8月○日 入院生活4日目 朝
看護師「○○さん、おはようございます。検温と酸素濃度計りましょうね。」
自分「体温はさっき計りました。6度3分で平熱です。」
看護師「はーい」
看護師が標準値に落ち着いた血中酸素濃度を確認しながら言った。
「うん、順調に回復してますね。これなら一週間で退院できますよ。」
自分「本当?よかった…」
担当医からも、一週間で退院できるように頑張りましょう。そう言われていたので一安心だ。肺の痛みと味覚、嗅覚異常は相変わらずだが。
午後
会社から連絡。多分、労災の件だろう。
就業が原因で感染したら労災が下りるのだ。入院前に担当者から言われていたのを忘れていた。
担当者
「○○さん、今回は大変でしたね。労災申請書、送りましたんで、記入お願いします。」
意外、ちゃんとやってくれるのな、ウチの会社。
後日、会社側の記入漏れと数字入力ミスが発覚し、書き直しさせられた事も書いておこう。(前言撤回)
夜
「生きてる?」
元、会社の先輩、ZさんからLINEだ。歳は五十過ぎで、若い時はヤンチャしていた感じだ。今時珍しい、昭和の豪傑といったところか。
一年ほど前だろうか?持病が悪化して、退職してしまった。辞めてからもたまに連絡を取り合ったり、食事に行ったり、交流は途切れなかった。
先輩には、自分が濃厚接触者から陽性患者になったことは伝えたが、入院した事は伝えてなかった。
LINE
自分「お疲れ様です。あれから入院する事になりまして、いま○○病院にいます。昨日まで酸素吸入してました。今は点滴治療してます。」
Z先輩「マジか、でも入院できてよかったな。退院したら飯でも行こう。俺、ワクチン二回打ち終わってるから。」
自分「了解です。また連絡しますね。」
そっか、あの人、基礎疾患持ちだから優先的に接種できたのか。
実はZ先輩はM西の専属の助手だった。使えない助手は嫌だと言って、仕事ができる助手を勝手に連れていったりするくらい我が儘でせっかち、それでいて頻繁にミスをする仕事ができないM西。(なんせ馬○ですから)
そんなM西を先輩は遠慮なくどやしつけることができる人だったのだ。先輩は仕事ができるので、上司がM西がやらかさないための監視役として自然と組ませるようになっていった。
しかし、先輩が退職してからは、自分が先輩の代わりにM西と組む機会が増えた。
Z先輩が今も辞めていなかったら、もしかしたら自分ではなく、先輩が感染していたかもしれない…
ちょっとしたことで、人生って変わってしまうんだな。
なんとなく、やりきれない、やるせない気分になりながら、ベッドに横になり、そのまま寝てしまった。
続きます