ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート

「神話探偵団~スサノオ・大国主を捜そう!」を、「ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート」に変更します。雛元昌弘

神話探偵団110 白国の里のルーツ

2011-03-16 20:09:18 | 歴史小説
大国主の妻・木花咲耶媛にちなんだ名前「雲箇(うるか)の里」を今に伝える閏賀橋:宍粟市一宮町、向こう正面に見える富士山型の神那霊山は宮山、その右手の杜は伊和神社

話をしているうちに、車は白国の集落に入った。
「先に、白国神社を見に行きましょう」
ヒメの案内で白国神社に向かい、車を降りて神社の境内に向かった。
「なぜ、新羅(しら)からきた祖先が、スサノオの子の大年や大国主の妻の木花咲耶媛を祀るようになったのかしら」
マルちゃんの質問は続く。
「大年の母の神大市比売も大国主の妻の木花咲耶媛も大山祇の一族だよね。ということは、白国の祖先は神大市比売~木花知流比売~木花咲耶媛と繋がる大山祇神と関わりが深い、ということになるのかな」
カントクも日本神話の神々には詳しい。
「白国神社背後の倉谷山のさらに上の広峯神社にはスサノオと五十猛(イタケル)命の親子が祀られていますが、日本書紀はこの親子が新羅、当時の辰韓に行ったと伝えています。鉄の交易を通してスサノオ~大国主一族は辰韓と古くから交流があり、新羅から招かれた人々がこの地のスサノオや大国主の子孫と結婚して定住し、スサノオの子の大年や大国主の妻の木花咲耶媛を祀った可能性があります」
ヒナちゃんは答えをちゃんと用意している。
「播磨国風土記には、韓(から)国より来た天日槍(アメノヒボコ)命が各地にでてくるけど、白国のみなさんは天日槍の子孫、という言い伝えはないの?」
長老がめずらしく口を挟んだ。
「新羅からきた、としか伝わっていないなあ」
ヒメの家には伝わっていないようだ。
「播磨国風土記は大国主が天日槍命に宇頭川の海中に宿るところを許したというような話や、両者が揖保郡の粒(いいぼ)丘や宍粟郡、神埼郡などの各地で争った話がでてきますよね。一方、記紀はこの天日槍を新羅の王子と伝え、日本書紀は垂仁天皇の時代のこととしていますよね。どちらが正しいのでしょうか?」
高木は疑問を投げかけた。
「播磨国風土記に書かれた大国主と記紀に書かれた天皇の時代にでてくる同一人物については、木花咲耶媛や火明命の例をみても、より古い大国主時代の人物を、後に天皇家の歴史に組み込んだ、と思います。逆に、天皇家の権力が確立する時代に、天皇家ゆかりの人物を、大国主の伝承に組み込むことはできないと思います」
ヒナちゃんの説明は納得できるものであった。
「しかし、新羅が成立したのは、大国主の時代よりもずっと後の4世紀だよね。天日槍は韓国から来たことになっており、これだと1~3世紀頃の大国主の話と合ってくる」
長老らしい意見だ。
「スサノオ・大国主時代に辰韓(後の新羅)からきた人たちが、4世紀以降に『新羅』の国名から白国の名前で呼ばれるようになったのだ思います。古事記によれば、天日槍は北の但馬、今の豊岡市出石に移りますから、白国の人たちはそれより前にこの地に定住していたと思います」
ヒナちゃんの推理はよどみない。
「白国の人たちは、何をして暮らしていたのかしら」
今回はマルちゃんが質問役である。
「おそらく製鉄技術を持ち、この地を開拓したのではないかと思います」
「それって、根拠があるの?」
「播磨国風土記の佐用郡では『12の谷あり。皆、鉄を生産する』と書かれたすぐ後に、大国主の妻の佐用都比売命が『この山に金の鞍を得たまいき』という表現があります。わが国の製鉄の起源はスサノオ~大国主の時代に遡る可能性がないとは言えないと思います」
ヒナちゃんも今度は歯切れが悪い。
「ヒメの家には、鉄とか剣の話とか、スサノオ・大国主の話は伝わっていないの?」
長老は伝承にこだわる。
「聞いたことはないなあ」
あまりにも古い話のようだ。
「白国に古い製鉄遺跡はないの?」
マルちゃんがねばる。
「最古級の製鉄遺跡というと、ずっと後の6世紀の岡山県総社市の千引かなくろ谷遺跡になる。スサノオ・大国主の時代の遺跡は見つかっていないね」
長老の解説は動かしようがない。
「製鉄起源がスサノオ・大国主時代に遡る可能性がある、ということにして、今後の発掘の成果を見守りましょうよ」
マルちゃんがまとめた。
「じゃあ、家に向かいましょう」
車に乗り込むとすぐにヒメの家であった。ヒメの実家は土塀に囲まれた目立たない門構えであったが、中に入ると前庭は広く開放的で、池と築山が落ち着いたたたづまいを見せていた。母屋は広縁に囲まれた開放的な造りで、玄関を開けると「ただいま」とヒメが声をかけた。
「まあ、よくいらっしゃいました。娘がお世話になっています。お疲れでしょう、さあ、どうぞお上がり下さい」
活発なヒメの雰囲気と較べて、おっとりした感じの、思ったより若く見える母親で、高木はびっくりした。元は隠居部屋であったような、外れの2部屋に案内され、高木・長老・カントクとヒナ・マルちゃんと分かれて荷物を置き、庭を見ながら一息を入れた。


※文章や図、筆者撮影の写真の転載はご自由に(出典記載希望)。
※日向勤著『スサノオ・大国主の日国―霊の国の古代史』(梓書院)参照
※参考ブログ:邪馬台国探偵団(http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/)
       霊の国:スサノオ・大国主命の研究(http://blogs.yahoo.co.jp/hinafkinn/)
       霊(ひ)の国の古事記論(http://hinakoku.blog100.fc2.com/)
       帆人の古代史メモ(http://blog.livedoor.jp/hohito/)

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2 コメント

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まんまん大津波の大洪水だったよ!笑 (たくや)
2011-03-26 01:41:26

クリちゃんペロペロしってきったよぉぉぉ!!!!
時間なくてハメハメできなかったけど、3万もらってウマウマ!!(゜∀゜)
ていうかコレ、ち○こ突っ込んだら、金額やばいことになるんじゃね?笑
http://f57-qt2.mik.blue-ski.info/
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修理固成の語部 (出雲街道ツーリングX)
2020-10-25 02:09:14

やはり古事記神話の謎は天皇礼賛だけではないいびつな構造をしているある種の正直さが心惹かれるのでしょう。
古事記神話の構造をザックリいうと高天原の2度の地上への介入がその構造の中心となっている。1度目はイザナギとイザナミがオノゴロ島を作り、国生み神生みを行い、次にイザナミのあとを継ぎスサノオが
根之堅洲国で帝王となる。第二の高天原の介入はアマテラスによる九州への天皇の始祖の派遣とそれに続く天皇を擁する日本の話でこれは今も続いている。
これらの2度の高天原の介入に挟まれた形で出雲神話がある。天皇の権威を高めるのに出雲があまり役に立たないのに古事記で大きく取り上げられている。その神話の構造の歪さに我々は心を惹かれる。
たとえば天皇も大国主も大刀(レガリア)の出どころはスサノオでありその権威の根源を知りたくなってしまう。そうなると島根県安来市あたりの観光をしてしまいたくなる。
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