冬
狩猟を始める前、元旦の行事は美保関の内防で釣り初めをするのが恒例になって
いた。小雪混じりであっても凍える手で餌をつけタナゴを釣る。別にタナゴと絞って
いる訳ではなくご祝儀みたいなものだから何でもいい。丁度、それにタナゴがあたり
恒例になった。
サヨリも時々、顔を出し俄かに五目釣りになってしまうが『今年もよろしくの挨拶』だ。
美保関には古くから漁業,海上安全の神さんとしてエビスさんと三穂津姫(みほつひ
め)が祭られている美保関神社がある。また、安来節で歌われる関の五本松も有名
である。今は全て枯れてしまい見る姿はないが、なお多くの観光客で賑わう。
朝のちょっとした時間だけやって家路につく頃は、美保関神社へ初詣に向かう長蛇
の列ができる。それを尻目にスイスイと走る。子供はお年玉を待っていることだろう。
家に着き、我が家の元旦が始まる。
厳寒の中、手なしイカ
冬は海が荒れ低調になる、釣り人も減って閑散としている。荒れた日本海に突き出す
防波堤に押し寄せる波を見ていると恐ろしくも見え、心洗われる殊勝な気持ちになる。
手結浦(たいのうら)は冬に手なしイカが釣れる。ここではゴンガラに魚かイカの身を巻
きつけ甲イカ釣りと同じ容量で巻きとる。この場所は岩場で滑りやすいのでどんなこと
があっても無理は禁物だ。何年かに1人は、鉄則を破り、命を落している。
寒い中の夜釣りだからカイロを背中に入れての奮戦になる。釣れても3杯どまりで大き
くは望めなかったが何もすることがなく釣りをしたくなったら出かける程度だった。
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