４月 ２１日

　　　　　　　　　　　（　都忘れ　）



家移る都忘れを置きざりに　　　　　　　　　　　栗田やすし


教へ子の来る日よ都忘れ買ふ 　　　　　　　　　辻 恵美子


仕立て屋の都忘れの花窓に 　　　　　　　　　　加古宗也


人恋し都忘れが庭に咲き 　　　　　　　　　　　　高橋淡路女


山涼し都忘れと聞くからに 　　　　　　　　　　　阿波野青畝


雑草園都忘れは淡き色 　　　　　　　　　　　　　高濱年尾

４月 ２０日

　　　　　　　　　　　　　（　燕子花・杜若　）


綾子亡し風と遊べるかきつばた　　　　　　　　　栗田やすし


天然の風吹きゐたりかきつばた 　　　　　　　　　細見綾子



燕子花すべてを映す水つよし 　　　　　　　　　　鍵和田釉子


花売女籠に走りの杜若 　　　　　　　　　　　　　　佐野美智


湿原に水の道つく燕子花 　　　　　　　　　　　　　上田五千石


咲き揃ふ下より蕾かきつばた 　　　　　　　　　　　杉浦示圭

４月 １９日

　　　　　　　　　　　　（　手毬花　）


遅刻児に海垣間見ゆ手毬花 　　　　　　　　　　　磯貝碧蹄館


円空仏笑ませ給へり手毬花 　　　　　　　　　　　野田しげこ


手毬花手折りて妻と遊びけり 　　　　　　　　　　奥田杏午


三猿に大きく揺れて手毬花 　　　　　　　　　　　青柳志解樹


手毬咲き山村憲法記念の日 　　　　　　　　　　　水原秋桜子

４月 １７日

　　　　　　　　　　　　　　（　山法師　）


例年より早く山法師の花を見かけました



西方の霧が明るむ山法師 　　　　　　　　　　　能村登四郎


木祖村の五木の中に山法師 　　　　　　　　　　森田公司


風音を過客と聞けり山法師 　　　　　　　　　　鈴木鷹夫


白となる前のさみどり山法師 　　　　　　　　　河野美奇


山法師狛犬古りし結願寺 　　　　　　　　　　　我部敬子


甲斐駒の鉄壁なせり山法師 　　　　　　　　　　橋本榮治





花梨の花

４月 １６日

　　　　　　　　　　　　（　十二単・じゅうにひとえ　）



汝にやる十二単といふ草を 　　　　　　　　　　　高浜虚子


日を浴びて十二単衣の草の丈 　　　　　　　　　　岡本まち子


試歩の母十二単に足とどむ 　　　　　　　　　　　三澤いつ子


裳裾曳く十二単と言ふからに 　　　　　　　　　　柴崎博子


十二単小さき塔なす院の奥 　　　　　　　　　　　松本澄江


北欧の森めき十二単かな 　　　　　　　　　　　　高田風人子





西洋十二単

４月 １５日

　　　　　　　　　　　　（　藤・藤棚・藤波　）



北上のゆるき流れや藤の花　　　　　　　　　　　　　栗田やすし


天心にゆらぎのぼりて藤の花 　　　　　　　　　　　　沢木欣一


藤の昼膝やはらかくひとに逢ふ 　　　　　　　　　　　桂 信子


滝となる前のしづけさ藤映す 　　　　　　　　　　　　鷲谷七菜子


吐息めく息を眼鏡へ藤重し 　　　　　　　　　　　　　秋元不死男





山藤の房の短き奥信濃　　　　　　　　　　　　　　　　細見綾子


山藤の揺るるや憂ひこぼれたり 　　　　　　　　　　　鍵和田釉子


山藤を指しては山に深く入る 　　　　　　　　　　　　　成海 静


山藤のけむりのごとく咲き古ぶ 　　　　　　　　　　　宮津昭彦


山藤と思ふ車窓の吉野まで 　　　　　　　　　　　　　坊城 中子

４月 １４日

　　　　　　　　　　　　　（　蓮華草・紫雲英・げんげ・げんげん　）



げんげ田の畦踏みて入る石置場　　　　　　　　　栗田やすし


紫雲英田に入りて黒牛喰み始む　　　　　　　　　沢木欣一


深々と紫雲英の中に轍ある 　　　　　　　　　　　　長谷川櫂


げんげ田は農夫の座敷飯を食ふ 　　　　　　　　　品川鈴子


紫雲英野の道たかまりて川跨ぐ 　　　　　　　　　清崎敏郎


亡き母が座せしは夢かげんげん田も 　　　　　　　小川公子


紫雲英編むなるほど恋に後れたる 　　　　　　　　大石悦子


赤ちゃんは音楽が好き蓮華草 　　　　　　　　　　岩根真由美

４月 １３日

　　　　　　　　　　　（　燕・燕来る・乙鳥・つばくら・初燕　）


濁りなき離島の空や初つばめ　　　　　　　　　　栗田やすし


初燕海を背に入る峡の奥　　　　　　　　　　　　　沢木欣一


つばめ～泥が好きなる燕かな 　　　　　　　　　　細見綾子



燕が切る空の十字はみづみづし 　　　　　　　　　福永耕二


煮豆屋も墓地も町内燕来る 　　　　　　　　　　　　岡本 眸


真つ向より旧知のごとく初つばめ 　　　　　　　　平井さち子


春すでに高嶺未婚のつばくらめ 　　　　　　　　　飯田龍太






くぬぎの花

４月 １２日

　　　　　　　　　　　　　　　（　海棠　睡花・花海棠　）


海棠の明かりや寺の屋根までも 　　　　　　　　　滝沢伊代次


海棠の花より花へ雨の鵯 　　　　　　　　　　　　　阿波野青畝


海棠の咲き終る迄うつむける 　　　　　　　　　　　木村草女


花海棠散りこむ犬のミルク壷 　　　　　　　　　　　芝 由紀


海棠や道化ごころは神父にも 　　　　　　　　　　　鷹羽狩行


海棠や小鳥係の年長組 　　　　　　　　　　　　　　加藤利枝

４月 １１日

　　　　　　　　　　　　（　山吹・八重山吹・濃山吹・面影草　）


山吹の茎にみなぎり来し青さ 　　　　　　　　細見綾子


山吹の一重の花の重なりぬ 　　　　　　　　　高野素十


遠目にも山吹の黄の一重なり 　　　　　　　　星野立子


山吹や薪割る妻の一語勢 　　　　　　　　　　秋元不死男


山吹の檜垣抜け出し一枝かな 　　　　　　　　富安風生






あるじよりかな女が見たし濃山吹 　　　　　　　原 石鼎


童女とて愁ひ顔よき濃山吹 　　　　　　　　　　倉橋羊村


大屋根の崩れんばかり濃山吹 　　　　　　　　　永田耕一郎


濃山吹朝よりひかり招きよす 　　　　　　　　　　柴田白葉女


一矢射て二の矢を番ふ濃山吹 　　　　　　　　　鈴木鷹夫




白山吹
山吹とは別種で山吹は五弁、城白山吹は四弁です