ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート

「神話探偵団~スサノオ・大国主を捜そう!」を、「ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート」に変更します。雛元昌弘

倭語論10  「男尊女卑」について

2020-02-03 18:32:20 | 倭語論
 前回「倭語論9 『卑』字について」において、孔子の「男尊女卑」につい書きましたが、補足します。
私はわが国の古代史は呉音や漢音でなく、倭音で読み、倭流の漢字用法で解釈する必要があると考え、「漢字分解」により倭人がどのように漢字を使ってきたか、にこだわってきました。
 その発端は、狭山事件の脅迫状に見られた極めて珍しい「万葉仮名的漢字と片仮名表記」の両方が、なんと松尾芭蕉の『奥の細道』の「さみ堂礼遠あつめてすゝしもかミ川」と与謝野晶子の詩集の表紙『ミだ礼髪』にみられたことに気づいたからです。
 そこで、「奥の細道」の分析を始め、梁山泊で知りあった菊池孝介氏により「奥の奥読み奥の細道」を『島根日日新聞』に連載させていただきましたが、さらに、芭蕉の「栗といふ文字は、西の木とかきて西方浄土に便ありと、行基菩薩の一生杖にも柱にも此の木を用ひ給ふとかや」に出会い、「漢字分解」による意味解釈に進むようになりました。
 芭蕉と同じように紀元前に漢字を覚え始めた倭人は、漢字分解によって漢字の意味を理解してきたに違いないと考えたからです。念のために近くの埼玉大学の中国人留学生に聞いてみましたが、彼女は中国人は漢字の構成からその意味を読み取る、と述べていました。
 ここで孔子の「男尊女卑」についてさらに漢字分解を進めてみたいと思いますが、「尊」字は「酋(酒樽)+寸」で、「卑」字は「甶(頭蓋骨)+寸」です。「尊」は酒樽を、「卑」は祖先霊が宿る頭蓋骨を「寸(手)」で支えるのです。

「男尊女卑」の「尊」「卑」字の漢字分解



 孔子の「男尊女卑」は対句で、「女は頭蓋骨を掲げ、それに男は酒を捧げる」という宗教上の役割分担を表した意味になります。死者の頭蓋骨を女が奉げて祀り、男はそれに酒を供えるのです。「姓」=「女+生」からみても、祖先の祀りは女が担うのであり、宗教上の役割は女が主、男が従になります。
 「男尊女卑」を「男は尊い、女は卑しい」と解釈するようになったのは、女奴隷が生まれて女性の地位が下がってからであり、後世の儒家による歪曲です。孔子が高弟の子貢を評して「女は器なり」と述べ、「畳の上で死ねそうもない」とした高弟の子路を「樽」としたのは、甲乙つけがたい両者を対等に「男は樽、女は器」と祖先を祀る祭祀の役割分担を例えて述べたのです。子路を尊び、子貢を卑しいとしたのではありません。
 私は真崎守の漫画でしか『老子』を知りませんが、老子は料理人の女性を弟子にしているのに対し、これに対して孔子は「男尊女卑」と誤解していて魅力を感じませんでしたが、思想家としての孔子を見誤っていたと思います。もっとも「論語よみの論語しらず」ならぬ、「論語よまずの論語しらず」ですが・・・
 魏皇帝が「卑弥呼」に破格の「親魏倭王」の金印と曹操一族にしか持てない「金銀錯嵌珠龍文鉄鏡(きんぎんさくがんしゅりゅうもんてつきょう)」(龍は皇帝を象徴)を与えたのは、孔子の本来の意味の「男尊女卑」に基づ、「鬼道」を行う卑弥呼に格段の「親近感」を覚えたからだと考えます。私は「霊(ひ)御子」「霊(ひ)巫女」として私はこれまで書いてきましたが、その確信を深めました。(詳しくはアマゾンキンドル本の『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』参照)
 この国は「男女の格差」を示すジェンダーギャップ指数(2019年)で、世界153か国中110位、経済の分野では115位、政治は144位、中等教育就学率128位と、最貧国・後進国であることを世界中に暴露していますが、かつてこの国が女王国であった歴史を思い出し、未来を展望すべきと考えます。
 魏皇帝が女性向けの銅鏡百枚や多くの絹織物、真珠、鉛丹(口紅用か)を卑弥呼に贈り、男性用としてはわずかに刀が2本であったことをみると、邪馬台国を構成する30国の多くは女性が祖先霊の祭祀を行う女王国であったのです。

注:2019年10月27日のFBに掲載したものに加筆・修正しました。 雛元昌弘



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