今年は山の花が良く咲いたような気がする。近所の山では、ジュニヒトエ(十二単)が例年よりも多く花を開いた。ジュニヒトエは、園芸目的の採取や生育環境の変化によって、近年は激減している。日本のレッドデータ検索システム(NPO法人野生生物調査協会など)によると、このものを絶滅危惧種、準絶滅危惧種、希少種に指定している都道府県の数は10を超えている。
これほどまでに舌形花が高く重なっている例は多くない(4月下旬、群馬県)。
ボランティア活動によって下草が刈られたので、例年よりも大きめの株が増えて、花の数も多くなった。
舌形花が柔らかな夕方の光を浴びる時間帯に再び撮った。
ジュウニヒトエとの花名は、女官の衣裳に見たてられて付けられたとも言われている。円錐形(画像のものでは円筒形に近い)の花が重なり合って咲く姿には、軟らかな光を浴びると優雅な雰囲気が漂う。このものはシソ科キランソウ属の多年草(高さは 20 cm程度)であり、日本固有種である。
図鑑では、花の色が薄紫色または白色であると記されている(増補改訂新版 野に咲く花、山と渓谷社、2013年)。ここでは、夕方の光のもとでは、花が十二単を想わせるかのように襲の色目(かさねのいろめ)を帯びることを付記したい。