徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

文化財破壊

2011-06-18 22:25:40 | 刀身研摩
昨今の古美術品の価格破壊は、目に余る物があります。特に刀剣類の価格破壊は、どうなってしまっているのでしょうか?
ネットの一般オークションサイトを拝見すると、信じられない様な安価で日本刀が売買されています。

それらネット放浪刀剣を見ていると、刀剣愛好家や武道家といった取り扱いに心得のある人ばかりでなく、玩具感覚で購入する人たちが独自の加工を施しているケースが後を絶ちません。
価格ばかりか、有形文化財たる古美術品自体も破壊の危機に瀕しているのです。
中でも多いイタズラ?は、サビをサンドペーパーやグラインダーで削って、一応に刀身を光らせた刀剣です。

それらかわいそうな刀剣類は、所有者がすぐに飽きてしまうのか、処分目的でネットオークションに出品をされているようです。
写真で判断する限り、名刀の残骸とおぼしき出品が後を絶ちません。
あまりにも悲しい刀身を見ると、修復してあげたいという気持ちがメラメラと湧き上がり、思わず入札してしまいます。

もっとも多い加工は、サンドペーパーによるサビの除去行為です。
サンドペーパーは、もっとも細かい物で#2000番ですから、サビは取れるものの仕上げ研磨を傷つけてしまいます。また、微妙な加工が出来ないため、鎬筋を蹴ってしまうのです。

サンドペーパーにより加工された刀身を修復するには、鎬筋を立たせる必要があります。
しっかり鎬が立つ頃には、相当刀身がやせてしまいます。

次に、なぜ?と思うのが、グラインダーにより平肉を落とした刀身です。
最近は、研師による下地研ぎでさえ機械研ぎを施す職人がいる程ですから、ポピュラーな加工?と言えます。
包丁の研磨などをおこなっている職人さんでしたら、きっとうまく体配を整えられるのでしょうが、研師を含め一般の不慣れな人が機械を用いると、思わぬ破損を生む危険性があります。
グラインダーの特性上、平地にテーパーがかかってナイフの様になっている刀身も見かけます。

一度落ちた平肉は二度と戻りません。修復を施そうにも大きな整形を必要とするため、刀剣としての価値を失う場合がほとんどです。

どうか、刀剣の加工はプロにお任せいただき、くれぐれも安易な加工を施さないでいただきたく切実にお願いいたします。
なお、生意気を申しますが、研師諸兄におかれましても機械研磨の導入をお控えいただくことが、日本文化の継承のために必要な心構えではないか?と考えております。

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