(このエントリーの初投稿日時は2015年2月13日午前8時で、そこからバックデート)
先のエントリーからの続き。
[外務省ウェブサイトから全文引用はじめ]
岸田文雄外相の外交演説
第189回国会に当たり、外交の基本方針について所信を申し述べます。
総論
最初に、シリアにおいて、非道、卑劣極まりないテロ行為により殺害された日本人お二人に哀悼の誠を捧げ、御家族に心からお悔やみを申し上げます。国民の皆様の祈りにも支えられ、政府として全力を尽くしましたが、このような結果となったことは痛恨の極みです。許しがたい暴挙に強い憤りを覚え、断固非難します。この間の国会における議員各位の御理解と御協力に深く感謝いたします。
世界各地で、過激主義集団によるテロ行為が発生し、多くの無辜の市民が犠牲になっています。いかなる国もテロの脅威に無縁ではいられません。日本は、決してテロに屈することはありません。国内外の日本人の安全確保に万全を期すとともに、中東・アフリカへの人道支援を更に拡充し、また、国際社会におけるテロに対する取組にも毅然として責任を果たしてまいります。
今回、国際社会から示された連帯に心から感謝いたします。ヨルダンを始め世界各国・各地からの連帯は、これまでの日本外交の積み重ねの賜であり、国際社会における日本の存在感の高まりと協力のネットワークの広がりを現すものです。
世界各地のテロに象徴されるように、グローバル化と脅威の多様化が進捗しています。また、アジア太平洋地域の戦略環境は依然として厳しい状況にあります。どの国も一国のみで自国の平和、自国民の安全を守ることはできません。こうした状況であるからこそ、国際協調主義に基づく積極的平和主義の旗を高く掲げ、日本の安全保障を確実なものにし、世界の平和と繁栄のために国際社会の一員としての責務を果たす外交を、これまで以上に強力に推進してまいります。
本年は戦後70年、国連創設70年の節目の年に当たります。20世紀の惨禍を二度と繰り返してはなりません。先の大戦の反省を踏まえ、日本は自由、民主主義、法の支配、市場経済、人権といった基本的価値を信奉し、国連を始めとする制度や体制を擁護してきました。先人たちの努力と国際的秩序の恩恵を受け、我々は今日の平和と繁栄を享受しています。平和国家としての日本の歩みは今後も変わることはありません。
平和は単に戦争がない状態ではありません。日本は、人々が安全に、安心して豊かに暮らせることのありがたさを70年間実感してきました。自らの経験に裏打ちされた平和と繁栄を、地域と世界に広げていきたい。このため、日本は、アジアを始め世界各地で、開発、平和構築、国民和解、民主化に積極的に貢献し、軍縮・不拡散や環境といったグローバルな課題に主体的に取り組んできました。
こうした平和国家としての日本の歩みを更に未来に進め、国際協調主義に基づく積極的平和主義を具体的に実践する外交に取り組んでまいります。
日本の安全の確保と繁栄の実現
日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることへの対応も必要です。日本固有の領土・領海・領空は断固として守り抜くとの方針は不変であり、引き続き毅然かつ冷静に対応します。そして、国民の命と平和な暮らしを守り抜くとともに、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献するため、切れ目のない安全保障法制を整備する必要があります。国民の皆様の御理解を得るために、引き続き丁寧に説明を続けてまいります。
本年も、これまでと同様、日米同盟の強化、近隣諸国との関係強化、そして経済外交の強化という三本柱を軸とした外交を強力に展開します。
第一の柱は、日本外交の基軸である日米同盟の強化です。
昨年4月、日米首脳は、平和で繁栄するアジア太平洋を確かなものにしていくために、日米同盟が主導的役割を果たすことを確認しました。今後も日米同盟をあらゆる分野で強化してまいります。
安全保障分野においては、「日米防衛協力のための指針」見直しを始め、幅広い分野での安保・防衛協力を推進し、抑止力を一層向上させます。在日米軍再編を現行の日米合意に従って進めながら、沖縄の負担軽減に取り組みます。特に、普天間飛行場については、危険性の除去が極めて重要な課題であるとの認識の下、一日も早い移設に向けて政府として取り組みます。また、日米地位協定の環境補足協定署名に向けて、所要の作業を進めてまいります。
第二の柱は、近隣諸国との関係強化です。
日中関係は、最も重要な二国間関係の一つです。中国が国際社会のルールや法の支配を尊重する形で平和的発展を遂げることは、日本にとっても大きなチャンスです。昨年11月の北京APECでの首脳・外相会談の成果を踏まえ、「戦略的互恵関係」の原点に立ち戻り、様々なレベルで対話と協力を積み重ね、大局的な観点から日中関係を発展させてまいります。
地域の平和と繁栄の確保という利益を共有する最も重要な隣国である韓国との関係強化は、日本にとり当然のことです。今後とも様々なレベルで積極的に意思疎通を積み重ね、大局的観点から、国交正常化50周年にふさわしい、未来志向で重層的な協力関係を、双方の努力により構築していきたいと考えています。また、経済関係の強化にも努めます。日本固有の領土である竹島については、引き続き日本の主張をしっかりと伝え、粘り強く対応します。
さらに、日中韓3か国の協力を未来志向で強化するとともに、日中韓外相会議を早期に開催し、首脳会議の開催につなげられるよう、努力してまいります。
より統合され繁栄し安定したASEANは、地域全体の平和と安定にとり極めて重要です。本年のASEAN共同体構築及び更なる統合に向けた努力を引き続き支援するとともに、ASEAN及びASEAN各国との関係を一層強化する考えです。
特別な戦略的グローバル・パートナーシップの関係にあるインドとの協力強化を進め、南西アジア諸国との関係を深化させます。
また、基本的価値と戦略的利益を共有する「特別な関係」にある豪州との間で、二国間及び日米豪3か国の枠組みでの安保・防衛分野における協力を進めるとともに、日豪EPAを通じた経済関係の強化等をより一層促進します。
また、5月の第7回太平洋・島サミットの開催を通じ、太平洋島嶼国との協力関係を一層深化させます。
日露関係については、本年の適切な時期に実現を目指しているプーチン大統領の訪日を含め、今後政治対話を積み重ねつつ、日本の国益に資するよう進めてまいります。最大の懸案である北方領土問題については、引き続き、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべく、粘り強く交渉に取り組んでまいります。また、ウクライナ情勢の平和的解決に向け、全ての当事者の対話努力を促すとともに、ロシアが建設的役割を果たすよう働きかけてまいります。日本としても、ウクライナの改革努力を引き続き支援していきます。
北朝鮮に関しては、「対話と圧力」の方針の下、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決を目指します。北朝鮮による核・ミサイル開発の継続は、地域と国際社会全体の平和と安全に対する重大な脅威です。関係国と連携しつつ、北朝鮮に対し、安保理決議及び六者会合共同声明の誠実かつ完全な実施を引き続き強く求めます。北朝鮮が、国際社会の声を真摯に受け止め、人権状況の改善に向けた具体的行動を取ることを引き続き強く求めます。拉致問題は、日本の主権及び国民の生命・安全に関わる重大な問題であり、政権の最重要課題です。北朝鮮による調査が、全ての拉致被害者の帰国という具体的な成果につながるよう、全力を尽くします。
欧州各国、EUやNATO等との協力関係を、重層的に強化します。特に、英国及びフランスと安保・防衛分野の協力を推進していきます。
また、中南米諸国と国際場裏での協力関係を含む幅広い関係強化を図ります。
第三の柱は、日本経済の再生に資する経済外交の強化です。
日本経済の再生と発展に資する戦略的な経済外交を引き続き推進します。国際市場において日本企業が存分に活躍できるよう、トップセールスやODAの活用も含め官民一体で推進します。地方創生に資する取組を強化する観点からも、日本産品の海外普及促進や風評被害対策に引き続き力を入れてまいります。また、経済面での国際ルール整備のため、WTOやOECD、APEC、主要国首脳会議等の議論に積極的に参画します。
さらに、TPPを始めとする経済連携交渉を、国益にかなった、包括的かつ高いレベルで戦略的かつスピード感をもって推進します。
エネルギー・鉱物資源・食料等の安定確保のため、資源外交を強化します。
鯨類を含む海洋生物資源の持続可能な利用について、国際社会の理解と支持を得るべく一層努力します。
海外における日本人の安全対策と国際的なテロ対策の強化
今回のシリアにおける邦人人質殺害事件を受け、従来の取組に加え、在留邦人への注意喚起、日本人学校との連絡強化や現地治安当局への警備強化申し入れ、危険情報の発出などを行いました。その上で、海外に在留・渡航する日本人の安全確保に更に万全を期すための検討チームを立ち上げ、考え得る具体的な措置について早急にとりまとめます。
また、テロと闘う国際社会において、日本としての責任を果たすとともに、日本の立場を積極的に対外発信していきます。さらに、テロ関連情報の収集を一層強化してまいります。
中東地域においては、ISILの脅威がある中で、「中庸が最善」の精神に裏打ちされた、安定した中東を取り戻すことが急務です。過激主義の流れを食い止めるべく、穏健イスラム諸国に対し可能な限りの非軍事の支援を行います。
グローバルな課題への一層の貢献
外交の三本柱を推進するのと合わせて、国際社会が直面するグローバルな課題についても、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、引き続き積極的に貢献してまいります。
国連創設70年の節目の年に当たり、国連との連携をより一層強化します。
日本は、国連が21世紀にふさわしい姿となるよう、常任理事国の責務を担う用意があり、インド、ドイツ、ブラジルとともに、安保理改革実現に向けてリーダーシップを発揮してまいります。また、本年の安保理非常任理事国選挙に万全を期します。
国連PKOへの貢献を一層拡大し、平和維持・平和構築を推進します。
国際機関の日本人職員の増強にも努めます。
本年は被爆70年でもあります。唯一の戦争被爆国として、NPT運用検討会議での議論を主導し、「核兵器のない世界」を目指して現実的、実践的な取組を前進させます。
気候変動分野では、COP21における全ての国が参加する公平かつ実効的な2020年以降の国際枠組みの合意に向け、積極的に貢献します。この一環として、緑の気候基金に拠出を行うため、「緑の気候基金法案」を今国会に提出します。
「女性が輝く社会」の実現は、世界共通の課題です。21世紀こそ女性に対する人権侵害のない世界となるよう貢献してまいります。今年も「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム(WAW!)」を開催します。
ポスト2015年開発アジェンダ策定に向けた議論に、積極的に貢献してまいります。人間の安全保障の理念に基づき、国際保健課題や防災等に対処し、多様な主体が参加する枠組みの策定を目指します。3月には、仙台で第3回国連防災世界会議を開催し、防災の主流化と被災地の復興の発信に取り組みます。
新たな開発協力大綱の下、ODAを戦略的に活用することにより、国際社会の平和と安定及び繁栄に一層積極的に寄与してまいります。特に、ODAを通じた官民連携を一層推進します。
成長著しいアフリカとのパートナーシップを、TICADプロセスを中心に一層強化します。エボラ出血熱の流行に対し、引き続き、切れ目なき支援を実施します。
海洋、宇宙空間、サイバー空間を含む国際公共財における「法の支配」の実現や強化に尽力します。「海における法の支配の三原則」に基づき、「開かれ安定した海洋」の維持・発展に、主要国・関係国と連携し、取り組んでまいります。
総合的な外交力及び戦略的対外発信の強化
主要国並みの外交実施体制の実現を目指し、総合的な外交力を引き続き強化してまいります。国際社会での存在感を一層高めるよう、予算を効果的に活用し、日本の「正しい姿」や多様な魅力を戦略的に対外発信するとともに、親日派・知日派の発掘・育成を強力に推進します。主要国における広報文化外交拠点、ジャパン・ハウスの創設を推進します。また、日系人との協力の強化にも注力します。
結句
この2年間の様々な外交成果は、オールジャパンで取り組み、世界各国との信頼関係を一つ一つ積み重ねてきたからこそ得られたものです。そして、国と国との関係である外交を支えるのは、結局のところ、人と人との絆です。今後も精力的に各国外相等と意思疎通を図り、絆を大切にしながら、この2年間培った信頼関係を基に外交を進め、一つ一つの外交課題で着実に結果を出してまいります。
議員各位そして国民の皆様の御理解と御協力を心よりお願い申し上げます。
[全文引用おわり]
[財務省ウェブサイトから全文引用はじめ]
第189回国会における麻生財務大臣の財政演説
平成27年2月12日
平成二十七年度予算の御審議に当たり、財政政策等の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。
(日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方)
安倍内閣では、日本経済の再生に向けて、「三本の矢」からなる経済運営を一体的に推進してまいりました。こうした政策の下、有効求人倍率は二十二年ぶりの高水準となり、企業の経常利益は過去最高水準となるなど、「経済の好循環」が確実に生まれつつあります。そして「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」を実施し、足元の景気状況に対応しつつ、地方に経済成長の成果を広く早く行き渡らせてまいります。
これに加え、三年目に入った安倍内閣の重要課題として、人口減少の克服と地方の創生に本格的に取り組み、各地域がそれぞれの特徴を生かして、自律的で持続的な社会を形成することを促してまいります。
また、経済の好循環を確立するためには、昨年末の政労使会議における三者の共通認識を踏まえ、賃上げの流れを継続するとともに、生産性の向上や賃金体系の見直しを進めていくことが重要です。
あわせて、コーポレートガバナンスの強化や法人税改革、岩盤規制の撤廃など、攻めの姿勢で成長戦略を果断に実行していくことで、日本経済を確実な成長軌道に乗せてまいります。
民需主導の持続的な経済成長を実現するためにも、また、日本銀行が現在取り組んでいる金融緩和を円滑に進める上でも、財政の持続可能性を維持することは必要不可欠です。
安倍内閣におきましては、経済成長に加え、歳出・歳入両面からの取組により、着実に財政健全化を進めてまいりました。このため、歳入面では、強い経済の実現を目指した取組を進めることにより、税収を増加させるとともに、社会保障の充実・安定化のため昨年四月に消費税率を八%に引き上げました。また、歳出面では、社会保障の「自然増」を含め、歳出全般にわたり聖域なく徹底的な見直しを行ってまいりました。こうした取組により、平成二十七年度予算は、国債発行額が平成二十一年度当初予算以来の三十兆円台となり、公債依存度は約三十八%に下がるとともに、二○一五年度の財政健全化目標を達成する予算となっております。
一方で、公的債務残高がGDPの二倍程度までに累積するなど、日本の財政は、極めて厳しい状況にあります。引き続き、歳出・歳入両面における最大限の努力を行わなければなりません。
消費税率の一〇%への引上げは、経済状況等を総合的に勘案し一年半延期することといたしましたが、社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場及び国際社会における国の信認を確保するため、景気判断条項を付すことなく、平成二十九年四月に消費税率の一〇%への引上げを確実に実施いたします。そうした状況をつくり出すという決意の下、経済運営に万全を期してまいります。
そして、国と地方を合わせた基礎的財政収支を二〇二〇年度までに黒字化するという目標をしっかりと堅持し、その達成に向けた具体的な計画を本年夏までに策定することとしております。その策定に当たっては、安倍内閣のこれまでの取組をさらに強化し、デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革の三つの柱を軸に検討を進めてまいります。
これらの取組を通じて、経済再生と両立する財政健全化を実現してまいります。
(平成二十七年度予算及び税制改正の大要)
続いて、平成二十七年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。
平成二十七年度予算は、経済対策・平成二十六年度補正予算や平成二十七年度税制改正とあわせ、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算です。地方創生、子育て支援など、日本の諸課題への対応を強力に推進するとともに、社会保障の「自然増」を含め聖域なく見直しを行い、歳出の徹底的な重点化・効率化を図っております。
基礎的財政収支対象経費は、約七十二兆九千億円であり、これに国債費約二十三兆五千億円を加えた一般会計総額は、約九十六兆三千億円となっております。
一方、歳入につきましては、租税等の収入は、約五十四兆五千億円、その他収入は、約五兆円を見込んでおります。また、公債金は、約三十六兆九千億円となっており、前年度当初予算に対し、約四兆四千億円の減額を行っております。
次に、主要な経費について申し述べます。
社会保障関係費につきましては、消費税増収分等を活用し、平成二十七年四月から子ども・子育て支援新制度をスタートさせます。また、医療・介護サービスの提供体制改革を推進いたします。介護サービス料金改定に際しては、介護職員の処遇改善や良好なサービスに対する加算を行いつつ、全体としては引き下げることで、介護保険料の上昇を抑制し、利用者の負担を軽減いたします。
文教及び科学振興費につきましては、グローバル人材育成や国立大学改革等を推進するとともに、無利子奨学金や幼稚園就園奨励費補助等の施策を充実させることとしております。また、国際的な産学官共同研究拠点の形成等のイノベーションシステム改革を推進してまいります。
地方財政につきましては、地方の税収増を反映して地方交付税交付金等を縮減しつつ、地方の一般財源の総額について、社会保障の充実分等を増額し、地方に最大限配慮しております。
防衛関係費につきましては、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している状況を踏まえ、中期防衛力整備計画に基づき必要な手当を行い、警戒監視能力の強化及び島嶼部攻撃への対応の強化等を図ることとしております。また、沖縄の基地負担軽減等のための在日米軍再編事業につきましても、着実に推進することとしております。
公共事業関係費につきましては、国民の命と暮らしを守る防災・減災対策やインフラの老朽化等の課題に対応するため、引き続き投資の重点化・効率化を図りつつ、真に必要な社会資本整備等に取り組むこととしております。
経済協力費につきましては、法の支配や民主化等の普遍的価値の共有に向けた協力や途上国と日本の経済成長のための協力などを進めつつ、ODA全体の事業量の確保を図っております。
中小企業対策費につきましては、革新的なものづくりに向けた研究開発等の支援を充実させるほか、中小企業・小規模事業者の資金繰り対策等にも万全を期することとしております。
エネルギー対策費につきましては、再生可能エネルギーの導入拡大及び省エネルギーの推進に向けた支援に重点を置くほか、国内資源の開発や海外資源の権益確保、原子力規制・防災対策を推進することとしております。
農林水産関係予算につきましては、農地中間管理機構を通じた担い手への農地集積・集約化などの構造改革を進めるとともに、輸出促進、六次産業化の推進等、農林水産業の競争力強化策への重点化を図ることとしております。
治安関係予算につきましては、安全で安心して暮らせる社会の実現に向けて、警察活動基盤の充実や再犯防止対策の充実等を図ることとしております。
国家公務員の人件費につきましては、給与改定や給与制度の総合的見直し、定員純減等を的確に予算に反映しております。
東日本大震災からの復興につきましては、被災地の復旧・復興の加速に全力で取り組んでいくこととしております。このため、平成二十七年度東日本大震災復興特別会計において、歳出歳入いずれも約三兆九千億円を見込んでおります。
平成二十七年度財政投融資計画につきましては、中小企業・小規模事業者や地方公共団体などに必要な資金を適切に供給するため、総額約十四兆六千億円としております。
借換債等を含む国債発行総額につきましては、約百七十兆円と、依然として極めて高い水準にあり、財政規律を維持しつつ、国債管理政策を適切に運営してまいります。
平成二十七年度税制改正におきましては、デフレ不況からの脱却・経済再生に向けた税制上の対応、地方創生に係る税制上の対応、消費税率一〇%への引上げ時期の変更、BEPSプロジェクト等の国際的取組を踏まえた税制上の対応、震災からの復興支援のための税制上の対応等を行うこととしております。
具体的には、成長志向に重点を置いた法人税改革として、課税ベースを拡大して税率を引き下げることで、企業が収益力を高め、賃上げに積極的に取り組むよう促してまいります。消費税につきましては、税率一〇%への引上げ時期を平成二十九年四月とすること等としております。さらに、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税制度の延長・拡充や地方拠点強化税制の創設等を行うこととしております。
(むすび)
以上、財政政策等の基本的な考え方と、平成二十七年度予算及び税制改正の大要について御説明申し上げました。
経済再生と財政健全化の両立を実現するためには、本予算の一刻も早い成立が必要であります。
何とぞ御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
安倍内閣におけるこれまでの取組が実を結び、日本経済及び日本国民は希望と自信を取り戻しつつあります。しかし、経済再生も財政健全化もこれからが正念場です。それらを実現するためには、日本の潜在的な力を開花させ、グローバル化や人口減少の下で日本や地域が直面する課題に、国民一人一人が知恵を絞り、一致協力して乗り越えていくことが鍵となります。私も全精力を注ぎ、不退転の決意で挑戦を続けてまいります。
国民各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。
[全文引用おわり]
[内閣府ウェブサイトから全文引用はじめ]
第百八十九回国会における甘利内閣府特命担当大臣(経済財政政策)の経済演説
平成二十七年二月十二日
一.はじめに 経済財政政策を担当する内閣府特命担当大臣として、その所信を申し述べます。
二.経済財政運営の基本的考え方 (景気の現状認識と今後の見通し) 安倍内閣では、長引くデフレからの早期脱却と経済再生を図るため、「大胆な金融政策」、「機動的な財 政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の「三本の矢」を一体として強力に推進してきました。こうした政策の下、有効求人倍率は二十二年ぶりの高水準、名目雇用者報酬が十七年ぶりの高い伸びとなるとと もに、企業の経常利益は過去最高水準、上場企業のROE(自己資本利益率)は政権発足時の約一・五倍 となり、倒産件数は二十四年ぶりに年間一万件を下回りました。日本経済は引き続き緩やかな回復基調が 続いていますが、足下では、個人消費などに弱さがみられています。この背景には、消費税率引上げに伴 う駆け込み需要の反動減や夏の天候不順の影響に加え、輸入物価の上昇、さらには、消費税率引上げの影 響を含めた物価の上昇に家計の所得が追い付いていないことなどがあると考えられます。 本日閣議決定した政府経済見通しでは、平成二十七年度の日本経済について、雇用・所得環境が引き続 き改善し、好循環が更に進展するとともに、原油価格低下などにより交易条件も改善する中で、堅調な民 需に支えられた景気回復が見込まれ、経済成長率は実質で一・五パーセント程度、名目で二・七パーセン ト程度と見込んでいます。 一(当面の経済財政運営) 現下の経済情勢等を踏まえ、経済の脆弱な部分に的を絞り、かつ、スピード感を持って対応を行うこと 年 で、経済の好循環を確かなものとするとともに、地方にアベノミクスの成果を広く行き渡らせるため、昨 十二月末に「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」を閣議決定しました。 本緊急経済対策は、現下の経済情勢等を踏まえた生活者・事業者への支援、地方が直面する構造的課題 等への実効ある取組を通じた地方の活性化、災害復旧・復興加速化など災害・危機等への対応などを内容 としており、策定の趣旨に鑑み、スピード感を持って具体化を図ってまいります。 また、政労使会議において、政府の環境整備の取組の下、経済界による賃上げへの最大限の努力や、取 引企業の仕入れ価格の上昇などを踏まえた価格転嫁や支援・協力についての総合的取組、労使双方による サービス業の生産性向上への一致協力した取組などに合意しました。今後もフォローアップを行うことに より、 賃上げの流れを今年の春も、 また翌年の春も継続させ、 経済の好循環の拡大を目指してまいります。 日本銀行においては、昨年十月に「量的・質的金融緩和」の拡大を決定するなど、二パーセントの「物 価安定の目標」を実現するための取組を進めているところです。政府としては、経済・物価情勢を踏まえ つつ、この目標を実現することを期待します。 (成長戦略の実行・実現) 二安倍内閣が進める成長戦略については、スピード感を持って、強力に実行・実現していくことが極めて 重要です。 このため、昨年十二月末、日本経済再生本部において、 「アベノミクス成長戦略の実行・実現について」 かに具体化し、実行・実現する方針を取りまとめました。さらに、産業競争 雇用、医療、エネルギー等のいわゆる岩盤規制の改革を始めとして、成長戦略に掲げられた各施策を速や として、 我が国の社会経済の構造を変革し、 世界で最もイノベイティブな国となるよう目指すため、 農業、 力強化法に基づき、 「産業競 争力の強化に関する実行計画」の改定を閣議決定したところであり、成長戦略の各施策の確実な実行に取 り組んでまいります。また、法人税を成長志向型の構造に変えるため、平成二十七年度には、法人実効税 率を二・五一パーセント引き下げることとし、引き続き、数年で法人実効税率を二十パーセント台まで引 き下げることを目指してまいります。 健康・医療については、日本医療研究開発機構の本年四月の設立に向けて必要な準備を進めるなど、先 般、閣議決定された「健康・医療戦略」を着実に推進してまいります。 一昨年の「日本再興戦略」策定以降、先の臨時国会までに、四十本を超える成長戦略関連法が成立しま 法案を した。これらの法律をしっかりと実行するとともに、引き続き、本通常国会でも成長戦略の実行に必要な 提出してまいります。 また、産業競争力会議で成長戦略進化のための検討を進め、年央の成長戦略の改訂を目指してまいりま す。 三さらに、民間投資の喚起による経済成長の実現のため、PPP/PFIの抜本改革に向けたアクション プランの実行を加速してまいります。 市民活動の促進については、地域の課題解決や活性化の重要な担い手であるNPOの育成や寄附文化の (TPPの推進) 醸成等を通じ、活力あふれる共助社会づくりを進めてまいります。 TPPは、アジア太平洋地域において、普遍的価値を共有する国々と、二十一世紀型の新たな経済統合 ルールを構築する野心的な試みであり、この地域の成長の起爆剤になり、人々の暮らしを豊かにすると同 時に、我が国経済の発展にも寄与するものです。 昨年十一月に、北京で開催されたTPP首脳会合及び閣僚会合では、交渉の終局が明確になりつつある ことが確認され、早期妥結に向けた大きなモメンタムができました。 我が国としては、交渉の早期妥結へ向けて努力し、国益をしっかりと最終的な成果に反映すべく全力を 挙げて交渉に取り組んでまいります。 (経済再生と財政健全化の両立に向けた取組) 強い経済は、日本の国力の源泉です。これまで述べた施策を着実に実施することにより、経済の好循環 を確かなものとし、消費税率の十パーセントへの引上げを平成二十九年四月に確実に実施してまいります。 四引き続き経済再生との両立を図りながら、財政健全化の取組も着実に進めてまいります。来年度予算案 においては、新規国債発行額を六年ぶりに三十兆円台とし、国の一般会計の基礎的財政収支が今年度より 四・六兆円改善しました。国と地方を合わせた基礎的財政収支赤字対GDP比半減目標の達成も見込まれ ます。財政健全化に向けて着実に前進しており、今後も歳出・歳入両面の取組を進めてまいります。二〇 二〇年度までに国と地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化するという財政健全化目標の達成に向け、経 済再生と財政健全化の両立を実現すべく、経済財政諮問会議において検討を進め、具体的な計画を本年夏 (社会保障・税一体改革の推進) までに策定してまいります。 少子高齢化が進展する中で、社会保障の安定財源確保と財政健全化を同時に達成する観点から、引き続 き、社会保障・税一体改革に取り組みます。来年度予算案においては、子ども・子育て支援を始め社会保 障の充実について、可能な限り予定通り実施することとしております。また、世界に誇るべき社会保障制 度を次世代に引き渡していく責任を果たすため、平成二十九年四月には確実に消費税率十パーセントへの 引上げを実施するとともに、社会保障制度改革のスケジュールに沿って社会保障の充実・安定化に取り組 むなど、改革を推進してまいります。さらに、医療・介護情報の「見える化」を進め、各地域の状況を比 較した結果も踏まえて支出の効率化・適正化を図るとともに、有識者からなる社会保障制度改革推進会議 において、二〇二五年を展望した中長期的な改革の検討を進めてまいります。 五三.むすび 安倍内閣の至上命題は、十五年以上にわたって日本を苦しめてきたデフレからの脱却を図るとともに、 経済再生と財政健全化の両立を実現することです。そのためには、企業収益の拡大が賃金の上昇や雇用の を 拡大につながり、消費の拡大や投資の増加を通じて更なる企業収益の拡大に結び付くという経済の好循環 力強く回転させていく必要があります。 本年はまさに正念場の年であり、これまで以上にアベノミクスを強力に推進・展開することにより、全 国 国民の皆様と議員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。 津々浦々まで景気回復を実感していただけるよう、全力を尽くしてまいります。
[全文引用おわり]