『経済評論家の父から息子への手紙』(山崎元著 Gakken)を読みました。
経済評論家の山崎元さんは、1958年北海道生まれなので私と同い年。
札幌南高校から東大へ進学し、卒業して三菱商事に入社した後に野村投信、住友生命など12回もの転職をしつつ、その間経済解説や資産運用のコンサルタントとしてメディアに登場するようになりました。
答えを先に言うと、山崎さんは今年2024年1月にガンのために亡くなりました。
2022年に喉頭ガンがわかり治療をしたのですが、2023年にガンが再発し余命を感じたときに、東大に合格・進学したことを祝った息子への手紙を書きました。
それを「我ながら良い手紙になった」と出版社に見せたことが、「これをベースに若者たちへのメッセージを本にしませんか」という話になり、余命3か月あれば書こうということで執筆したのがこの本です。
余命を感じていた中だったでしょうが、本書の中にもしばしば登場するように「変えられない過去はサンクコストとして諦めればよい」と、暗いところが一切ありません。
それよりは、前に向かって未来に何が得られるかという視点に貫かれていて、それは生前の山崎さんの経済コンサルタントとしての生き様に合致したものになっています。
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内容は、自分の人生経験から、「第一章 働き方・稼ぎ方」、「第二章 お金の増やし方と資本主義経済の仕組み」として、株式投資の意味とそれの利用の仕方、また投資をするときのコンサルタント的な指導がふんだんに盛り込まれています。
そのうえで父親らしいアドバイスがちりばめられた「第三章 もう少し話しておきたいこと」と「終章 小さな幸福論」で著者の人生哲学が語られます。
山崎さんは幸福の源について、「人の幸福感は100%、『自分が承認されている感覚(「自己承認感」と呼んでいます)』でできていると思う」と結論付けました。
また「モテ具合」も重要のような気がする、とも書いています。
そして「モテるための秘訣は、自分を語らずに相手に興味を示してひたすら聞くことだ」とも。
息子への結論は、「モテる男になれ。友達を大切にしろ。上機嫌で暮らせ!」ということで、お金などはそれを実現しやすくするための手段でしかない、と。
お金などは、幸せを実現できる程度にあれば良くて、多ければ多いほど良いとか、それを目的にするようなものではない、とも。
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巻末には、実際に著者が息子さんに当てた手紙の全文が掲載されています。
涙を誘うのは以下の一節でした。
"一つだけお勧めしておこう、子供はできるだけ早く持つと良い。…世間でいうと叱られそうだが、特に息子はいい。自分の息子が可愛いと思う時に、かつて自分の父親は自分のことをこんなに可愛いと思っていたのかと、感じ入るときがあるのだ"
親から自分、自分から子供へと世代が移り変わってゆくときの親の心情を表して余りある文章です。
働いて、稼いで、幸せに生きるための父親からのメッセージ。
ご一読をお勧めします。
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