徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

武蔵拵

2015-09-18 23:09:43 | 拵工作
伝説の剣豪が考案したとされる刀剣外装が完成しました。



この度のご依頼は、戦時中(昭和十年代)に作刀されたお刀の略式軍刀外装を保存し、新たに拵えを製作するというものです。



ご依頼内容を吟味した結果、武蔵拵様式の外装をお作りすることになりましたが、オーナー様のご要望により、目貫は逆に配置することといたします。



武蔵拵とは、剣豪として名高い宮本武蔵の差料とされる外装様式です。
武蔵は剣術修行の傍ら、武器にも細心の注意を払っており、刀身の長さや体配、バランス、重さ、外装の形状や使用感、刀装具のデザインや実用性を入念に調整していたことが知られています。特に、刀装具などは自作に努め、今日最高位の肥後金具として愛好家の間で取引されているほどです。



そんな、計算尽くされた拵様式の復古となると、ちょっとやそっとの気持ちでは作れませんので、研究に研究を重ねて何とかそれらしい物が完成しました!
ご予算が限られる中での調整ではありますが、刀装具は縁頭・鯉口・栗型に至るまで現存する本歌と同じ素材、ほぼ同じ形状の物にこだわりました。

今回のお刀は、鑑賞の魅力たっぷりの美術刀剣ですが、戦時中の刀剣類の中には、量産兵器として殺傷能力のみに特化したものもあり、銃砲刀剣類等所持取締法(以下、銃刀法)の定めにより存在すら許されていないものが多く含まれています。

ここで銃刀法についてちょっと触れたいと思いますのでお付合い下さい。

美術刀剣類を合法的に所持するために、教育委員会への登録制度があることは皆さんもご存知かと存じます。では、いざ登録という場合、合否の鑑定基準が設けられているのですが、その「鑑定の基準」によると不合格になるものは以下の様なものとされています。

(イ) 全体的に甚だしい錆、傷、疲れ等のあるもの、又は製作が著しく劣っているもの。
(ロ) 昭和刀、満鉄刀、造兵刀等の名称で呼ばれる素延べ刀、半鍛錬刀、特殊鋼刀等であって、日本刀に類似する刀剣類で製作工程が日本刀としての工程を経ていないもの。
(ハ) 外国製の刀剣類。

ここで気になるのが、(イ)の甚だしい錆、傷、疲れです。出土刀や上古刀などの時代を経た刀剣は不合格の可能性があります。
次に(ロ)の満鉄刀ですが、満鉄刀にはランク?のようなものがあり、古式鍛錬が施されて鑑賞にも堪えうる刀身を含んでおり、一概に不合格とするには惜しい気がします。
更に(ハ)の外国製ですが、現代刀匠が海外で作刀した刀剣類を輸入する場合はどうなるのでしょうか?

上記の様な判断が難しい場合には、個別に警察が所持の許可・不許可を判断してくれます。ただし、所持の許可が認められた場合でも、これは登録とは異なるそうですので、十分にご注意が必要です。

話がそれましたが、後はお祓いを済ませて納品です!

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