徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

柄成りについて

2015-01-27 06:18:19 | 拵工作
刀剣外装のオーダーメイド時に、最も多いご相談の一つが「どのような外装を依頼すればよいのだろうか?」といった、根本的な質問です。

確かに、刀剣外装のオキテは多岐に亘り、地域ごと時代ごとに細分化されるばかりか、刀身や刀装具との相性といったトータルバランスも重要です。
さらには、ご依頼者様の身体に合わせた調整、使用用途に合わせた工作が加味され、ご予算の都合や納期との兼ね合いも影響してきますので、一般の方の中には一体自分が何をしたいのか?すら分からずに、ただただ時間だけが過ぎてしまう場合もあります。

そこで私の場合は、ご依頼にいらっしゃった方との対話を重視し、ご依頼者様を知る事から始めています。中には、当方の価値観と著しく異なることから、やむなくご依頼を遠慮させて頂く場合もございますが、全てのご要望を満たすことは難しいことから必要なステップであると考えています。

そこで、刀剣外装のオーダーメイドをお考えの方に、まず知って頂きたい打刀拵えの大分類があります。使用感に最も直結する二種類の柄前形状です。



写真は、肥後系の柄前と天正系の柄前です。
上段の肥後拵写しは、江戸肥後拵えなどと称される肥後拵えの掟を踏襲した江戸期の常備指しの写し外装(鞘は現在製作中)。下段の天正拵写しは、室町時代末期の天正様式を再現した外装(アフターケアにて里帰り中)です。

それぞれに大きな特徴があり、その最たる違いは刀装具と柄成りに現れます。刀装具は、ご覧のとおり柄頭の形状をみると一目瞭然です。

柄成りに関しては、写真の撮り方を変えてご紹介します。



露光を抑えて、シルエットを強調しました!
両者とも立鼓(リュウゴ)と呼ばれる刃方と峰方が湾曲した形状をしています。
肥後系の柄前では、気持ち立鼓が穏やかで柄頭に向けて細くなっていく傾向が見られますが、天正系の柄前では、極端な放物線を描きながら柄頭が張る様に誇張しています。

肥後拵えは、天正拵えの変形とする見方もあるようですが、写し拵えの使用感からみた大分類として、特に個性的な存在感を放つ2種類の柄前をご紹介しました。

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