書
(8)ファイリング
(9)市場調査
(10)財務処理
(11)対外取引・国内取引の文書作成
(12)高度の専門知識が必要な機械の性能・操作方法の紹介・説明
(13)添乗員・旅行者送迎
(14)建築物の清掃
(15)建築設備の運転・点検・整備
(16)建築物・博覧会場の受付、案内(コンパニオン)
(17)科学に関する研究開発
(18)事業の実施体制の企画・立案
(19)書籍の制作編集
(20)商品・広告などのデザイン
(21)インテリアコーディネーター
(22)放送番組の原稿朗読・司会(アナウンサー、局アナ)
(23)OAインストラクション
(24)テレマーケッティング
(25)セールスエンジニアの営業
(26)放送番組における大道具・小道具などの制作・設置など。

  一見してわかるのが、テレビ局関係が多いということ。このため、派遣労働に関する報道は、新聞では熱心にされますが、テレビでは「現場の空気」から報道されない傾向があります。これはやむを得ないでしょう。この専門26業種で、けさの朝日新聞によると、現在64万人が働いているようです。

 もちろん労働組合法第7条などで、使用者(企業)は労働組合との団体交渉をしなければいけない義務がありますので、労働組合に入っている派遣労働者は、対等な関係で使用者と交渉できます。ただ、「人事に聞いても延長についてはっきり答えてもらえないので」という大手出版社の女性編集補助者が「雇用を延長してもらうために、今一生懸命、たくさんの新しい企画書を出している」と聞いて、その場にいた全員で沈黙してしまった経験もあります。やはり、労働組合に入るのが第一歩でしょう。

 まさに、労働者殺しの自民党。

 1985年法の施行直後から派遣労働をしている人を知っています。早稲田大学文学部卒の女性で、1990年代前半に私が学生時代に新進党衆議院総支部でアルバイト(兼)ボランティアをしていたころに働いておられました。私のイギリス議会史の先生が文学部でゼミを持っていたころのゼミ生だったそうで、初期のころから派遣労働をしており、学生時代の女性の友人と旅行したり、食事したりするのが楽しかったそうです。私の総支部はついに一度も当選できなかったのですが、平日に休みをとって、土曜日はだいたい出勤なのですが、土曜日だけ金ラメ入りのスーツを着て、先輩秘書から「あ、地が出てきましたね」とからかわれたり、事務所の運営の悪い面を、土曜日の帰宅の電車でこっそり教えてもらったりしました。その後、日本を代表する派遣事業者の設立にかかわり、現在は役員として活躍されているようです。その広告を見ると、日本を代表する御用会社と航空会社の共同出資子会社ということで、今も昔も変わらず、キャリア女性の心をくすぶる心理学が健在であることを感じます。

 高学歴の人は、学業熱心なら人ほど、政治家が敷いたレールにあっさり乗ってしまうので、時代の変化に対応できず、奴隷になっていきます。私も同年代のサラリーマンの奴隷ぶりには落胆しますが、同情はまったくしません。政治を変えてこそ、社会の一員です。当事者意識はいつでも持てるかもしれませんが、当事者能力は学生時代から当事者意識を持っていないと備わりません。「そなえよつねに」という国際的なボーイスカウト(ガールスカウト)運動で使われている考え方を支持したいところです。
 
 労働者派遣法は、民主党政権で「労働者派遣事業の適正な運営の確保および派遣労働者の保護にかんする法律」に名称が変わりましたが、実態は変わっていないようです。そして、自民党政権により経団連の要請をうけて、ふたたび労働者切り捨てが加速します。

 民主党がしっかりチェックしていかねばなりませんが、いかんせん、選挙に負けたしまったのでどうにもなりません。私は来週27日の連合の「職場から始めよう運動」のシンポジウムに行こうかと思って予約済みです。一人一人の労働者の駆け込み寺になれるような信頼と知識を一人一人の党員、一つ一つの総支部が身に着けなければ、3年後の政権復帰はありません。