【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

第189通常国会における政府4演説(2) 外交演説、財政演説、経済演説の全文

2015年02月12日 23時59分59秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

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[外務省ウェブサイトから全文引用はじめ]

岸田文雄外相の外交演説

第189回国会に当たり、外交の基本方針について所信を申し述べます。

総論

 最初に、シリアにおいて、非道、卑劣極まりないテロ行為により殺害された日本人お二人に哀悼の誠を捧げ、御家族に心からお悔やみを申し上げます。国民の皆様の祈りにも支えられ、政府として全力を尽くしましたが、このような結果となったことは痛恨の極みです。許しがたい暴挙に強い憤りを覚え、断固非難します。この間の国会における議員各位の御理解と御協力に深く感謝いたします。

 世界各地で、過激主義集団によるテロ行為が発生し、多くの無辜の市民が犠牲になっています。いかなる国もテロの脅威に無縁ではいられません。日本は、決してテロに屈することはありません。国内外の日本人の安全確保に万全を期すとともに、中東・アフリカへの人道支援を更に拡充し、また、国際社会におけるテロに対する取組にも毅然として責任を果たしてまいります。

 今回、国際社会から示された連帯に心から感謝いたします。ヨルダンを始め世界各国・各地からの連帯は、これまでの日本外交の積み重ねの賜であり、国際社会における日本の存在感の高まりと協力のネットワークの広がりを現すものです。

 世界各地のテロに象徴されるように、グローバル化と脅威の多様化が進捗しています。また、アジア太平洋地域の戦略環境は依然として厳しい状況にあります。どの国も一国のみで自国の平和、自国民の安全を守ることはできません。こうした状況であるからこそ、国際協調主義に基づく積極的平和主義の旗を高く掲げ、日本の安全保障を確実なものにし、世界の平和と繁栄のために国際社会の一員としての責務を果たす外交を、これまで以上に強力に推進してまいります。

 本年は戦後70年、国連創設70年の節目の年に当たります。20世紀の惨禍を二度と繰り返してはなりません。先の大戦の反省を踏まえ、日本は自由、民主主義、法の支配、市場経済、人権といった基本的価値を信奉し、国連を始めとする制度や体制を擁護してきました。先人たちの努力と国際的秩序の恩恵を受け、我々は今日の平和と繁栄を享受しています。平和国家としての日本の歩みは今後も変わることはありません。

 平和は単に戦争がない状態ではありません。日本は、人々が安全に、安心して豊かに暮らせることのありがたさを70年間実感してきました。自らの経験に裏打ちされた平和と繁栄を、地域と世界に広げていきたい。このため、日本は、アジアを始め世界各地で、開発、平和構築、国民和解、民主化に積極的に貢献し、軍縮・不拡散や環境といったグローバルな課題に主体的に取り組んできました。

 こうした平和国家としての日本の歩みを更に未来に進め、国際協調主義に基づく積極的平和主義を具体的に実践する外交に取り組んでまいります。

日本の安全の確保と繁栄の実現

 日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることへの対応も必要です。日本固有の領土・領海・領空は断固として守り抜くとの方針は不変であり、引き続き毅然かつ冷静に対応します。そして、国民の命と平和な暮らしを守り抜くとともに、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献するため、切れ目のない安全保障法制を整備する必要があります。国民の皆様の御理解を得るために、引き続き丁寧に説明を続けてまいります。

 本年も、これまでと同様、日米同盟の強化、近隣諸国との関係強化、そして経済外交の強化という三本柱を軸とした外交を強力に展開します。

 第一の柱は、日本外交の基軸である日米同盟の強化です。

 昨年4月、日米首脳は、平和で繁栄するアジア太平洋を確かなものにしていくために、日米同盟が主導的役割を果たすことを確認しました。今後も日米同盟をあらゆる分野で強化してまいります。

 安全保障分野においては、「日米防衛協力のための指針」見直しを始め、幅広い分野での安保・防衛協力を推進し、抑止力を一層向上させます。在日米軍再編を現行の日米合意に従って進めながら、沖縄の負担軽減に取り組みます。特に、普天間飛行場については、危険性の除去が極めて重要な課題であるとの認識の下、一日も早い移設に向けて政府として取り組みます。また、日米地位協定の環境補足協定署名に向けて、所要の作業を進めてまいります。

 第二の柱は、近隣諸国との関係強化です。

 日中関係は、最も重要な二国間関係の一つです。中国が国際社会のルールや法の支配を尊重する形で平和的発展を遂げることは、日本にとっても大きなチャンスです。昨年11月の北京APECでの首脳・外相会談の成果を踏まえ、「戦略的互恵関係」の原点に立ち戻り、様々なレベルで対話と協力を積み重ね、大局的な観点から日中関係を発展させてまいります。

 地域の平和と繁栄の確保という利益を共有する最も重要な隣国である韓国との関係強化は、日本にとり当然のことです。今後とも様々なレベルで積極的に意思疎通を積み重ね、大局的観点から、国交正常化50周年にふさわしい、未来志向で重層的な協力関係を、双方の努力により構築していきたいと考えています。また、経済関係の強化にも努めます。日本固有の領土である竹島については、引き続き日本の主張をしっかりと伝え、粘り強く対応します。

 さらに、日中韓3か国の協力を未来志向で強化するとともに、日中韓外相会議を早期に開催し、首脳会議の開催につなげられるよう、努力してまいります。

 より統合され繁栄し安定したASEANは、地域全体の平和と安定にとり極めて重要です。本年のASEAN共同体構築及び更なる統合に向けた努力を引き続き支援するとともに、ASEAN及びASEAN各国との関係を一層強化する考えです。

 特別な戦略的グローバル・パートナーシップの関係にあるインドとの協力強化を進め、南西アジア諸国との関係を深化させます。

 また、基本的価値と戦略的利益を共有する「特別な関係」にある豪州との間で、二国間及び日米豪3か国の枠組みでの安保・防衛分野における協力を進めるとともに、日豪EPAを通じた経済関係の強化等をより一層促進します。

 また、5月の第7回太平洋・島サミットの開催を通じ、太平洋島嶼国との協力関係を一層深化させます。

 日露関係については、本年の適切な時期に実現を目指しているプーチン大統領の訪日を含め、今後政治対話を積み重ねつつ、日本の国益に資するよう進めてまいります。最大の懸案である北方領土問題については、引き続き、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべく、粘り強く交渉に取り組んでまいります。また、ウクライナ情勢の平和的解決に向け、全ての当事者の対話努力を促すとともに、ロシアが建設的役割を果たすよう働きかけてまいります。日本としても、ウクライナの改革努力を引き続き支援していきます。

 北朝鮮に関しては、「対話と圧力」の方針の下、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決を目指します。北朝鮮による核・ミサイル開発の継続は、地域と国際社会全体の平和と安全に対する重大な脅威です。関係国と連携しつつ、北朝鮮に対し、安保理決議及び六者会合共同声明の誠実かつ完全な実施を引き続き強く求めます。北朝鮮が、国際社会の声を真摯に受け止め、人権状況の改善に向けた具体的行動を取ることを引き続き強く求めます。拉致問題は、日本の主権及び国民の生命・安全に関わる重大な問題であり、政権の最重要課題です。北朝鮮による調査が、全ての拉致被害者の帰国という具体的な成果につながるよう、全力を尽くします。

 欧州各国、EUやNATO等との協力関係を、重層的に強化します。特に、英国及びフランスと安保・防衛分野の協力を推進していきます。

 また、中南米諸国と国際場裏での協力関係を含む幅広い関係強化を図ります。

 第三の柱は、日本経済の再生に資する経済外交の強化です。

 日本経済の再生と発展に資する戦略的な経済外交を引き続き推進します。国際市場において日本企業が存分に活躍できるよう、トップセールスやODAの活用も含め官民一体で推進します。地方創生に資する取組を強化する観点からも、日本産品の海外普及促進や風評被害対策に引き続き力を入れてまいります。また、経済面での国際ルール整備のため、WTOやOECD、APEC、主要国首脳会議等の議論に積極的に参画します。

 さらに、TPPを始めとする経済連携交渉を、国益にかなった、包括的かつ高いレベルで戦略的かつスピード感をもって推進します。

 エネルギー・鉱物資源・食料等の安定確保のため、資源外交を強化します。

 鯨類を含む海洋生物資源の持続可能な利用について、国際社会の理解と支持を得るべく一層努力します。

海外における日本人の安全対策と国際的なテロ対策の強化

 今回のシリアにおける邦人人質殺害事件を受け、従来の取組に加え、在留邦人への注意喚起、日本人学校との連絡強化や現地治安当局への警備強化申し入れ、危険情報の発出などを行いました。その上で、海外に在留・渡航する日本人の安全確保に更に万全を期すための検討チームを立ち上げ、考え得る具体的な措置について早急にとりまとめます。

 また、テロと闘う国際社会において、日本としての責任を果たすとともに、日本の立場を積極的に対外発信していきます。さらに、テロ関連情報の収集を一層強化してまいります。

 中東地域においては、ISILの脅威がある中で、「中庸が最善」の精神に裏打ちされた、安定した中東を取り戻すことが急務です。過激主義の流れを食い止めるべく、穏健イスラム諸国に対し可能な限りの非軍事の支援を行います。

グローバルな課題への一層の貢献

 外交の三本柱を推進するのと合わせて、国際社会が直面するグローバルな課題についても、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、引き続き積極的に貢献してまいります。

 国連創設70年の節目の年に当たり、国連との連携をより一層強化します。

 日本は、国連が21世紀にふさわしい姿となるよう、常任理事国の責務を担う用意があり、インド、ドイツ、ブラジルとともに、安保理改革実現に向けてリーダーシップを発揮してまいります。また、本年の安保理非常任理事国選挙に万全を期します。

 国連PKOへの貢献を一層拡大し、平和維持・平和構築を推進します。

 国際機関の日本人職員の増強にも努めます。

 本年は被爆70年でもあります。唯一の戦争被爆国として、NPT運用検討会議での議論を主導し、「核兵器のない世界」を目指して現実的、実践的な取組を前進させます。

 気候変動分野では、COP21における全ての国が参加する公平かつ実効的な2020年以降の国際枠組みの合意に向け、積極的に貢献します。この一環として、緑の気候基金に拠出を行うため、「緑の気候基金法案」を今国会に提出します。

 「女性が輝く社会」の実現は、世界共通の課題です。21世紀こそ女性に対する人権侵害のない世界となるよう貢献してまいります。今年も「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム(WAW!)」を開催します。

 ポスト2015年開発アジェンダ策定に向けた議論に、積極的に貢献してまいります。人間の安全保障の理念に基づき、国際保健課題や防災等に対処し、多様な主体が参加する枠組みの策定を目指します。3月には、仙台で第3回国連防災世界会議を開催し、防災の主流化と被災地の復興の発信に取り組みます。

 新たな開発協力大綱の下、ODAを戦略的に活用することにより、国際社会の平和と安定及び繁栄に一層積極的に寄与してまいります。特に、ODAを通じた官民連携を一層推進します。

 成長著しいアフリカとのパートナーシップを、TICADプロセスを中心に一層強化します。エボラ出血熱の流行に対し、引き続き、切れ目なき支援を実施します。

 海洋、宇宙空間、サイバー空間を含む国際公共財における「法の支配」の実現や強化に尽力します。「海における法の支配の三原則」に基づき、「開かれ安定した海洋」の維持・発展に、主要国・関係国と連携し、取り組んでまいります。

総合的な外交力及び戦略的対外発信の強化

 主要国並みの外交実施体制の実現を目指し、総合的な外交力を引き続き強化してまいります。国際社会での存在感を一層高めるよう、予算を効果的に活用し、日本の「正しい姿」や多様な魅力を戦略的に対外発信するとともに、親日派・知日派の発掘・育成を強力に推進します。主要国における広報文化外交拠点、ジャパン・ハウスの創設を推進します。また、日系人との協力の強化にも注力します。

結句

 この2年間の様々な外交成果は、オールジャパンで取り組み、世界各国との信頼関係を一つ一つ積み重ねてきたからこそ得られたものです。そして、国と国との関係である外交を支えるのは、結局のところ、人と人との絆です。今後も精力的に各国外相等と意思疎通を図り、絆を大切にしながら、この2年間培った信頼関係を基に外交を進め、一つ一つの外交課題で着実に結果を出してまいります。

 議員各位そして国民の皆様の御理解と御協力を心よりお願い申し上げます。

[全文引用おわり]


[財務省ウェブサイトから全文引用はじめ] 

第189回国会における麻生財務大臣の財政演説

平成27年2月12日

平成二十七年度予算の御審議に当たり、財政政策等の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。

(日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方)

安倍内閣では、日本経済の再生に向けて、「三本の矢」からなる経済運営を一体的に推進してまいりました。こうした政策の下、有効求人倍率は二十二年ぶりの高水準となり、企業の経常利益は過去最高水準となるなど、「経済の好循環」が確実に生まれつつあります。そして「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」を実施し、足元の景気状況に対応しつつ、地方に経済成長の成果を広く早く行き渡らせてまいります。

これに加え、三年目に入った安倍内閣の重要課題として、人口減少の克服と地方の創生に本格的に取り組み、各地域がそれぞれの特徴を生かして、自律的で持続的な社会を形成することを促してまいります。

また、経済の好循環を確立するためには、昨年末の政労使会議における三者の共通認識を踏まえ、賃上げの流れを継続するとともに、生産性の向上や賃金体系の見直しを進めていくことが重要です。

あわせて、コーポレートガバナンスの強化や法人税改革、岩盤規制の撤廃など、攻めの姿勢で成長戦略を果断に実行していくことで、日本経済を確実な成長軌道に乗せてまいります。

民需主導の持続的な経済成長を実現するためにも、また、日本銀行が現在取り組んでいる金融緩和を円滑に進める上でも、財政の持続可能性を維持することは必要不可欠です。

安倍内閣におきましては、経済成長に加え、歳出・歳入両面からの取組により、着実に財政健全化を進めてまいりました。このため、歳入面では、強い経済の実現を目指した取組を進めることにより、税収を増加させるとともに、社会保障の充実・安定化のため昨年四月に消費税率を八%に引き上げました。また、歳出面では、社会保障の「自然増」を含め、歳出全般にわたり聖域なく徹底的な見直しを行ってまいりました。こうした取組により、平成二十七年度予算は、国債発行額が平成二十一年度当初予算以来の三十兆円台となり、公債依存度は約三十八%に下がるとともに、二○一五年度の財政健全化目標を達成する予算となっております。

一方で、公的債務残高がGDPの二倍程度までに累積するなど、日本の財政は、極めて厳しい状況にあります。引き続き、歳出・歳入両面における最大限の努力を行わなければなりません。

消費税率の一〇%への引上げは、経済状況等を総合的に勘案し一年半延期することといたしましたが、社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場及び国際社会における国の信認を確保するため、景気判断条項を付すことなく、平成二十九年四月に消費税率の一〇%への引上げを確実に実施いたします。そうした状況をつくり出すという決意の下、経済運営に万全を期してまいります。

そして、国と地方を合わせた基礎的財政収支を二〇二〇年度までに黒字化するという目標をしっかりと堅持し、その達成に向けた具体的な計画を本年夏までに策定することとしております。その策定に当たっては、安倍内閣のこれまでの取組をさらに強化し、デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革の三つの柱を軸に検討を進めてまいります。

これらの取組を通じて、経済再生と両立する財政健全化を実現してまいります。

 

(平成二十七年度予算及び税制改正の大要)

続いて、平成二十七年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。

 

平成二十七年度予算は、経済対策・平成二十六年度補正予算や平成二十七年度税制改正とあわせ、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算です。地方創生、子育て支援など、日本の諸課題への対応を強力に推進するとともに、社会保障の「自然増」を含め聖域なく見直しを行い、歳出の徹底的な重点化・効率化を図っております。

 

基礎的財政収支対象経費は、約七十二兆九千億円であり、これに国債費約二十三兆五千億円を加えた一般会計総額は、約九十六兆三千億円となっております。

 

一方、歳入につきましては、租税等の収入は、約五十四兆五千億円、その他収入は、約五兆円を見込んでおります。また、公債金は、約三十六兆九千億円となっており、前年度当初予算に対し、約四兆四千億円の減額を行っております。

 

次に、主要な経費について申し述べます。

 

社会保障関係費につきましては、消費税増収分等を活用し、平成二十七年四月から子ども・子育て支援新制度をスタートさせます。また、医療・介護サービスの提供体制改革を推進いたします。介護サービス料金改定に際しては、介護職員の処遇改善や良好なサービスに対する加算を行いつつ、全体としては引き下げることで、介護保険料の上昇を抑制し、利用者の負担を軽減いたします。

 

文教及び科学振興費につきましては、グローバル人材育成や国立大学改革等を推進するとともに、無利子奨学金や幼稚園就園奨励費補助等の施策を充実させることとしております。また、国際的な産学官共同研究拠点の形成等のイノベーションシステム改革を推進してまいります。

 

地方財政につきましては、地方の税収増を反映して地方交付税交付金等を縮減しつつ、地方の一般財源の総額について、社会保障の充実分等を増額し、地方に最大限配慮しております。

 

防衛関係費につきましては、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している状況を踏まえ、中期防衛力整備計画に基づき必要な手当を行い、警戒監視能力の強化及び島嶼部攻撃への対応の強化等を図ることとしております。また、沖縄の基地負担軽減等のための在日米軍再編事業につきましても、着実に推進することとしております。

 

公共事業関係費につきましては、国民の命と暮らしを守る防災・減災対策やインフラの老朽化等の課題に対応するため、引き続き投資の重点化・効率化を図りつつ、真に必要な社会資本整備等に取り組むこととしております。

 

経済協力費につきましては、法の支配や民主化等の普遍的価値の共有に向けた協力や途上国と日本の経済成長のための協力などを進めつつ、ODA全体の事業量の確保を図っております。

 

中小企業対策費につきましては、革新的なものづくりに向けた研究開発等の支援を充実させるほか、中小企業・小規模事業者の資金繰り対策等にも万全を期することとしております。

 

エネルギー対策費につきましては、再生可能エネルギーの導入拡大及び省エネルギーの推進に向けた支援に重点を置くほか、国内資源の開発や海外資源の権益確保、原子力規制・防災対策を推進することとしております。

 

農林水産関係予算につきましては、農地中間管理機構を通じた担い手への農地集積・集約化などの構造改革を進めるとともに、輸出促進、六次産業化の推進等、農林水産業の競争力強化策への重点化を図ることとしております。

 

治安関係予算につきましては、安全で安心して暮らせる社会の実現に向けて、警察活動基盤の充実や再犯防止対策の充実等を図ることとしております。

 

国家公務員の人件費につきましては、給与改定や給与制度の総合的見直し、定員純減等を的確に予算に反映しております。

 

東日本大震災からの復興につきましては、被災地の復旧・復興の加速に全力で取り組んでいくこととしております。このため、平成二十七年度東日本大震災復興特別会計において、歳出歳入いずれも約三兆九千億円を見込んでおります。

 

平成二十七年度財政投融資計画につきましては、中小企業・小規模事業者や地方公共団体などに必要な資金を適切に供給するため、総額約十四兆六千億円としております。

 

借換債等を含む国債発行総額につきましては、約百七十兆円と、依然として極めて高い水準にあり、財政規律を維持しつつ、国債管理政策を適切に運営してまいります。

 

平成二十七年度税制改正におきましては、デフレ不況からの脱却・経済再生に向けた税制上の対応、地方創生に係る税制上の対応、消費税率一〇%への引上げ時期の変更、BEPSプロジェクト等の国際的取組を踏まえた税制上の対応、震災からの復興支援のための税制上の対応等を行うこととしております。

具体的には、成長志向に重点を置いた法人税改革として、課税ベースを拡大して税率を引き下げることで、企業が収益力を高め、賃上げに積極的に取り組むよう促してまいります。消費税につきましては、税率一〇%への引上げ時期を平成二十九年四月とすること等としております。さらに、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税制度の延長・拡充や地方拠点強化税制の創設等を行うこととしております。

 

(むすび)

以上、財政政策等の基本的な考え方と、平成二十七年度予算及び税制改正の大要について御説明申し上げました。

経済再生と財政健全化の両立を実現するためには、本予算の一刻も早い成立が必要であります。

何とぞ御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

 

安倍内閣におけるこれまでの取組が実を結び、日本経済及び日本国民は希望と自信を取り戻しつつあります。しかし、経済再生も財政健全化もこれからが正念場です。それらを実現するためには、日本の潜在的な力を開花させ、グローバル化や人口減少の下で日本や地域が直面する課題に、国民一人一人が知恵を絞り、一致協力して乗り越えていくことが鍵となります。私も全精力を注ぎ、不退転の決意で挑戦を続けてまいります。

 

国民各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。

[全文引用おわり]

[内閣府ウェブサイトから全文引用はじめ] 

第百八十九回国会における甘利内閣府特命担当大臣(経済財政政策)の経済演説

 平成二十七年二月十二日

一.はじめに 経済財政政策を担当する内閣府特命担当大臣として、その所信を申し述べます。

二.経済財政運営の基本的考え方 (景気の現状認識と今後の見通し) 安倍内閣では、長引くデフレからの早期脱却と経済再生を図るため、「大胆な金融政策」、「機動的な財 政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の「三本の矢」を一体として強力に推進してきました。こうした政策の下、有効求人倍率は二十二年ぶりの高水準、名目雇用者報酬が十七年ぶりの高い伸びとなるとと もに、企業の経常利益は過去最高水準、上場企業のROE(自己資本利益率)は政権発足時の約一・五倍 となり、倒産件数は二十四年ぶりに年間一万件を下回りました。日本経済は引き続き緩やかな回復基調が 続いていますが、足下では、個人消費などに弱さがみられています。この背景には、消費税率引上げに伴 う駆け込み需要の反動減や夏の天候不順の影響に加え、輸入物価の上昇、さらには、消費税率引上げの影 響を含めた物価の上昇に家計の所得が追い付いていないことなどがあると考えられます。 本日閣議決定した政府経済見通しでは、平成二十七年度の日本経済について、雇用・所得環境が引き続 き改善し、好循環が更に進展するとともに、原油価格低下などにより交易条件も改善する中で、堅調な民 需に支えられた景気回復が見込まれ、経済成長率は実質で一・五パーセント程度、名目で二・七パーセン ト程度と見込んでいます。 一(当面の経済財政運営) 現下の経済情勢等を踏まえ、経済の脆弱な部分に的を絞り、かつ、スピード感を持って対応を行うこと 年 で、経済の好循環を確かなものとするとともに、地方にアベノミクスの成果を広く行き渡らせるため、昨 十二月末に「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」を閣議決定しました。 本緊急経済対策は、現下の経済情勢等を踏まえた生活者・事業者への支援、地方が直面する構造的課題 等への実効ある取組を通じた地方の活性化、災害復旧・復興加速化など災害・危機等への対応などを内容 としており、策定の趣旨に鑑み、スピード感を持って具体化を図ってまいります。 また、政労使会議において、政府の環境整備の取組の下、経済界による賃上げへの最大限の努力や、取 引企業の仕入れ価格の上昇などを踏まえた価格転嫁や支援・協力についての総合的取組、労使双方による サービス業の生産性向上への一致協力した取組などに合意しました。今後もフォローアップを行うことに より、 賃上げの流れを今年の春も、 また翌年の春も継続させ、 経済の好循環の拡大を目指してまいります。 日本銀行においては、昨年十月に「量的・質的金融緩和」の拡大を決定するなど、二パーセントの「物 価安定の目標」を実現するための取組を進めているところです。政府としては、経済・物価情勢を踏まえ つつ、この目標を実現することを期待します。 (成長戦略の実行・実現) 二安倍内閣が進める成長戦略については、スピード感を持って、強力に実行・実現していくことが極めて 重要です。 このため、昨年十二月末、日本経済再生本部において、 「アベノミクス成長戦略の実行・実現について」 かに具体化し、実行・実現する方針を取りまとめました。さらに、産業競争 雇用、医療、エネルギー等のいわゆる岩盤規制の改革を始めとして、成長戦略に掲げられた各施策を速や として、 我が国の社会経済の構造を変革し、 世界で最もイノベイティブな国となるよう目指すため、 農業、 力強化法に基づき、 「産業競 争力の強化に関する実行計画」の改定を閣議決定したところであり、成長戦略の各施策の確実な実行に取 り組んでまいります。また、法人税を成長志向型の構造に変えるため、平成二十七年度には、法人実効税 率を二・五一パーセント引き下げることとし、引き続き、数年で法人実効税率を二十パーセント台まで引 き下げることを目指してまいります。 健康・医療については、日本医療研究開発機構の本年四月の設立に向けて必要な準備を進めるなど、先 般、閣議決定された「健康・医療戦略」を着実に推進してまいります。 一昨年の「日本再興戦略」策定以降、先の臨時国会までに、四十本を超える成長戦略関連法が成立しま 法案を した。これらの法律をしっかりと実行するとともに、引き続き、本通常国会でも成長戦略の実行に必要な 提出してまいります。 また、産業競争力会議で成長戦略進化のための検討を進め、年央の成長戦略の改訂を目指してまいりま す。 三さらに、民間投資の喚起による経済成長の実現のため、PPP/PFIの抜本改革に向けたアクション プランの実行を加速してまいります。 市民活動の促進については、地域の課題解決や活性化の重要な担い手であるNPOの育成や寄附文化の (TPPの推進) 醸成等を通じ、活力あふれる共助社会づくりを進めてまいります。 TPPは、アジア太平洋地域において、普遍的価値を共有する国々と、二十一世紀型の新たな経済統合 ルールを構築する野心的な試みであり、この地域の成長の起爆剤になり、人々の暮らしを豊かにすると同 時に、我が国経済の発展にも寄与するものです。 昨年十一月に、北京で開催されたTPP首脳会合及び閣僚会合では、交渉の終局が明確になりつつある ことが確認され、早期妥結に向けた大きなモメンタムができました。 我が国としては、交渉の早期妥結へ向けて努力し、国益をしっかりと最終的な成果に反映すべく全力を 挙げて交渉に取り組んでまいります。 (経済再生と財政健全化の両立に向けた取組) 強い経済は、日本の国力の源泉です。これまで述べた施策を着実に実施することにより、経済の好循環 を確かなものとし、消費税率の十パーセントへの引上げを平成二十九年四月に確実に実施してまいります。 四引き続き経済再生との両立を図りながら、財政健全化の取組も着実に進めてまいります。来年度予算案 においては、新規国債発行額を六年ぶりに三十兆円台とし、国の一般会計の基礎的財政収支が今年度より 四・六兆円改善しました。国と地方を合わせた基礎的財政収支赤字対GDP比半減目標の達成も見込まれ ます。財政健全化に向けて着実に前進しており、今後も歳出・歳入両面の取組を進めてまいります。二〇 二〇年度までに国と地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化するという財政健全化目標の達成に向け、経 済再生と財政健全化の両立を実現すべく、経済財政諮問会議において検討を進め、具体的な計画を本年夏 (社会保障・税一体改革の推進) までに策定してまいります。 少子高齢化が進展する中で、社会保障の安定財源確保と財政健全化を同時に達成する観点から、引き続 き、社会保障・税一体改革に取り組みます。来年度予算案においては、子ども・子育て支援を始め社会保 障の充実について、可能な限り予定通り実施することとしております。また、世界に誇るべき社会保障制 度を次世代に引き渡していく責任を果たすため、平成二十九年四月には確実に消費税率十パーセントへの 引上げを実施するとともに、社会保障制度改革のスケジュールに沿って社会保障の充実・安定化に取り組 むなど、改革を推進してまいります。さらに、医療・介護情報の「見える化」を進め、各地域の状況を比 較した結果も踏まえて支出の効率化・適正化を図るとともに、有識者からなる社会保障制度改革推進会議 において、二〇二五年を展望した中長期的な改革の検討を進めてまいります。 五三.むすび 安倍内閣の至上命題は、十五年以上にわたって日本を苦しめてきたデフレからの脱却を図るとともに、 経済再生と財政健全化の両立を実現することです。そのためには、企業収益の拡大が賃金の上昇や雇用の を 拡大につながり、消費の拡大や投資の増加を通じて更なる企業収益の拡大に結び付くという経済の好循環 力強く回転させていく必要があります。 本年はまさに正念場の年であり、これまで以上にアベノミクスを強力に推進・展開することにより、全 国 国民の皆様と議員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。 津々浦々まで景気回復を実感していただけるよう、全力を尽くしてまいります。

[全文引用おわり] 


岡田克也代表「総理は自分に酔っている」改革断行国会の具体性無さ指摘 施政方針など政府4演説全文(1)

2015年02月12日 23時59分58秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

(このエントリーの初投稿日時は2015年2月13日午前8時で、そこからバックデート)

【画像】政府4演説にのぞむ、民主党の岡田克也現代表(2010年1月29日)と自民党総裁の安倍晋三現首相(2015年2月12日)、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

【衆議院本会議および参議院本会議 平成27年2015年2月12日(木)】


 平成27年度予算書3冊が国会に提出され、午後、政府4演説が行われました。

 これについて、民主党の岡田克也代表(ネクスト総理)は同日夜メッセージを発信し、

 「戦後以来の大改革だ、ということを総理は何度も強調されました。しかし、具体的に何をどう改革するのかということは(略)触れられませんでした」

 として、第3次安倍内閣の腰抜けぶりを批判しました。

 そのうえで、岡田さんは「もう少し総理も構えを大きくして、いろいろな意見に対して、それを受け止め、そして必要なものは取り入れていく姿勢を示されたほうがよかったのではないかと思います。自分だけが戦後以来の大改革をやるんだと、自分に酔っている感じすらする

 と痛烈に批判しました。 

 岡田さんは空けて、月曜日、2月26日の衆議院本会議で、10年ぶりの代表質問演説に臨みます。

  さらに、翌週の衆議院予算委員会にも登場し、あたかも、桶狭間のたたかいのときの織田信長のごとく、自ら先陣を切ります。
 
私としても、永年在職表彰を受けるものとばかりと思っていましたが、それよりは、なおも現役で代表質問演説に登壇することになって、一眼レフ購入代金も浮いたし、ラッキーだなと感じています。 

 安倍晋三首相(自民党総裁)の施政方針演説の全文は次のとおり。

 gooブログのシステムは2万文字までなので、外交演説、財政演説、経済演説は別エントリーで。

[首相官邸ウェブサイトから全文引用はじめ]


安倍晋三首相の第189通常国会における施政方針演説

まず冒頭、シリアにおける邦人殺害テロ事件について、一言、申し上げます。

 事件発生以来、政府はあらゆる手段を尽くしてまいりましたが、日本人がテロの犠牲となったことは、痛恨の極みであります。衷心より哀悼の誠を捧げるとともに、御家族に心からお悔やみを申し上げます。

 非道かつ卑劣極まりないテロ行為を、断固非難します。

 日本がテロに屈することは決してありません。水際対策の強化など、国内外の日本人の安全確保に、万全を期してまいります。そして食糧、医療などの人道支援。テロと闘う国際社会において、日本としての責任を、毅然として、果たしてまいります。

 

一 戦後以来の大改革

 「日本を取り戻す」

 そのためには、「この道しかない」

 こう訴え続け、私たちは、二年間、全力で走り続けてまいりました。

 先般の総選挙の結果、衆参両院の指名を得て、引き続き、内閣総理大臣の重責を担うこととなりました。

 「安定した政治の下で、この道を、更に力強く、前進せよ。」

 これが総選挙で示された国民の意思であります。全身全霊を傾け、その負託に応えていくことを、この議場にいる自由民主党及び公明党の連立与党の諸君と共に、国民の皆様にお約束いたします。

 経済再生、復興、社会保障改革、教育再生、地方創生、女性活躍、そして外交・安全保障の立て直し。

 いずれも困難な道のり。「戦後以来の大改革」であります。しかし、私たちは、日本の将来をしっかりと見定めながら、ひるむことなく、改革を進めなければならない。逃れることはできません。

 明治国家の礎を築いた岩倉具視は、近代化が進んだ欧米列強の姿を目の当たりにした後、このように述べています。

 「日本は小さい国かもしれないが、国民みんなが心を一つにして、国力を盛んにするならば、世界で活躍する国になることも決して困難ではない。」

 明治の日本人に出来て、今の日本人に出来ない訳はありません。今こそ、国民と共に、この道を、前に向かって、再び歩み出す時です。皆さん、「戦後以来の大改革」に、力強く踏み出そうではありませんか。

二 改革断行

(農家の視点に立った農政改革)

 戦後一千六百万人を超えていた農業人口は、現在、二百万人。この七十年で八分の一まで減り、平均年齢は六十六歳を超えました。もはや、農政の大改革は、待ったなしであります。

 何のための改革なのか。強い農業を創るための改革。農家の所得を増やすための改革を進めるのであります。

 六十年ぶりの農協改革を断行します。農協法に基づく現行の中央会制度を廃止し、全国中央会は一般社団法人に移行します。農協にも会計士による監査を義務付けます。意欲ある担い手と地域農協とが力を合わせ、ブランド化や海外展開など農業の未来を切り拓く。そう。これからは、農家の皆さん、そして地域農協の皆さんが主役です。

 農業委員会制度の抜本改革にも、初めて、踏み込みます。地域で頑張る担い手がリードする制度へと改め、耕作放棄地の解消、農地の集積を一層加速いたします。

 農業生産法人の要件緩和を進め、多様な担い手による農業への参入を促します。いわゆる「減反」の廃止に向けた歩みを更に進め、需要ある作物を振興し、農地のフル活用を図ります。市場を意識した競争力ある農業へと、構造改革を進めてまいります。

 「変化こそ唯一の永遠である。」

 明治時代、日本画の伝統に新風を持ち込み、改革に挑んだ岡倉天心の言葉です。

 伝統の名の下に、変化を恐れてはなりません。

 農業は、日本の美しい故郷を守ってきた、「国の基(もとい)」であります。だからこそ、今、「変化」を起こさねばならない。必ずや改革を成し遂げ、若者が自らの情熱で新たな地平を切り拓くことができる、新しい日本農業の姿を描いてまいります。

 目指すは世界のマーケット。林業、水産業にも、大きな可能性があります。昨年、農林水産物の輸出は六千億円を超え、過去最高を更新いたしました。しかし、まだまだ少ない。世界には三百四十兆円規模の食市場が広がっています。内外一体の改革を進め、安全で、おいしい日本の農水産物を世界に展開してまいります。

(オープンな世界を見据えた改革)

 オープンな世界へと果敢に踏み出す。日本の国益を確保し、成長を確かなものとしてまいります。

 最終局面のTPP交渉は、いよいよ出口が見えてまいりました。米国と共に交渉をリードし、早期の交渉妥結を目指します。欧州とのEPAについても、本年中の大筋合意を目指し、交渉を更に加速してまいります。

 経済のグローバル化は一層進み、国際競争に打ち勝つことができなければ、企業は生き残ることはできない。政府もまた然(しか)り。オープンな世界を見据えた改革から逃れることはできません。

 全ての上場企業が、世界標準に則った新たな「コーポレートガバナンス・コード」に従うか、従わない場合はその理由を説明する。その義務を負うことになります。

 法人実効税率を二・五%引き下げます。三十五%近い現行税率を数年で二十%台まで引き下げ、国際的に遜色のない水準へと法人税改革を進めてまいります。

(患者本位の医療改革)

 患者本位の新たな療養制度を創設します。世界最先端の医療を日本で受けられるようにする。困難な病気と闘う患者の皆さんの思いに応え、その申出に基づいて、最先端医療と保険診療との併用を可能とします。更に、安全性、有効性が確立すれば、国民皆保険の下で保険適用としてまいります。

 医療法人制度の改革も実施します。外部監査を導入するなど、経営の透明化を進めます。更に、異なる機能を持つ複数の医療法人の連携を促す新たな仕組みを創設し、地域医療の充実に努めます。

(エネルギー市場改革)

 電力システム改革も、いよいよ最終段階に入ります。電力市場の基盤インフラである送配電ネットワークを、発電、小売から分離し、誰もが公平にアクセスできるようにします。ガス事業でも小売を全面自由化し、あらゆる参入障壁を取り除いてまいります。競争的で、ダイナミックなエネルギー市場を創り上げてまいります。

 低廉で、安定した電力供給は、日本経済の生命線であります。責任あるエネルギー政策を進めます。

 燃料輸入の著しい増大による電気料金の上昇は、国民生活や中小・小規模事業の皆さんに大きな負担となっています。原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた原発は、その科学的・技術的な判断を尊重し、再稼働を進めます。国が支援して、しっかりとした避難計画の整備を進めます。立地自治体を始め関係者の理解を得るよう、丁寧な説明を行ってまいります。

 長期的に原発依存度を低減させていくとの方針は変わりません。あらゆる施策を総動員して、徹底した省エネルギーと、再生可能エネルギーの最大限の導入を進めてまいります。

 安倍内閣の規制改革によって、昨年、夢の水素社会への幕が開きました。全国に水素ステーションを整備し、燃料電池自動車の普及を加速させます。大規模な建築物に省エネ基準への適合義務を課すなど、省エネ対策を抜本的に強化してまいります。

 安全性、安定供給、効率性、そして環境への適合。これらを十分に検証し、エネルギーのベストミックスを創り上げます。そして世界の温暖化対策をリードする。COP二十一に向け、温室効果ガスの排出について、新しい削減目標と具体的な行動計画を、できるだけ早期に策定いたします。

(改革推進のための行政改革)

 各般の改革を進めるため、行政改革を、併せ、断行いたします。

 歴代内閣で肥大化の一途を辿(たど)ってきた、内閣官房・内閣府の事務の一部を各省に移管し、重要政策における内閣の総合調整機能が機動的に発揮できるような体制を整えます。

 十七の独立行政法人を七法人へと統合します。私たちが進める改革は、単なる数合わせではありません。攻めの農業を始め諸改革を強力に進めていくための統合であります。金融庁検査の導入など、法人毎の業務の特性に応じたガバナンス体制を整備し、独立行政法人の政策実施機能を強化してまいります。

 四月から日本医療研究開発機構が始動します。革新的ながん治療薬の開発やiPS細胞の臨床応用などに取り組み、日本から、医療の世界にイノベーションを起こします。

 日本を「世界で最もイノベーションに適した国」にする。世界中から超一流の研究者を集めるため、世界最高の環境を備えた新たな研究開発法人制度を創ります。ITやロボット、海洋や宇宙、バイオなど、経済社会を一変させる挑戦的な研究を大胆に支援してまいります。

(改革断行国会)

 「知と行は二つにして一つ」

 何よりも実践を重んじ、明治維新の原動力となる志士たちを育てた、吉田松陰先生の言葉であります。

 成長戦略の実行。大胆な規制改革によって、生産性を押し上げ、国際競争力を高めていく。オープンな世界に踏み出し、世界の成長力を取り込んでいく。為すべきことは明らかです。要は、やるか、やらないか。

 この国会に求められていることは、単なる批判の応酬ではありません。「行動」です。「改革の断行」であります。日本の将来を見据えながら、大胆な改革を、皆さん、実行しようではありませんか。

三 経済再生と社会保障改革

(経済の好循環)

 この二年間、全力で射込んできた「三本の矢」の経済政策は、確実に成果を挙げています。

 中小・小規模事業者の倒産件数は、昨年、二十四年ぶりの低い水準となりました。就職内定を得て新年を迎えた新卒予定者は、八割を超えました。大卒で六年ぶり、高卒で二十一年ぶりに高い内定率です。有効求人倍率は、一年以上にわたって、一倍を超え、仕事を探す人よりも、人を求める仕事の数が多くなっています。正社員においても、十年前の調査開始以来、最高の水準となりました。

 この機を活かし、正規雇用を望む派遣労働者の皆さんに、そのチャンスを広げます。派遣先企業への直接雇用の依頼など正社員化への取組を派遣元に義務付けます。派遣先の労働者との均衡待遇の確保にも取り組み、一人ひとりの選択が実現できる環境を整えてまいります。

 昨年、過去十五年間で最高の賃上げが実現しました。そしてこの春も、企業収益の拡大を賃金の上昇につなげる。更には、中小・小規模事業の皆さんが原材料コストを価格に転嫁しやすくし、経済の好循環を継続させていく。その認識で、政労使が一致いたしました。

 デフレ脱却を確かなものとするため、消費税率十%への引上げを十八か月延期し、平成二十九年四月から実施します。そして賃上げの流れを来年の春、再来年の春と続け、景気回復の温かい風を全国津々浦々にまで届けていく。そのことによって、経済再生と財政再建、社会保障改革の三つを、同時に達成してまいります。

 来年度予算は、新規の国債発行額が六年ぶりに四十兆円を下回り、基礎的財政収支の赤字半減目標を達成する予算としました。二〇二〇年度の財政健全化目標についても堅持し、夏までに、その達成に向けた具体的な計画を策定いたします。

(社会保障の充実)

 消費増税が延期された中にあっても、アベノミクスの果実も活かし、社会保障を充実してまいります。

 難病の皆さんへの医療費助成を大幅に広げます。先月から、小児慢性特定疾病について、新たに百七疾病を助成対象としました。難病についても、この七月を目指し、三百疾病へと広げてまいります。先月から高額療養費制度を見直しました。所得の低い方々の医療費負担を軽減いたします。

 認知症対策を推進します。早期の診断と対応に加え、認知症の皆さんが、できる限り住み慣れた地域で暮らしていけるよう、環境を整えてまいります。国民健康保険への財政支援を拡充することと併せ、その財政運営を市町村から都道府県に移行することにより、国民皆保険の基盤を強化してまいります。

 所得の低い高齢者世帯の皆さんの介護保険料を軽減いたします。介護職員の皆さんに月額一万二千円相当の処遇改善を行い、サービスの充実にも取り組みます。他方で、利用者の負担を軽減し、保険料の伸びを抑えるため、増え続ける介護費用全体を抑制します。社会福祉法人について、経営組織の見直しや内部留保の明確化を進め、地域に貢献する福祉サービスの担い手へと改革してまいります。

 子育て世帯の皆さんを応援します。子ども・子育て支援新制度は、予定通り、四月から実施いたします。引き続き「待機児童ゼロ」の実現に全力投球してまいります。幼児教育や保育に携わる皆さんに三%相当の処遇改善を行い、小学校の教室を利用した放課後児童クラブの拡大や、休日・夜間保育、病児保育の充実など、多様な保育ニーズにもしっかりと応えてまいります。

四 誰にでもチャンスに満ち溢れた日本

(女性が輝く社会)

 その担い手として、これまで子育てに専念してきた女性の皆さんの力にも、大いに期待しています。「子育て支援員」制度がスタートします。子育ても一つのキャリア。そのかけがえのない、素晴らしい経験を活かしてほしいと思います。

 私は、女性の力を、強く信じます。家庭で、地域社会で、職場で、それぞれの場で活躍している全ての女性が、その生き方に自信と誇りを持ち、輝くことができる社会を創り上げてまいります。

 「女性活躍推進法案」を再び提出し、早期の成立を目指します。国、地方、企業などが一体となって、女性が活躍しやすい環境を整える。社会全体の意識改革を進めてまいります。

 本年採用の国家公務員から、女性の比率が三割を超えます。二〇二〇年には、あらゆる分野で指導的地位の三割以上が女性となる社会を目指し、女性役員などの情報の開示、育児休業中の職業訓練支援など、女性登用に積極的な企業を応援してまいります。

(柔軟かつ多様な働き方)

 高齢者の皆さんに、多様な就業機会を提供する。シルバー人材センターには、更にその機能を発揮してもらいます。障害や難病、重い病気を抱える皆さんにも、きめ細かな支援を行い、就労のチャンスを拡大してまいります。

 あらゆる人が、生きがいを持って、社会で活躍できる。そうすれば、少子高齢社会においても、日本は力強く成長できるはずです。

 そのためには、労働時間に画一的な枠をはめる、従来の労働制度、社会の発想を、大きく改めていかなければなりません。子育て、介護など働く方々の事情に応じた、柔軟かつ多様な働き方が可能となるよう、選択肢の幅を広げてまいります。

 昼が長い夏は、朝早くから働き、夕方からは家族や友人との時間を楽しむ。夏の生活スタイルを変革する新たな国民運動を展開します。

 夏休みの前に働いた分、子どもに合わせて長い休みを取る。そんな働き方も、フレックスタイム制度を拡充して、可能とします。専門性の高い仕事では、時間ではなく成果で評価する新たな労働制度を選択できるようにします。

 時間外労働への割増賃金の引上げなどにより、長時間労働を抑制します。更に、年次有給休暇を確実に取得できるようにする仕組みを創り、働き過ぎを防ぎ、ワーク・ライフ・バランスが確保できる社会を創ってまいります。

(若者の活躍)

 日本の未来を創るのは、若者です。若者たちには、社会で、その能力を思う存分発揮し、大いに活躍してもらいたいと願います。

 若者への雇用対策を抜本的に強化します。三割を超える若者が早期離職する現実を踏まえ、新卒者を募集する企業には、残業、研修、離職などの情報提供を求めます。若者の使い捨てが疑われる企業からは、ハローワークで新卒求人を受理しないようにいたします。

 非正規雇用の若者たちには、キャリアアップ助成金を活用して正規雇用化を応援します。魅力ある中小企業がたくさんある。そのことを若者たちに知ってもらうための仕組みを強化します。

(子どもたちのための教育再生)

 「娘は今、就職に向けて前向きに頑張っております。」

 二十歳の娘さんを持つお母さんから、手紙を頂きました。娘さんは、幼い頃から学習困難があり、友達と違う自分に悩んできたといいます。

 「娘はだんだん自己嫌悪がひどくなり『死んでしまいたい』と泣くこともありました・・・学校に行くたびに輝きが失せていく・・・しかし、娘は世の中に置いて行かれまいと、学校に通いました。」

 中学一年生の時、不登校になりました。しかし、フリースクールとの出会いによって、自信を取り戻し、再び学ぶことができました。大きな勇気を得て、社会の偏見に悩みながらも、今は就職活動にもチャレンジしているそうです。その手紙は、こう結ばれていました。

 「子どもは大人の鏡です。大人の価値観が変わらない限りいじめは起こり、無くなることはないでしょう。・・・多様な人、多様な学び、多様な生き方を受け入れ、認め合う社会を目指す日本であってほしいと切に願っております。ちっぽけな母親の願いです。」と。

 否(いや)、当然の願いであります。子どもたちの誰もが、自信を持って、学び、成長できる環境を創る。これは、私たち大人の責任です。

 フリースクールなどでの多様な学びを、国として支援してまいります。義務教育における「六・三」の画一的な学制を改革します。小中一貫校の設立も含め、九年間の中で、学年の壁などにとらわれない、多様な教育を可能とします。

 「できないことへの諦め」ではなく「できることへの喜び」を与える。地域の人たちの協力を得ながら、中学校で放課後などを利用して無償の学習支援を行う取組を、全国二千か所に拡大します。

 子どもたちの未来が、家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはなりません。子どもの貧困は、頑張れば報われるという真っ当な社会の根幹に関わる深刻な問題です。

 所得の低い世帯の幼児教育にかかる負担を軽減し、無償化の実現に向け、一歩一歩進んでまいります。希望すれば、高校にも、専修学校、大学にも進学できる環境を整えます。高校生に対する奨学給付金を拡充します。大学生への奨学金も、有利子から無利子への流れを加速し、将来的に、必要とする全ての学生が、無利子奨学金を受けられるようにしてまいります。

 誰にでもチャンスがある、そしてみんなが夢に向かって進んでいける。そうした社会を、皆さん、共に創り上げようではありませんか。

五 地方創生

(地方にこそチャンス)

 地方で就職する学生には、奨学金の返済を免除する新たな仕組みを創ります。東京に住む十代・二十代の若者に尋ねると、その半分近くが、地方への移住を望んでいる。大変勇気づけられる数字です。

 地方にこそチャンスがある。

 若者たちの挑戦を力強く後押しします。一度失敗すると全てを失う、「個人保証」偏重の慣行を断ち切ります。全国の金融機関、中小・小規模事業の皆さんへの徹底を図ります。政府調達では、創業から十年未満の企業を優先するための枠組みを創り、新たなビジネスに挑む中小・小規模事業の皆さんのチャンスを広げてまいります。

 地方にチャンスを見出す企業も応援します。本社などの拠点を地方に移し、投資や雇用を拡大する企業を、税制により支援してまいります。地域ならではの資源を活かした、新たな「ふるさと名物」の商品化、販路開拓も応援し、地方の「しごとづくり」を進めてまいります。

 地方こそ成長の主役です。

 外国人観光客は、この二年間で五百万人増加し、過去最高、一千三百万人を超えました。ビザ緩和などに戦略的に取り組み、更なる高みを目指します。

 日本を訪れる皆さんに、北から南まで、豊かな自然、文化や歴史、食など、地方の個性あふれる観光資源を満喫していただきたい。国内の税関や検疫、出入国管理の体制を拡充いたします。全国各地と結ぶ玄関口、羽田空港の機能強化を進めます。地元の理解を得て飛行経路を見直し、国際線の発着枠を二〇二〇年までに年四万回増やします。成田空港でも、管制機能を高度化し、同様に年四万回、発着枠を拡大します。アジアとのハブである沖縄では、那覇空港第二滑走路の建設を進めます。二〇二一年度まで毎年三千億円台の予算を確保するとした沖縄との約束を重んじ、その実施に最大限努めてまいります。

(地方目線の行財政改革)

 熱意ある地方の創意工夫を全力で応援する。それこそが、安倍内閣の地方創生であります。

 地方の努力が報われる、地方目線の行財政改革を進めます。それぞれの地方が、特色を活かしながら、全国にファンを増やし、財源を確保する。ふるさと納税を拡大してまいります。手続も簡素化し、より多くの皆さんに、地方の応援団になってほしいと思います。

 地方分権でも、霞が関が主導する従来のスタイルを根本から改め、地方の発意による、地方のための改革を進めてまいります。地方からの積極的な提案を採用し、農地転用などの権限を移譲します。更に、国家戦略特区制度を進化させ、地方の情熱に応えて規制改革を進める「地方創生特区」を設けてまいります。

(安心なまちづくり)

 伝統ある美しい日本を支えてきたのは、中山間地や離島にお住まいの皆さんです。医療や福祉、教育、買物といった生活に必要なサービスを、一定のエリアに集め、周辺の集落と公共交通を使って結ぶことで、小さくても便利な「まちづくり」を進めてまいります。

 安全で安心な暮らしは、何よりも重要です。ストーカー、高齢者に対する詐欺など、弱い立場の人たちを狙った犯罪への対策を強化してまいります。児童虐待から子どもたちを守るため、SOSの声を「いち・はや・く」キャッチする。児童相談所への全国共通ダイヤル「一八九」を、この七月から運用開始いたします。

 御嶽山の噴火を教訓に、地元と一体となって、観光客や登山者の警戒避難体制を充実するなど、火山防災対策を強化してまいります。近年増加するゲリラ豪雨による水害や土砂災害などに対して、インフラの整備に加え、避難計画の策定や訓練の実施など、事前防災・減災対策に取り組み、国土強靱化を進めてまいります。

 昨年は各地で自然災害が相次ぎました。その度に、自衛隊、警察、消防などの諸君が、昼夜を分かたず、また危険も顧みず、懸命の救助活動に当たってくれました。

 「たくさん雪が降っていて、とっても、こわかったです。」

 昨年十二月の大雪では、徳島県でいくつもの集落が孤立しました。災害派遣された自衛隊員に、地元の中学校の子どもたちが手紙をくれました。

 「そんなとき、自衛隊のみなさんが、来てくれて、助けてくれて、かんしゃの気持ちでいっぱいです。・・・わたしたちも、みなさんに何かしなくては!と思い、手紙を書きました。」

 私たちもまた、彼らの高い使命感と責任感に対し、今この場から、改めて、感謝の意を表したいと思います。

六 外交・安全保障の立て直し

(平和国家としての歩み)

 昨年十月、海上自衛隊の練習艦隊が、五か月間の遠洋航海から帰国しました。

 「国のために戦った方は、国籍を超えて、敬意を表さなければならない。」

 ソロモン諸島リロ首相の心温まる御協力を頂き、今回の航海では、先の大戦の激戦地ガダルカナル島で収容された百三十七柱の御遺骨に、祖国へと御帰還いただく任務にあたりました。

 今も異国の地に眠るたくさんの御遺骨に、一日も早く、祖国へと御帰還いただきたい。それは、今を生きる私たちの責務であります。硫黄島でも、一万二千柱もの御遺骨の早期帰還に向け、来年度中に滑走路下百か所の掘削を完了し、取組を加速してまいります。

 祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながら、お亡くなりになった、こうした尊い犠牲の上に、私たちの現在の平和があります。

 平和国家としての歩みは、これからも決して変わることはありません。国際情勢が激変する中で、その歩みを更に力強いものとする。国民の命と幸せな暮らしは、断固として守り抜く。そのために、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする安全保障法制の整備を進めてまいります。

(戦後七十年の「積極的平和主義」)

 本年は、戦後七十年の節目の年にあたります。

 我が国は、先の大戦の深い反省と共に、ひたすらに自由で民主的な国を創り上げ、世界の平和と繁栄に貢献してまいりました。その誇りを胸に、私たちは、これまで以上に世界の平和と安定に貢献する国とならなければなりません。次なる八十年、九十年、そして百年に向けて、その強い意志を世界に向けて発信してまいります。

 幾多の災害から得た教訓や経験を世界と共有する。三月、仙台で国連防災世界会議を開きます。「島国ならでは」の課題に共に立ち向かう。五月、いわきで太平洋・島サミットを開催します。二十一世紀こそ、女性への人権侵害が無い世紀とする。女性が輝く世界に向けて、昨年に引き続き、秋口には、世界中から活躍している女性の皆さんに、日本にお集まりいただきたいと考えています。

 本年はまた、被爆七十年の節目でもあります。唯一の戦争被爆国として、日本が、世界の核軍縮、不拡散をリードしてまいります。

 国連創設から七十年にあたる本年、日本は、安全保障理事会・非常任理事国に立候補いたします。そして、国連を二十一世紀にふさわしい姿へと改革する。その大きな役割を果たす決意であります。

 本年こそ、「積極的平和主義」の旗を一層高く掲げ、日本が世界から信頼される国となる。戦後七十年にふさわしい一年としていきたい。そう考えております。

(地球儀を俯瞰する外交)

 今後も、豪州、ASEAN諸国、インド、欧州諸国など、自由や民主主義、基本的人権や法の支配といった基本的価値を共有する国々と連携しながら、地球儀を俯瞰する視点で、積極的な外交を展開してまいります。

 その基軸は日米同盟であります。この二年間で、日米同盟の絆は復活し、揺るぎないものとなりました。日米ガイドラインの見直しを進め、その抑止力を一層高めてまいります。

 現行の日米合意に従って、在日米軍再編を進めてまいります。三月末には、西普天間住宅地区の返還が実現いたします。学校や住宅に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間飛行場の返還を、必ずや実現する。そのために、引き続き沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら、名護市辺野古沖への移設を進めてまいります。今後も、日米両国の強固な信頼関係の下に、裏付けのない「言葉」ではなく実際の「行動」で、沖縄の基地負担の軽減に取り組んでまいります。

 日本と中国は、地域の平和と繁栄に大きな責任を持つ、切っても切れない関係です。昨年十一月、習近平国家主席と首脳会談を行って、「戦略的互恵関係」の原則を確認し、関係改善に向けて大きな一歩を踏み出しました。今後、様々なレベルで対話を深めながら、大局的な観点から、安定的な友好関係を発展させ、国際社会の期待に応えてまいります。

 韓国は、最も重要な隣国です。日韓国交正常化五十周年を迎え、関係改善に向けて話合いを積み重ねてまいります。対話のドアは、常にオープンであります。

 ロシアとは、戦後七十年経った現在も、いまだ平和条約が締結できていない現実があります。プーチン大統領とは、これまで十回にわたる首脳会談を行ってまいりました。大統領の訪日を、本年の適切な時期に実現したいと考えております。これまでの首脳会談の積み重ねを基礎に、経済、文化など幅広い分野で協力を深めながら、平和条約の締結に向けて、粘り強く交渉を続けてまいります。

 北朝鮮には、拉致、核、ミサイルの諸懸案の包括的な解決を求めます。最重要課題である拉致問題について、北朝鮮は、迅速な調査を行い、一刻も早く、全ての結果を正直に通報すべきであります。今後とも、「対話と圧力」、「行動対行動」の原則を貫き、拉致問題の解決に全力を尽くしてまいります。

七 二〇二〇年の日本

(東日本大震災からの復興)

 昨年末、日本を飛び立った「はやぶさ2」。宇宙での挑戦を続けています。小惑星にクレーターを作ってサンプルを採取する。そのミッションを可能とした核心技術は、福島で生まれました。東日本大震災で一時は休業を強いられながらも、技術者の皆さんの熱意が、被災地から「世界初」の技術を生み出しました。

 福島を、世界最先端の研究、新産業が生まれる地へと再生する。原発事故によって被害を受けた浜通り地域に、ロボット関連産業などの集積を進めてまいります。

 中間貯蔵施設の建設を進め、除染を更に加速します。東京電力福島第一原発の廃炉・汚染水対策に、国も前面に立ち、全力で取り組みます。福島復興再生特別措置法を改正し、避難指示の解除に向けて、復興拠点が円滑に整備できるようにします。財政面での支援も拡充し、故郷に帰還する皆さんの生活再建を力強く後押ししてまいります。

 三月には、東北の被災地を貫く常磐自動車道が、いよいよ全線開通いたします。多くの観光客に東北を訪れていただきたい。被災地復興の起爆剤となることを期待しています。

 高台移転は九割、災害公営住宅は八割の事業がスタートしています。住まいの再建を続けると同時に、孤立しがちな被災者への見守りなどの「心」の復興、農林水産業や中小企業など「生業(なりわい)」の復興にも、全力を挙げてまいります。

 「はやぶさ2」は、福島生まれの技術がもたらした小惑星のサンプルと共に、二〇二〇年、日本に帰ってきます。その時には、東北の姿は一変しているに違いありません。いや、一変させなければなりません。「新たな可能性と創造」の地としての東北を、皆さん、共に創り上げようではありませんか。

(オリンピック・パラリンピック)

 その同じ年に、私たちは、オリンピック・パラリンピックを開催いたします。

 必ずや成功させる。その決意で、専任の担当大臣の下、インフラ整備からテロ対策まで、多岐にわたる準備を本格化してまいります。

 スポーツ庁を新たに設置し、日本から世界へと、スポーツの価値を広げます。子どもも、お年寄りも、そして障害や難病のある方も、誰もがスポーツをもっと楽しむことができる環境を整えてまいります。

(日本は変えられる)

 私たち日本人に、「二〇二〇年」という共通の目標ができました。

 昨年、日本海では、世界に先駆けて、表層型メタンハイドレート、いわゆる「燃える氷」の本格的なサンプル採取に成功しました。「日本は資源に乏しい国である」。そんな「常識」は、二〇二〇年には、もはや「非常識」になっているかもしれません。

 「日本は変えられる」。全ては、私たちの意志と行動にかかっています。

 十五年近く続いたデフレ。その最大の問題は、日本人から自信を奪い去ったことではないでしょうか。しかし、悲観して立ち止まっていても、何も変わらない。批判だけを繰り返していても、何も生まれません。

 「日本国民よ、自信を持て」

 戦後復興の礎を築いた吉田茂元総理の言葉であります。

 昭和の日本人に出来て、今の日本人に出来ない訳はありません。私は、この議場にいる全ての国会議員の皆さんに、再度、呼び掛けたいと思います。

 全ては国民のため、党派の違いを超えて、選挙制度改革、定数削減を実現させようではありませんか。憲法改正に向けた国民的な議論を深めていこうではありませんか。

 そして、日本の未来を切り拓く。そのために、「戦後以来の大改革」を、この国会で必ずや成し遂げようではありませんか。

 今や、日本は、私たちの努力で、再び成長することができる。世界の真ん中で輝くことができる。その「自信」を取り戻しつつあります。

 さあ皆さん、今ここから、新たなスタートを切って、芽生えた「自信」を「確信」へと変えていこうではありませんか。

 御清聴ありがとうございました。

[全文引用おわり] 

外交演説、財政演説、経済演説は次のエントリーで。


天皇陛下、今年初の法律、改正地方交付税法(平成27年法律1号)を公布、きょう施行

2015年02月12日 10時01分53秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

[画像]2015年2月12日(木)付官報6470号、官報ウェブサイトから。

 天皇陛下は、日本国憲法第7条にもとづく、天皇の国事行為として内閣の助言と承認にもとづき、

 「改正地方交付税法」を公布なさいました。

 国会での議案番号は、189閣法1号で、1月26日(月)に提出され、30日(金)に衆議院総務委員会で趣旨説明。審議のあと、委員会で可決し、本会議に緊急上程され、共産党の反対、自公民維の賛成多数で可決しました。2月3日(火)に参議院本会議でも可決し、成立しました。平成26年度第1次(最終)補正予算関連法案でした。

 法律番号は、平成27年2月12日法律1号。

 施行日は、公布の日となっており、すでに施行されました。

 補正予算では、地方交付税交付金を0・9兆円増額しました。ただ、法律では「平成二十七年度分として交付すべき地方 における交付税の総額に加算して交付することができる。」 としており、交付税および譲与税特別会計(内閣府・財務省・総務省3府省共同所)の中で、その多くの金額が来年度に繰り越されることになりそうです。

 当初予算関連法案として、同じタイトルの法律案が再度提出される見通しです。

 なお、条約公布については、平成27年1月16日条約1号として「原子力損害賠償の補完的な条約(いわゆるCSCE、第三条約)」が公布されました。これは昨年秋の第187臨時国会で、187条約2号の議案番号で審議され、解散直前に両院承認されていました。条約に関しては相手国があるため公布が遅れることがあり、現在7つの条約が国会での両院承認を受けながらも、公布待ち、発行待ちの状態にあります。

 

tag (宮崎信行)

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[お知らせおわり] 

 


米大統領、対イスラム国地上戦の限定容認を議会に要求 イラク・シリア領域外の「協力者」にも集団的自衛権

2015年02月12日 05時32分50秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

 米国のバラク・オバマ大統領は2015年2月11日(水)=日本時間12日、米国議会に対して両院決議をするよう求める手紙を送りました。

 オバマ大統領は、「イスラム国だ」と自称するISILについて、イラクとシリアにおいて事実上の国土(Significant territory in Iraq and Syria)を持っているとの現状認識を示し、さらに広がる可能性を指摘しました。

 アメリカはこれまで、個別的および集団的自衛権(right of individual and collective self-defense)を発動して、イスラム国に軍事行動をとってきたとしました。

 ISILは罪のない米国人である、ジェームズ・フォーリーさん、スティーブン・ソトロフさん、アブドラ―ラーマン・ピーター・カシグ(Abdul-Rahman PeterKassig)さん、そして、ケーラ・ミューラーさんらの死に責任を負っているとしました。なお、日本人の湯川春菜さんと後藤健二さん、英国人、ヨルダン人の名前の記述はありません。

 そして、議会に対して、決議の起草案を次のように提案しました。

 まずタイトルは、「イスラム国への軍の使用の(大統領への)権限付与(決議)」とするよう求めました。

 そして、攻撃対象として、イスラム国のみならず、協力者たちや協力的な武装勢力たち(associated persons or forces)も対象にしました。アメリカと(日本などの)アメリカとの同盟国に対する敵対的なISILと関係の深い者(人、勢力)も対象にするとしました。

 効力は決議日から3年間としたので、オバマ大統領の在任期間中にとどまるとみられます。決議について、3年間議会は、何らかの決定はできませんが、大統領は半年に1回議会に報告しなければなりません。

 2002年イラク攻撃決議(米法律番号107-230)は廃止するとしました。 

 今後、決議を米議会が決定するかどうかは、 大統領野党が過半数をしめるねじれ議会なので、不透明です。

 ただ、イラク・シリア領内のみならず、ISILに協力的な人、軍も対象にしていることから、地上戦の対象がイラク・シリア領内に限定したものとはならない可能性があります。具体的には、トルコ・シリア国境線のややトルコ側での地上戦がないとはいえません。

 オバマ大統領は、現状認識として、有志国連合は、おもに、中東・北アフリカの諸国に限ってきたとしながらも、その不十分さから、空爆だけでなく、地上戦入りを求めていることから、有志国連合への参加国について、今後、拡大を求める気配を文書からは感じます。

 公明党と自民党は2014年7月1日の閣議決定で、集団的自衛権の限定容認を可能にする国の存立事態を全うする切れ目のない安保法制のための憲法解釈の再整理を決定したことから、今後、旧テロ特別措置法(2001年制定、2007年失効)の仕立て直しにより、地上軍部隊への後方支援(現行法ならば非戦闘地域また新法による「現場」)への自衛隊派遣が現実を帯びてきそうです。

 1月のフランス・パリの「シャルリ・エブド」紙襲撃の実行犯(一部逃亡中)や、ナイジェリアなどの武装勢力「ボコハラム」などがISILと関係があるとみなされれば、攻撃対象は拡大していくことになりそうです。

 いずれにしろ、自民党の礒崎陽輔さんや、公明党の西田実仁さんらによる、大局観のない与党協議会と、湯川さん、後藤さんらの軽率な行動が取り返しのつかないことになりかねない局面へと進めてしまいました。ただし、21世紀の憎悪の連鎖と文明の衝突は、2011年9月11日同時多発テロという、我々日米同盟国にとって、報復することが当然である、蛮行から始まったことも忘れてはなりません。まさに「永遠の敵もいなければ、永遠の同盟国もない。あるのは国益のみだ」(ウィンストン・チャーチル)。

 G20財務大臣・中央銀行総裁会議は11日、イラク・シリアの隣国であるトルコのイスタンブールで、テロ資金撲滅のため、世界のすべての国家の取り締まり状況をチェックして、問題がある国家の名前を公表する枠組みに合意しました。

 安倍晋三首相(自民党総裁)のリーダーシップが問われます。 

[米国大統領府(ホワイトハウス)ウェブサイトから全文引用はじめ]
1

JOINT RESOLUTION
To authorize the limited use of the United States Armed Forces against the Islamic State of Iraq
and the Levant.
***
Whereas the terrorist organization that has referred to itself as the Islamic State of Iraq and the
Levant and various other names (in this resolution referred to as ‘‘ISIL’’) poses a grave threat to
the people and territorial integrity of Iraq and Syria, regional stability, and the national security
interests of the United States and its allies and partners;
Whereas ISIL holds significant territory in Iraq and Syria and has stated its intention to seize
more territory and demonstrated the capability to do so;
Whereas ISIL leaders have stated that they intend to conduct terrorist attacks internationally,
including against the United States, its citizens, and interests;
Whereas ISIL has committed despicable acts of violence and mass executions against Muslims,
regardless of sect, who do not subscribe to ISIL’s depraved, violent, and oppressive ideology;
Whereas ISIL has threatened genocide and committed vicious acts of violence against religious
and ethnic minority groups, including Iraqi Christian, Yezidi, and Turkmen populations;
Whereas ISIL has targeted innocent women and girls with horrific acts of violence, including
abduction, enslavement, torture, rape, and forced marriage;
Whereas ISIL is responsible for the deaths of innocent United States citizens, including James
Foley, Steven Sotloff, Abdul-Rahman Peter Kassig, and Kayla Mueller;
Whereas the United States is working with regional and global allies and partners to degrade and
defeat ISIL, to cut off its funding, to stop the flow of foreign fighters to its ranks, and to support
local communities as they reject ISIL;
Whereas the announcement of the anti-ISIL Coalition on September 5, 2014, during the NATO
Summit in Wales, stated that ISIL poses a serious threat and should be countered by a broad
international coalition;
Whereas the United States calls on its allies and partners, particularly in the Middle East and
North Africa, that have not already done so to join and participate in the anti-ISIL Coalition;
Whereas the United States has taken military action against ISIL in accordance with its inherent
right of individual and collective self-defense;2
Whereas President Obama has repeatedly expressed his commitment to working with Congress
to pass a bipartisan authorization for the use of military force for the anti-ISIL military
campaign; and
Whereas President Obama has made clear that in this campaign it is more effective to use our
unique capabilities in support of partners on the ground instead of large-scale deployments of
U.S. ground forces: Now, therefore, be it
Resolved by the Senate and House of Representatives of the United States of America in
Congress assembled, That
SECTION 1. SHORT TITLE.
This joint resolution may be cited as the “Authorization for Use of Military Force against the
Islamic State of Iraq and the Levant.”
SEC. 2. AUTHORIZATION FOR USE OF UNITED STATES ARMED FORCES.
(a) AUTHORIZATION.—The President is authorized, subject to the limitations in subsection
(c), to use the Armed Forces of the United States as the President determines to be necessary and
appropriate against ISIL or associated persons or forces as defined in section 5.
(b) WAR POWERS RESOLUTION REQUIREMENTS.—
(1) SPECIFIC STATUTORY AUTHORIZATION.—Consistent with section 8(a)(1) of the War
Powers Resolution (50 U.S.C. 1547(a)(1)), Congress declares that this section is intended to
constitute specific statutory authorization within the meaning of section 5(b) of the War Powers
Resolution (50 U.S.C. 1544(b)).
(2) APPLICABILITY OF OTHER REQUIREMENTS.—Nothing in this resolution supersedes
any requirement of the War Powers Resolution (50 U.S.C. 1541 et seq.).
(c) LIMITATIONS.—
The authority granted in subsection (a) does not authorize the use of the United States Armed
Forces in enduring offensive ground combat operations.
SEC. 3. DURATION OF THIS AUTHORIZATION.
This authorization for the use of military force shall terminate three years after the date of the
enactment of this joint resolution, unless reauthorized.
SEC. 4. REPORTS.3
The President shall report to Congress at least once every six months on specific actions taken
pursuant to this authorization.
SEC. 5. ASSOCIATED PERSONS OR FORCES DEFINED.
In this joint resolution, the term ‘‘associated persons or forces’’ means individuals and
organizations fighting for, on behalf of, or alongside ISIL or any closely-related successor entity
in hostilities against the United States or its coalition partners.
SEC. 6. REPEAL OF AUTHORIZATION FOR USE OF MILITARY FORCE AGAINST
IRAQ.
The Authorization for Use of Military Force Against Iraq Resolution of 2002 (Public Law 107–
243; 116 Stat. 1498; 50 U.S.C. 1541 note) is hereby repealed.

[全文引用おわり]