…昨日の夜、何か妙な投稿文御覧になられた方は居られますかね…?
もしもいらっしゃいましたら――幻覚ですんで、どうか忘れて下さいませ。(汗)
いや…お見苦しいの見せてしまって済みません。(苦笑)
↓そんな訳で何時もの如く、前回の続きです。
ホテルの車で、ホテル・ヨーロッパまで送って貰う。
既に精算は済ませてあるので、フロントでその証明書と、コテージの鍵を渡した。
金色した重たいキータッグの付いた鍵ともお別れ。
もう、あの湖畔のコテージには戻れないのね。
赤煉瓦の壁、ドアを開けて中へ入れば、広々としたリビングルーム。
床はフローリング、暖かい色した絨毯が敷かれてる。
ルフィお気に入りのロッキングチェア。
居る間、あんだけ力いっぱい揺らしてて、よくも壊れなかったもんだわね。
ゾロお気に入りの長ソファ。
ソファとしてより、殆どベッドとして使用されてたっけ。
窓に背を向けた肘掛ソファは、私の指定席。
肘掛部分がなだらかにカーブしてて、肘が楽に掛けられた。
大きく開く窓を出れば、湖を眺めるバルコニー。
身を乗り出してると、すかさず白鳥が側に寄って来て、餌を強請られ困ったのよね。
今度泊る事が有ったら、お麩でも持って来ようかな。
窓から日が射すと、湖の波紋が白い壁に反射して、幻想的に揺らいで見えた。
階段上って2階には、ベッドルームが2部屋も在って。
TVの有る方が良いんだと、ルフィが散々駄々を捏ねた。
…その態度があんま子供染みてて、昔と変らないままだったもんだから、つい譲ってしまったのよね。
3人してお茶飲んで寛いで……楽しかったなー……。
「気持ち良いコテージだったよな♪」
フロント後ろの椅子で、荷物整理しながら思い出に耽ってた私の肩を、ルフィがぽんと叩いて言う。
「素敵だったわよねェ。あんな家に住めたらなァ…。」
「こっそり住んじまうとか!」
「それじゃ犯罪じゃない。」
「表札出して『ここは俺の家ー!』なんてな♪…1けんくれェ見逃してくんねーかな??」
「おめェが言うと冗談に聞こえなくて恐ェよ。」
荷物が半端で無く多かった私とルフィは、ホテルから宅急便で送る事にした。
お土産いっぱい買っても大丈夫なよう、家で1番大きなショルダーバッグ持って来たのに…全部詰めたらギリギリのパンパン、チャックが壊れそうで冷やりとした。
四角形だったバッグがボールみたいに丸くなっちゃって…こんな事なら3日分も着替え持って来んじゃなかったわ。
小っさいディバッグ1ヶしか持って来なかったルフィはもっと深刻だった。(←本人ちっとも深刻そうじゃなかったけど)
詰める前から許容量の2倍は有るって、見ただけで明らかだったし。
なら食っちまえば問題無ェって、その場で店広げようとしたんで慌てて止めた。(←つまり土産の殆どが自分用の食い物って事なのね)
結局、箱買って詰めるよう、ゾロと2人で説得した。
「ちゃんと必要な物は手元に持つのよ!」
「おう!!ちゃんとキャプテンハットと短剣は手に持ったぞ!!」
「いや、むしろそれは送った方が良いだろよ…。」
「ゾロは送んなくて良いのかァ?」
「ああ、送る程荷物無ェし。」
確かに、ゾロの黒いディバッグは、膨らみ具合が来た時と殆ど変ってない。
荷物整理に奮闘する私とルフィを尻目に、涼しい顔して突っ立っている。
「お土産、全然買わなかったの?」
「あれ?でもしょーちゅー1ビン買ってただろ??」
「買って即送っちまったよ。割っちゃ拙いからな。」
「へー、ナミと同じだな。」
――スカーン!!!
「言うなって約束したじゃないさ!!!」
「…わ…悪ィ…つい…口がすべった…!」
「なんだ、結局てめェも酒買ったのかよ?自称健全女子高生!」
「家への土産よ!!!何か文句有る!!?」
「べぇぇつぅにぃぃ~。」
にやにやァァと意地悪く笑われた……だから言わないで欲しかったっつうのにっっ。
「後買ったのはクリームチーズ1ヶ。それ以外は下着と財布と航空券。身軽なもんだぜ。」
「カッコ良いぞゾロ!!シンプル・イズ・ベストだな!!」
「でも一緒に旅してて、面白味の無いタイプよね。」
「煩ェ、ほっとけ。」
宅急便の受付はフロントの後ろ…館内右奥のカウンターで行っていた。
ルフィと一緒に荷物を預け、言葉通りに肩の荷を降ろす。
はー…これで帰り道、楽にしてられるわァァ。
「そう言えば…ルフィはカメラと財布と帰りの航空券、ちゃんと手元に持ってるんでしょうね?」
「あ!!……いけね!そっちは忘れて預けちまった!!」
「早く取り戻しに行って来いっっ!!!」
「はいィィっっ!!!」
「……何処までもお約束通りな奴だな。」
重厚なホテル・ヨーロッパの玄関を、後ろ髪引かれる思いで潜る。
玄関を出る時、シルクハットを被ったベルマンが、笑顔で送り出してくれた。
嗚呼、この優雅な赤煉瓦造りの、超高級リゾートホテルともお別れなのね。
玄関上に飾られた特大のクリスマスリースが滲んで見えた…なんちて。
外へ出てそのまま真直ぐ、ホテル前に建つ売店に寄る。
真新しい風の小じんまりした店、『ラフレシール』。
「何だ?ケーキ屋か?」
「チーズケーキ専門店よ。此処のキャラメルチーズケーキが美味しいって評判なんだって。ナンジャタウンで開かれた『全国チーズケーキ博覧会』で1位に選ばれたらしいわ。試食が出てれば食べてみて…美味しかったら買ってこうかなと思ってv」
「全国で1位に選ばれたチーズケーキィィ!!?買う!!!俺も買って食う!!!」
「…って荷物送ったのに、未だ買う気かよ!?」
「だって全国で1位のチーズケーキがどんなもんか…ちょっと気になるじゃない?」
タンテ・アニーのイメージカラーが緑色なら、此処ラフレシールのそれは明るい卵色だった。
庇も看板も、内装にまで卵色が溢れてて。
ショーケースの中には3種類のチーズケーキが陳列されていた。(←季節によって変るらしい)
他にもキャラメル風味のパイクッキーやら紅茶やら…でも正直バリエーション少ないかな。
ショーケース前に、細かく賽の目に切られたキャラメルチーズケーキが試食として出されてたんで、1口貰って食べてみた。
――あ……美味しい!すっごく美味しいかも…!!
チーズケーキなんだけど、キャラメルの風味が香ばしく効いてて、これならチーズ苦手な人でも食べられそう。
まったりとクリーミィーだから、きっと紅茶に良く合うわ。
一緒に口に含んだら、クリームみたいに蕩けてくでしょうね。
「うんめェェ~~~!!!これメチャ美味ェじゃんかっっ!!!こんな美味ェチーズケーキ、俺初めて食べたぞっっ!!!」
「…あんた、ずっとそれしか言ってないし。」
背後からゾロに皮肉言われたりもしたんだけど、ルフィと2人で結局買ってく事にした。
ただ1つ問題が有って…此処のチーズケーキは冷凍タイプらしく、長時間常温で置いとくとドロドロに溶けちゃうって事だった。
だから送る時はクール宅急便で、召し上がる時は解凍して下さいよと。
少しでも代金浮かせる為に、私とルフィの分を一緒にして、私の家に送る事にした。
勿論掛かる代金は折半で!
土産代だけじゃなく、運送代も馬鹿にならないわねェ~。
タンテ・アニー同様、ケーキはカット売りでも販売してて、店の外のテラス席で食べたり、買ってってホテルの部屋で食べたりも出来るらしかった。
1時回ってお腹も空いて来たんで、昼食にする事にした。
「肉!!」と言うルフィの希望と、「米!」と言うゾロの希望を同時に叶える為、ユトレヒト地区ドムトールン下2階に在る韓国料理屋『ソウル』を選択する。
比較的手狭な店内だったけど、平日で時間がズレてたのが良かったのか、ガラガラに空いていて驚いた。
ウェイトレスさんに案内されて、奥の窓際席に着く。
ゾロと隣り合って、ルフィは1人前に。(←隣り座ると、食い散らかされて大変だから)
窓からはのどかに運河を進むカナルクルーザーを見下ろせた。
楼蘭なんかと同様、水以外にもお茶が無料でサービスされて、嬉しかった。
「かん国料理っつったら焼肉だろ!?俺、焼肉!!焼肉決定な!!」
「韓国料理じゃなくても、てめェは肉しか選ぼうとしねェだろうが。」
「ルフィ、あんた手持ちの金少ないんでしょ?だったらお安い昼定食にしときなさい!」
「えーーー!?……昼定食ってどんなんだよォ~~~?」
メニュー写真を抱えて眺めて熟考に入る。
店入ったら自分が1番にメニューを開く。
どうやらそれがルフィの中では当然になってるらしい。
旅行中、私やゾロがメニューを開いて…なんて殆ど無かった。
ルフィが開いてるメニューを、横から逆から覗く感じ。
今更だけど自己中極まりない奴……けど不思議と憎めない、得な性分よねェ。
「…う~~ん…ビビンバ定食ってのが有るけど…これって美味ェのか?」
メニューに載ってる写真を指して聞いて来る。
「美味しいって評判らしいわよ。何でも韓国人からも本場の味に近いって人気が有るらしいし。…ってな訳で、私はこの1,000円の『石鍋ビビンバ定食』にしよっかな!」
「じゃあ俺は1,500円の『ユッケビビンバ定食』だ!!」
「んじゃ俺は間を取って、1,200円の『特製石鍋定食』な。」
「…何で借金持ちのあんたらのが、高いメニュー選んでんのよ?」
愛想良く注文を聞き、ウェイトレスさんが厨房に戻ってく。
「さてと…料理が来るまでの間、これからの予定について話したいんだけど、聞いてくれる?」
「おー、頼むぜェ、有能秘書。」
メモを広げる私に、ゾロが茶々を入れる。
気にせず、コースを読み上げた。
「食べ終わったら先ず、此処の展望台に昇ろうと思うの。そんで次はアレキサンダー広場に在るスタッドハウスまで徒歩で移動、館内の硝子の美術館『ギヤマン・ミュージアム』を見学。その次はバスに乗ってスパーケンブルグまで移動、『大航海体験館』へ。で、最後は帆船『観光丸』に乗船。」
「船!!やっとあの海賊船乗してくれんのか!?」
「だから海賊船じゃなくて『観光丸』だってば。」
「何だか昨日と較べてゆとり有る予定に感じるが…どうかしちまったのか?」
「……別に。昨日大方廻ったし。もう時間も無い事だしなァと思って。」
「まァ、確かにな。此処出たら後、3時間と少しってトコか。」
「今言った中で行きたくない場所とか有るなら抜かすわ。逆に、行きたい場所が有れば追加する。…何か希望有る?」
「じゃ、『カナリカフェ』とか言うのに乗りてェ!!」
「それは却下!」
「ええ!?言ってる事と違うじゃねェか!?」
「手持ち金が残り少ないってのに、金のかかる遊びしようとすな!!!」
「行きたくねェ場所とか、行きてェ場所とか聞かれてもな…詳しく知らねェし…良いさ、それで。」
「だいこーかい何とかって、何だ??」
「名前通り、映像や振動なんかで、航海を体感させるシアターみたいだけど。」
「航海を体感かーー…面白そうだな♪俺もそれで良いぞ!」
「じゃあ、このコースで決定ね!」
話してる間にビビンバ定食がやって来た。
器になってる石鍋は、高温で熱してあるので、手を触れない様にと注意される。
…確かに物凄く熱そう…じゅうじゅう音出てるし。
私のは御飯の上に、4種類のナムルと生卵が乗せられていた。
ゾロのはナムル6種類、生卵、加えてミンチ。
ルフィなんか、加えて牛刺……贅沢者め。
3人共に、辛くて真っ赤な大根のキムチ、わかめスープがセットで付いていた。
後は味付け用の辛味噌…全部入れると流石に辛いから、お好みに調節してどうぞと説明を受ける。
辛党のゾロはまんま全部入れてしまった……辛そうっっ。
「あのさ、石鍋ビビンバの美味しい食べ方教えたげよっか?」
「「美味しい食べ方??」」
「御飯を掻き混ぜる時に、底の部分を少し残しておくの。そうすればお焦げが出来るでしょ?」
「ああ、成る程な。」
「よし!底を残すんだな!?」
中央乗ってる生卵を、箸で潰して、底を残し、良く掻き混ぜる。
卵と具と御飯が絡んで、熱々の卵混ぜ御飯が出来上がった。
食べてみると、辛味噌の辛味とナムルの酸味が程好く馴染んでて、美味しいのなんの!
「…ハフハフ…!!……ふへェ!!!ふへェはァ~~~!!!ははごはへほはんはは…!!!」
「…そりゃ卵掛け御飯だろうが。」
「でも本当に美味しいvこの辛味噌、辛いんだけど、それだけじゃなく甘味も感じられるって言うか…入れた事によって、美味しさが増してるわァァvv」
「キムチも美味ェな。うん、イケる!」
「お!おほげ食っははふえェェ!!…はひはひひへへ、へんべーみへーはほ♪♪」
石鍋の熱で、御飯が焦げて張り付き、煎餅の様に香ばしく、パリパリになっていた。
「お焦げは残しといて、最後にわかめスープを注いで食べると良いわよ。そうするとお焦げがふやけて、雑炊みたくなってまた美味しいのv」
「雑炊か…そりゃ良いな!」
「ハフフ…!!…ふひ!はいほはほーふひはは!ふへェほはー、ほーふひほ♪♪」
熱した石鍋は中々冷めない。
20分経っても…30分経っても…スープを注いでも温かく、最後まで熱々のまま、美味しく戴けた。
【その37に続】
写真の説明~、ホテルヨーロッパの玄関。
回転扉は大概の場合、安全の為閉じられてる。
所謂、雰囲気出す為の演出??
クリスマスには観ての通り、巨大で煌びやかなクリスマスリースが飾られます。
あ…ビビンバの美味しい食べ方は、何処ぞのガイドブックからの受け売りです。(笑)
でもこうして食べると本当に美味しいですよv
もしもいらっしゃいましたら――幻覚ですんで、どうか忘れて下さいませ。(汗)
いや…お見苦しいの見せてしまって済みません。(苦笑)
↓そんな訳で何時もの如く、前回の続きです。
ホテルの車で、ホテル・ヨーロッパまで送って貰う。
既に精算は済ませてあるので、フロントでその証明書と、コテージの鍵を渡した。
金色した重たいキータッグの付いた鍵ともお別れ。
もう、あの湖畔のコテージには戻れないのね。
赤煉瓦の壁、ドアを開けて中へ入れば、広々としたリビングルーム。
床はフローリング、暖かい色した絨毯が敷かれてる。
ルフィお気に入りのロッキングチェア。
居る間、あんだけ力いっぱい揺らしてて、よくも壊れなかったもんだわね。
ゾロお気に入りの長ソファ。
ソファとしてより、殆どベッドとして使用されてたっけ。
窓に背を向けた肘掛ソファは、私の指定席。
肘掛部分がなだらかにカーブしてて、肘が楽に掛けられた。
大きく開く窓を出れば、湖を眺めるバルコニー。
身を乗り出してると、すかさず白鳥が側に寄って来て、餌を強請られ困ったのよね。
今度泊る事が有ったら、お麩でも持って来ようかな。
窓から日が射すと、湖の波紋が白い壁に反射して、幻想的に揺らいで見えた。
階段上って2階には、ベッドルームが2部屋も在って。
TVの有る方が良いんだと、ルフィが散々駄々を捏ねた。
…その態度があんま子供染みてて、昔と変らないままだったもんだから、つい譲ってしまったのよね。
3人してお茶飲んで寛いで……楽しかったなー……。
「気持ち良いコテージだったよな♪」
フロント後ろの椅子で、荷物整理しながら思い出に耽ってた私の肩を、ルフィがぽんと叩いて言う。
「素敵だったわよねェ。あんな家に住めたらなァ…。」
「こっそり住んじまうとか!」
「それじゃ犯罪じゃない。」
「表札出して『ここは俺の家ー!』なんてな♪…1けんくれェ見逃してくんねーかな??」
「おめェが言うと冗談に聞こえなくて恐ェよ。」
荷物が半端で無く多かった私とルフィは、ホテルから宅急便で送る事にした。
お土産いっぱい買っても大丈夫なよう、家で1番大きなショルダーバッグ持って来たのに…全部詰めたらギリギリのパンパン、チャックが壊れそうで冷やりとした。
四角形だったバッグがボールみたいに丸くなっちゃって…こんな事なら3日分も着替え持って来んじゃなかったわ。
小っさいディバッグ1ヶしか持って来なかったルフィはもっと深刻だった。(←本人ちっとも深刻そうじゃなかったけど)
詰める前から許容量の2倍は有るって、見ただけで明らかだったし。
なら食っちまえば問題無ェって、その場で店広げようとしたんで慌てて止めた。(←つまり土産の殆どが自分用の食い物って事なのね)
結局、箱買って詰めるよう、ゾロと2人で説得した。
「ちゃんと必要な物は手元に持つのよ!」
「おう!!ちゃんとキャプテンハットと短剣は手に持ったぞ!!」
「いや、むしろそれは送った方が良いだろよ…。」
「ゾロは送んなくて良いのかァ?」
「ああ、送る程荷物無ェし。」
確かに、ゾロの黒いディバッグは、膨らみ具合が来た時と殆ど変ってない。
荷物整理に奮闘する私とルフィを尻目に、涼しい顔して突っ立っている。
「お土産、全然買わなかったの?」
「あれ?でもしょーちゅー1ビン買ってただろ??」
「買って即送っちまったよ。割っちゃ拙いからな。」
「へー、ナミと同じだな。」
――スカーン!!!
「言うなって約束したじゃないさ!!!」
「…わ…悪ィ…つい…口がすべった…!」
「なんだ、結局てめェも酒買ったのかよ?自称健全女子高生!」
「家への土産よ!!!何か文句有る!!?」
「べぇぇつぅにぃぃ~。」
にやにやァァと意地悪く笑われた……だから言わないで欲しかったっつうのにっっ。
「後買ったのはクリームチーズ1ヶ。それ以外は下着と財布と航空券。身軽なもんだぜ。」
「カッコ良いぞゾロ!!シンプル・イズ・ベストだな!!」
「でも一緒に旅してて、面白味の無いタイプよね。」
「煩ェ、ほっとけ。」
宅急便の受付はフロントの後ろ…館内右奥のカウンターで行っていた。
ルフィと一緒に荷物を預け、言葉通りに肩の荷を降ろす。
はー…これで帰り道、楽にしてられるわァァ。
「そう言えば…ルフィはカメラと財布と帰りの航空券、ちゃんと手元に持ってるんでしょうね?」
「あ!!……いけね!そっちは忘れて預けちまった!!」
「早く取り戻しに行って来いっっ!!!」
「はいィィっっ!!!」
「……何処までもお約束通りな奴だな。」
重厚なホテル・ヨーロッパの玄関を、後ろ髪引かれる思いで潜る。
玄関を出る時、シルクハットを被ったベルマンが、笑顔で送り出してくれた。
嗚呼、この優雅な赤煉瓦造りの、超高級リゾートホテルともお別れなのね。
玄関上に飾られた特大のクリスマスリースが滲んで見えた…なんちて。
外へ出てそのまま真直ぐ、ホテル前に建つ売店に寄る。
真新しい風の小じんまりした店、『ラフレシール』。
「何だ?ケーキ屋か?」
「チーズケーキ専門店よ。此処のキャラメルチーズケーキが美味しいって評判なんだって。ナンジャタウンで開かれた『全国チーズケーキ博覧会』で1位に選ばれたらしいわ。試食が出てれば食べてみて…美味しかったら買ってこうかなと思ってv」
「全国で1位に選ばれたチーズケーキィィ!!?買う!!!俺も買って食う!!!」
「…って荷物送ったのに、未だ買う気かよ!?」
「だって全国で1位のチーズケーキがどんなもんか…ちょっと気になるじゃない?」
タンテ・アニーのイメージカラーが緑色なら、此処ラフレシールのそれは明るい卵色だった。
庇も看板も、内装にまで卵色が溢れてて。
ショーケースの中には3種類のチーズケーキが陳列されていた。(←季節によって変るらしい)
他にもキャラメル風味のパイクッキーやら紅茶やら…でも正直バリエーション少ないかな。
ショーケース前に、細かく賽の目に切られたキャラメルチーズケーキが試食として出されてたんで、1口貰って食べてみた。
――あ……美味しい!すっごく美味しいかも…!!
チーズケーキなんだけど、キャラメルの風味が香ばしく効いてて、これならチーズ苦手な人でも食べられそう。
まったりとクリーミィーだから、きっと紅茶に良く合うわ。
一緒に口に含んだら、クリームみたいに蕩けてくでしょうね。
「うんめェェ~~~!!!これメチャ美味ェじゃんかっっ!!!こんな美味ェチーズケーキ、俺初めて食べたぞっっ!!!」
「…あんた、ずっとそれしか言ってないし。」
背後からゾロに皮肉言われたりもしたんだけど、ルフィと2人で結局買ってく事にした。
ただ1つ問題が有って…此処のチーズケーキは冷凍タイプらしく、長時間常温で置いとくとドロドロに溶けちゃうって事だった。
だから送る時はクール宅急便で、召し上がる時は解凍して下さいよと。
少しでも代金浮かせる為に、私とルフィの分を一緒にして、私の家に送る事にした。
勿論掛かる代金は折半で!
土産代だけじゃなく、運送代も馬鹿にならないわねェ~。
タンテ・アニー同様、ケーキはカット売りでも販売してて、店の外のテラス席で食べたり、買ってってホテルの部屋で食べたりも出来るらしかった。
1時回ってお腹も空いて来たんで、昼食にする事にした。
「肉!!」と言うルフィの希望と、「米!」と言うゾロの希望を同時に叶える為、ユトレヒト地区ドムトールン下2階に在る韓国料理屋『ソウル』を選択する。
比較的手狭な店内だったけど、平日で時間がズレてたのが良かったのか、ガラガラに空いていて驚いた。
ウェイトレスさんに案内されて、奥の窓際席に着く。
ゾロと隣り合って、ルフィは1人前に。(←隣り座ると、食い散らかされて大変だから)
窓からはのどかに運河を進むカナルクルーザーを見下ろせた。
楼蘭なんかと同様、水以外にもお茶が無料でサービスされて、嬉しかった。
「かん国料理っつったら焼肉だろ!?俺、焼肉!!焼肉決定な!!」
「韓国料理じゃなくても、てめェは肉しか選ぼうとしねェだろうが。」
「ルフィ、あんた手持ちの金少ないんでしょ?だったらお安い昼定食にしときなさい!」
「えーーー!?……昼定食ってどんなんだよォ~~~?」
メニュー写真を抱えて眺めて熟考に入る。
店入ったら自分が1番にメニューを開く。
どうやらそれがルフィの中では当然になってるらしい。
旅行中、私やゾロがメニューを開いて…なんて殆ど無かった。
ルフィが開いてるメニューを、横から逆から覗く感じ。
今更だけど自己中極まりない奴……けど不思議と憎めない、得な性分よねェ。
「…う~~ん…ビビンバ定食ってのが有るけど…これって美味ェのか?」
メニューに載ってる写真を指して聞いて来る。
「美味しいって評判らしいわよ。何でも韓国人からも本場の味に近いって人気が有るらしいし。…ってな訳で、私はこの1,000円の『石鍋ビビンバ定食』にしよっかな!」
「じゃあ俺は1,500円の『ユッケビビンバ定食』だ!!」
「んじゃ俺は間を取って、1,200円の『特製石鍋定食』な。」
「…何で借金持ちのあんたらのが、高いメニュー選んでんのよ?」
愛想良く注文を聞き、ウェイトレスさんが厨房に戻ってく。
「さてと…料理が来るまでの間、これからの予定について話したいんだけど、聞いてくれる?」
「おー、頼むぜェ、有能秘書。」
メモを広げる私に、ゾロが茶々を入れる。
気にせず、コースを読み上げた。
「食べ終わったら先ず、此処の展望台に昇ろうと思うの。そんで次はアレキサンダー広場に在るスタッドハウスまで徒歩で移動、館内の硝子の美術館『ギヤマン・ミュージアム』を見学。その次はバスに乗ってスパーケンブルグまで移動、『大航海体験館』へ。で、最後は帆船『観光丸』に乗船。」
「船!!やっとあの海賊船乗してくれんのか!?」
「だから海賊船じゃなくて『観光丸』だってば。」
「何だか昨日と較べてゆとり有る予定に感じるが…どうかしちまったのか?」
「……別に。昨日大方廻ったし。もう時間も無い事だしなァと思って。」
「まァ、確かにな。此処出たら後、3時間と少しってトコか。」
「今言った中で行きたくない場所とか有るなら抜かすわ。逆に、行きたい場所が有れば追加する。…何か希望有る?」
「じゃ、『カナリカフェ』とか言うのに乗りてェ!!」
「それは却下!」
「ええ!?言ってる事と違うじゃねェか!?」
「手持ち金が残り少ないってのに、金のかかる遊びしようとすな!!!」
「行きたくねェ場所とか、行きてェ場所とか聞かれてもな…詳しく知らねェし…良いさ、それで。」
「だいこーかい何とかって、何だ??」
「名前通り、映像や振動なんかで、航海を体感させるシアターみたいだけど。」
「航海を体感かーー…面白そうだな♪俺もそれで良いぞ!」
「じゃあ、このコースで決定ね!」
話してる間にビビンバ定食がやって来た。
器になってる石鍋は、高温で熱してあるので、手を触れない様にと注意される。
…確かに物凄く熱そう…じゅうじゅう音出てるし。
私のは御飯の上に、4種類のナムルと生卵が乗せられていた。
ゾロのはナムル6種類、生卵、加えてミンチ。
ルフィなんか、加えて牛刺……贅沢者め。
3人共に、辛くて真っ赤な大根のキムチ、わかめスープがセットで付いていた。
後は味付け用の辛味噌…全部入れると流石に辛いから、お好みに調節してどうぞと説明を受ける。
辛党のゾロはまんま全部入れてしまった……辛そうっっ。
「あのさ、石鍋ビビンバの美味しい食べ方教えたげよっか?」
「「美味しい食べ方??」」
「御飯を掻き混ぜる時に、底の部分を少し残しておくの。そうすればお焦げが出来るでしょ?」
「ああ、成る程な。」
「よし!底を残すんだな!?」
中央乗ってる生卵を、箸で潰して、底を残し、良く掻き混ぜる。
卵と具と御飯が絡んで、熱々の卵混ぜ御飯が出来上がった。
食べてみると、辛味噌の辛味とナムルの酸味が程好く馴染んでて、美味しいのなんの!
「…ハフハフ…!!……ふへェ!!!ふへェはァ~~~!!!ははごはへほはんはは…!!!」
「…そりゃ卵掛け御飯だろうが。」
「でも本当に美味しいvこの辛味噌、辛いんだけど、それだけじゃなく甘味も感じられるって言うか…入れた事によって、美味しさが増してるわァァvv」
「キムチも美味ェな。うん、イケる!」
「お!おほげ食っははふえェェ!!…はひはひひへへ、へんべーみへーはほ♪♪」
石鍋の熱で、御飯が焦げて張り付き、煎餅の様に香ばしく、パリパリになっていた。
「お焦げは残しといて、最後にわかめスープを注いで食べると良いわよ。そうするとお焦げがふやけて、雑炊みたくなってまた美味しいのv」
「雑炊か…そりゃ良いな!」
「ハフフ…!!…ふひ!はいほはほーふひはは!ふへェほはー、ほーふひほ♪♪」
熱した石鍋は中々冷めない。
20分経っても…30分経っても…スープを注いでも温かく、最後まで熱々のまま、美味しく戴けた。
【その37に続】
写真の説明~、ホテルヨーロッパの玄関。
回転扉は大概の場合、安全の為閉じられてる。
所謂、雰囲気出す為の演出??
クリスマスには観ての通り、巨大で煌びやかなクリスマスリースが飾られます。
あ…ビビンバの美味しい食べ方は、何処ぞのガイドブックからの受け売りです。(笑)
でもこうして食べると本当に美味しいですよv
幻覚だったのです。
幻覚でなくちゃ嫌だ。
私は冷静にそう主張し…(←美神ネタ)
いやいや、昨夜は失礼致しました。(苦笑)
悦子さん、まぁまぁ、「真夜中は別の顔」って事で許して下さいよ。(笑)
たまたま漫画喫茶でコーヒーを飲んでいる時でした。
確か、アドレスがどうとか。ええ。
でも幻覚と言われればそんな気も・・・
ポリフェノールには幻覚作用もあると言われてますからねえ。
あ、ポリフェノールは“ワイン”でしたね。正確には、カフェインです。