瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

『何度も廻り合う』その35

2006年02月16日 22時50分51秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです。】





ギリギリ時間内で自転車を返却した後、ゾロとコテージで合流する為に、土産抱えてブルーケレンからクラシックバスに乗って行く事にした。

丁度入国して来た団体客と行き会い、車内は朝とは打って変った混雑振り。

それでもルフィは素早く1番前の席を確保して座る。

その後ろに座ったと同時にバスが発車、ガタゴト揺れながら、石畳の道を進み出した。

揺れるったってルフィの運転から比較すれば雲泥の差だわ。

滑らかに流れてく車窓からの景色を眺めつつ、その快適な乗り心地にほっとする。


「バスは良いわね……安全で、ちっとも揺れなくて。」

「そうかー?結構ゆれてると思うけどなァ??」

「……あんたの運転に較べりゃ天と地よ……この場合、勿論『天』はバスで、『地』はあんた………っつかねェ!!死ぬかと思ったわよ!!!はっきし言って!!!!
「ナミが5分以内でとう着しろっつうから、すっ飛ばして走ってやったんじゃねェか。」
だからってブレーキ1回も踏まずに爆走する!!?自転車じゃなくて、ジェットコースターにでも乗ったのかと思ったわよ!!!……本当に…よく、生きて辿り着けたものかと…ああ、生きてるって素晴しい…命が有るって、何て素敵な事なんだろう…!!」
「おんもしろかったよなァァ~~~♪俺、久々に思っ切し自転車漕いだぜ!!どうせなら初日っから乗り回したかったよなァ~~~。そうすりゃもっと色々廻れたかもしんねーし。…何でもっと早くに教えてくれなかったんだ??」

「え?そ、それは……最終日の予定に組み込んでたから…。」

「予定なんて変えりゃ良いじゃん。2日目に持って来てりゃ、1日中乗って廻れたぜ?」
「それじゃお金掛かっちゃうでしょ!?3時間超えたら延滞金付くんだから!!」
「良いじゃねェか、少しくれェ付いても。その分移動が楽になるんなら悪くねェ。」
「い、1日目はお茶飲んでイベント観て廻って、2日目はアミューズメント観て廻って、3日目は自転車借りて場内観て廻ろうって、決めておいたのよ!!」
「だから何で決めた通りに動かなきゃなんねェんだ?その場で行きてェ思ったトコ行って、やりてェ思った事やった方が楽しいんじゃねェか?」
「それじゃ効率良く全部廻れないじゃない!!」
「何で全部廻る必要有んだよ?廻れる訳無ェじゃん、2日ちょいで、こんな広いトコ。」
「あんたが全部廻りたいって言ったから、無理してでも行こうとしたんでしょォ!?」
「…まァ、そうだけどよォ~……廻り切れねェんだったら、好きなトコだけ行ったり、してたりした方が良かったんじゃねェかな~なんてな。」


無邪気に、ただ自分の考えをぶつけてるだけなのは解ってる。

ルフィの瞳に責めてる色は見えないし。

だけど……


「ルフィは……楽しくなかったんだ…今回の旅。」

「んん?…そんな事無ェぞ?すっげー楽しかったに決まってんじゃねェか♪」

「…でも、強引に引き摺られて、好きな様に廻れなくて、がっかりしてんでしょ?」



きっとゾロも、そう思ってんだ。

引き回されて、疲れるだけだって。

こんな所ちっとも面白くねェ、早く帰って寝ちまいてェなァって。

だから付いて来なかったんだ、いいかげん付き合い切れねェつって。


最初から、楽しみにしてたのは、自分だけだったんだわ。

1ヶ月前からガイドブック観たり、HP観たりして予定練ってたのに。

これでも一生懸命、2人が楽しめそうなコース考えたのに。

多分……3人で行く、最後の旅になるだろうからって。


だけど無駄だったんだ、全部!

誘うんじゃなかった…楽しんで貰えないなら、旅行なんかすんじゃなかった!!



「おい、ナミ。さっきからおどろ線背負ってて暗ェぞ。車酔いかァ?」

「……悪かったわね……無理に引き回しちゃって……せめてもっと余裕有るコース考えてたら、ゾロも付き合う位はしてくれてたかしらね…。」

「ゾロ??……充分付き合ってる様に見えるけどなァ~。」
「付き合ってくれてないでしょ!?事実、今!!」

「この3日間、修行してるあいつ見たか?」

「え?……そう言われると……見てないよな……」

「あいつ、ひまんなると修行する奴なのに。修学旅行中なんか、皆して部屋でTV観てる横で腹筋やってて、サンジがうっとうしいっつってけってたもんな。」


…確かに、普段はTPO全く気にせず、ちょっとでも間が空きゃ、竹刀振り回したり、指1本で腕立て伏せするよな奴だけどさ。


「竹刀持って来て無いし、単に疲れてやる気起きなかったんじゃ?」

「夜ねる前には、部屋でちゃんと腕立てとかやってたんだ、実は。けど今回の旅行で、ナミの前じゃ1度もしてねェだろ?」

「ゾロなりに、私を気遣ってくれてるって事…?」


……でも結局、嫌々じゃあ……


「ゾロは素直じゃねェけど、俺と一緒で、嫌な事はぜってェしねェさ。だから、好きで付き合ってるとしか、思えねェんだけどなァ。」


ルフィの言う通りだとは、思う。

こいつら、基本的に自分の気持ちに忠実と言うか。

嫌な事頼まれれば、たとえ大統領からだとしても、きっぱり拒否する様な奴等だし。



つらつら考えてて、妙に視線がチクチクと刺さって来た。

正面見るとルフィが、シートからじぃぃっと真顔で、こっちを覗き込んでいる。



「な…何?何なの??」

「なァ………おめェ、また胸でかくなっただろ?」


無遠慮にしげしげと人の胸を見詰る。


「いや、さっき思っ切し背中に抱き付いてただろ?コート着てる上からでも判るなんて、すっげーデカパイだよなァ~って…うはははははははははははははははは…♪♪」


――ゴインッッ!!!!


「……真剣気に懸けた、私が馬鹿だったわ…!!!」




バスは目指してるスパーケンブルグに到着する手前で、何故か途中停車してしまった。

不思議に思い車窓から外を見ると、前でハーフェン橋が大きく跳ね上がっていた。


「ナ!!ナミ!!何やってんだあれ!?道が、橋が…上に持ち上がっちまってっぞ!!?」

「カナルクルーザーが橋の下通り抜けてくでしょ?あのクルーザーが通行出来る様、橋が高く持ち上がる仕組になってる訳!」
「ええ!?あの船、海出ちまえるのか!?俺達が乗ったのは出なかったじゃねェか!?」

「あれは通常のカナルクルーザーじゃなくて、『カナルカフェ』っつう水門巡りのコースを行くクルーザーよ。カナルカフェって言うのは、クルーザーの中でお茶やお酒を飲んだりしながら遊覧するってもので、中でも水門巡りコースを選ぶと、ああやって水門から海まで出て行けるみたいよ。」
「んな楽しそうなもん有ったんなら何で教えてくんなかったんだよ!!?乗りたかったぞ!!!俺は!!!」

「お金が2,000円掛かるし、予約も必要だし…こうゆう優雅な乗物、あんた達には不似合いだと思ったからよ!」


乗客の多くはカップルだって聞いてた。

所要時間40分掛けて、少グループでゆったりとお茶飲みつつ遊覧。

そんな中にルフィが入ってったら、ロマンチックな雰囲気ぶち壊して、他のお客から白い目で見られるの確実だもの。


「乗りたかった……すっげー乗りたかったのに…!!」


窓に張付きクルーザー眺め、ルフィはさめざめと悔し涙を流した。


「…もう少しあんたが落ち着きの有る大人になって、また此処に来る事が有ったら乗せてあげるわよ。」



船が通った後、ハーフェン橋はまたゆっくりと元に戻り、今度は左横のスワン橋が左右に開いて跳ね上った。

橋の横に在った信号が青に変り、通行を停めてた遮断機が上がると、一斉に人や車が道に流れる。

私達が乗ってたバスも橋を渡り、ホテルヨーロッパ前のレンブラント通りを走ってった。


「運河から海にって事は…ここの運河って海とつながってんのか?」


見えるトコまで橋を観送りながら、ルフィが聞いて来る。


「そうよ。そうやって常に水を入替えて、運河の水の澱みを防いでんだって。だから此処の運河に流れてんのは海水なの。」

「へーーー…って事は、なめたらしょっぱいんだな。」




パレスに続く坂道手前、終点スパーケンブルグでバスは停まった。


着いた時には約束の時刻を数分過ぎていた。


とはいえゾロの事、どうせ未だ寝てんじゃないかと思い、特に慌てずルフィと2人、フォレストパークまでの石段をゆっくりと上った。




泊ってるコテージの前まで行くと……予想を裏切りゾロは、起きて扉寄っ掛かり、地べたに足投げ出して待っていた。


近付いた瞬間、如何にも不機嫌そうに顔を上げ、じろりと睨まれる。


――あっっ、眉間に皺寄ってる……待たされて怒ってるわね、こりゃ。


「遅ェ。10分遅刻だぞ。」

「悪ィ悪ィ♪途中でバスが信号待ちしちまったんだよ♪」

「…随分また買い込んだな、ルフィ。バッグの中全部詰めらんねェんじゃねェのか?」

「任せろ!!気合で入るさ!!!」


両手に提げた土産袋を、ゾロに向って得意気に、高々と持上げて見せる。


「バッグに気合求めたってしょうがねェだろ。」

「ジーパンはもう乾いたの?」


座ってる傍まで近付き言う。

見下ろされるのを嫌ってか、腰に付いた土埃をパンと手で叩き、ゾロが立ち上がった。


「いや、未だ完全に乾いちゃいねェ。…ドライヤー当てたりしたんだけどな。」


それで地べた座って待ってたんじゃ、さぞ冷たかったろうに。


「内側にタオル入れて水吸わせた?」

「いや…してねェ。そのまんま干してた。」
「それじゃ乾く訳無いじゃない、馬鹿。」

「まァいいさ。それこそ後は気合で乾かす。その内体温で乾くだろ。」

「…私のセーター貸したげるから、腰ん所に巻いといたら?」

「濡らしちまっちゃ悪ィからいいって……っつか、さっきから何妙に優しいんだよ!?気持ち悪ィな!!
「着てて冷たくて寒いんじゃないかって心配してあげてんの!!悪い!?」



ふと黙り、顔を近付け、じぃーーっと見詰られる。


「ひょっとして……済まないとでも感じてんのか?」

「…す、済まないって何が…??」

「楽しかったか?ルフィと2人で観て廻って。」

「た、楽しかったけど?」

「おう!!楽しかったよなナミ!!2人乗りの自転車乗って、グルグル場内廻ってよ!!!」

「へェェ…そりゃあ、楽しく廻れて良かったな。」

「そ…そうだわね…。」


――だから何でそんな仏頂面して、人の顔凝視してくんのよっっ!?


「…ゾロが居なくてさびしがってはいたけどな、ナミは!」
「寂しがってなんかなかったわよっっ!!!」

「へェェェ…?」


意外そうな、でも少し嬉しそうに、一瞬にやけた。


……こいつでも置いてかれて、少しは寂しく感じてたのかしら?



「……良く眠れた?ゾロ。」

「…何でんな事聞いて来んだよ?」

「……別に……聞いちゃいけない事だった?」

「………そんな訳無ェだろ。」


気拙い……ひたすら気拙い沈黙が流れる。


「………あのさ……後4時間もしたら、帰っちゃうんだし…こっから先は、3人で廻ろう?」


――最後くらい、喧嘩しないで。


「……そういう約束だしな。その積りだ。」


顔を見合わせ、微笑んだ。


たったの3時間しか離れてなかったのに、凄く懐かしく感じた。




名残惜しくもチェックアウト。

荷物が多過ぎて纏め切れなかったので、フロントに電話して車で迎えに来て貰う事にした。



程無くして、チェックイン時と同じ、青いホテル車が到着。


迎えに来てくれたホテルスタッフの方に頼んで、コテージの前で3人、記念に写真を撮って貰う事にした。


3人横並びは不吉だっつうなら、縦並びはどうかとのルフィ案を採用し、入口前に立ってる緑の葉に赤い実付けた木の下で、3人縦に重なりポーズを取る。


1番下にゾロが屈んで、その肩の上に私が乗り、その私の肩の上乗って、船長帽被ったルフィが右手に短剣掲げ、ハイ、チーズ!


…まるでピサの斜塔よろしく傾き、グラグラ揺れてバランス取るのに大変だった。

カメラ構えたホテルスタッフの方が笑ってしまい、シャッター切るのに時間掛かるし。

ルフィは雄叫び上げて暴れるし、私は重いと文句を言うし、ゾロは照れて顔隠そうとするし。



崩れる寸前シャッターが切られ、何とか無事に記念撮影を終える事が出来た。






その36に続】





写真の説明~、泊ったコテージの前で。

緑の葉っぱに赤い実の生った木…南天に似た様なこの木の名前は何でしょか??(汗)

クリスマスシーズンに合ってて良いよなと思った訳でv

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2 コメント

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お早う御座います。(笑) (びょり)
2006-02-18 10:32:35
リャンさん、何時も有難う御座います♪

あ、やっぱり胃腸や喉に来ると長引くんでしょうか?(汗)

早く治られます様、祈っておりまする。



うーーん…書いた自分も何故にこんな話に~と謎に思ってなくもないんですが。(←それじゃ駄目だろ)(汗)



3人とも思いやっては居る積もりっつか、ただそれがひたすら空回りしてるんでしょう。(焦笑)



裏テーマがまんま卒業と言いますか(タイムリーになっちまったなー)、自分の居たい場所は永遠には続かんよ~ってなね。(汗)

兄弟愛だったんだけど、環境がどんどん変ってって、したらば変るのか変らんのかーってな話になってますね、多分。(←多分って…)(汗)

まァ、後4話…だと思いますんで、暖かく見守って下されば嬉しく思いますです。(笑)



カナルカフェ、ルフィだったら「おー!!悪ィなー!!足止めちまってー!!」とか…そんな感じで叫んで来そうですよね。(笑)



コメントどうも有難う御座いました~♪
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おかげ様で・・・と言いたいところですが。 (リャン)
2006-02-18 01:26:19
未だ何でも食べられるって気が湧いてきません。(苦笑)私の周りはインフルエンザに罹る者が多く、単なる胃腸風邪は私だけでしたから、ちょっぴり仲間外れ感有りで寂しかったりして。(汗)しかも、結局私の方が長引いていますし・・・。(涙)



さてさて、ここ迄来て三者三様ながらも、各々が二人から自分に対する(うーん、と言うよりも、ナミ⇔ルフィ&ゾロか?)思いやりに(改めて?)気づいたのではと感じられますね。ルフィ、ナミ、そしてゾロの3人で最終日のハウステンボス、気持ちも新たに残り僅かな時間をハッピーな思い出残せるよう過ごしてもらいたいものです。でも、ちょっぴり切なさも残って終わるるのかなぁ。(楽しみ、楽しみ♪)



カナルカフェ。後部デッキにいる際、跳ね橋上がって足止めされている歩行者方から、熱い視線が注がれているようで、結構恥かしかったです。自意識過剰ですかね?(苦笑)ルフィの場合は、逆にルフィから歩行者方に大声かけるんでしょうね。(笑)
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