QOLなどと言う言葉を覚える予定は私の人生の中では無いはずだった。事故、災害そして病気は誰もが他人の事を
目の当たりにしていても『自分には起こるはずはない』と決め込んでいる。そして自分がそういう場面に遭遇した
後は神妙になり他人に対して説く側に回る。
最初から『君子危うきに近寄らず』と、あるようにしておればよかったのに。やはり人間は可謬性の生き物なのだ。
常に過ちと隣り合わせ、過ちを背中に背負いながら生きている。
私は身体に対する間違いを犯し続けたのだろう。5年前、最初に異変を感じてから1か月もしない内に自分で食道
か胃にがんが出来ているに違いないと自己診断した。自分は癌にかかるはずはないと信じ切っていたし、癌をとて
も恐れていた。友人2人は肺がんで、義兄も定年退職後に肺がんで、古くからの知己、糸さんは59歳の時スキル
ス癌にやられたのを近くで見守っていたから、癌の結末がどのようなものかその一端を知っていた。
短絡的に癌=死に近い感覚で『癌になったら治癒して生存し続ける』ことなど不可能という観念に支配されていた
から癌は怖かった。それなのに自己診断に至る経過は自分でも信じられないほど冷静だった。
食道がんや胃がんが自分の身体に蔓延っている。担当医は『ネットや書で調べてセカンドオピニオン』の道を選択
できると説明してくれたが、私は素人が齧った情報を持ってセカンドオピニオンに対して何を求めることが出来る
のか、出来るはずはないと自分流の答えを出した。不都合な情報に出会う事は間違いなさそうだったから手術を終
えるまで食道がん、胃がんについて今以上の知識を一切持たないで戦に臨んだ。
5年生存率40%の壁を乗り越えて今も朝を迎えている。死を考えたことは一度もないが当時からみれば『転移』『再
発』が追いかけてくるのではないかと心配の種は尽きず途轍もなく長かったように思う。幸いにも術後の回復は至
極順調で手術による機能低下、何らかの影響なども限定的で生活に大きな支障となるものはない。
そうした事で恐らく一生、付き合わざるを得ない症状は
1. 逆流
就寝中、頭の位置が胃と水平近くになると胃酸が逆流して喉にへばり付き、耳の奥の方が痛い感じになる。(無
意識の出来事だから正確にはどんな位置関係かはわからない)
少し水を飲むか、そのまま10~15分ほどじっと耐えていれば自然に治る。
2. 規則的な排便
術前から快便、殆ど毎朝きちんとしていた。術後、1年くらいは何べん、下痢気味となり可能な限り朝の時間
にトイレに行かないと外出先で急にトイレに行きたくなることがあった。暫くは外出先のトイレの有無を気に
していた。最近はきちんといかないと便秘気味になる。
3. 右手薬指がカックン指
原因不明。術後からこの症状が出始めMRI/レントゲンでも異常は見当らない。
指の第2関節が曲がりにくくカックンとなる。
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冊子:食道・胃の多重がんと闘うホームページ